職務放棄先生

教室はいつも通りで、いつも通りじゃなかった。

なにが違うのか、なにがいつも通りなのか、上手く説明できない自分に腹が立つ。

たった一度、先生が540枚のトランプでの大富豪に参加しただに過ぎない。

それだけで、何かが変わるとは思えなかった。

でも、どうやら変わってしまったようだ。

俺のクラスは、少しずつ、少しずつ。

亀のような足取りで、未来を見据える人が増えていった。




「へぇいよぉぉおおお。今日も自習だぁぁあ。俺が今日持ってきたのはぁぁあ。コーヒーではなぁぁく。えすぷれっそおぉぉおおお。ちょーっとばかしぃ、真面目に仕事する日だぁぁあ。クソつまんねぇ教育指導案ってやぁつだぁぁあ。」



おいこら。先生とも立場の人間が。

教育指導案なんて知らないが、先生が先生としてお給料をもらうために必要な?仕事なんじゃぁないのか?

というか、仕事!授業!

一体いつになったらやってくれるんだ、、、、




「ぁ、、、あの!先生!」

名前を思い出せない、誰だったか分からないけどなんか頭良さそうなやつが、珍しく声を上げた。

「お?なんだ?」

先生は、えすぷれっそおぉぉおおおを飲みながら返事をした。

「その、英語、で、、、分からないことがあって、、、ご質問させていただきたいです。」

なんとも久々に英語の授業らしい言葉が教室に響いた。

「お!嬉しい!なんでもどうぞ!なんだ?」


「あの、その、"I will〜"と"I am going to〜"の違いがいまいち分からなくて、、、

やり始める時間の差?とか、説明書を見てもいまいち、、、」


質問に驚いた。

なんせ教科書のテスト範囲の遥か先を行く質問だったのはもちろんのことだが、

"教科書の説明では分からない"

つまり、先生にしか聞くことができない、

頼るべき存在が、この、先生しか、いなかったと言うのだ。


真面目そうに見えるが、もしかして馬鹿、、、、

いや、まぁ俺よりはマシなんだろうが、

いやでも、もうちょっとマシな頼れる人はいなかったのだろうか?


先生は答えた。

「I will〜と、I am going to〜

これ、日本語に訳すとどうなるか、調べたか?」


「はい。調べました。

どちらも似たような意味で、これから〜をするというような、いわゆる未来系の意味でしかなかったです。」


調べたアイツも凄いんだが、

先生もまた、凄かった。


「よし。ならそれを外人さんに使ってみろ。どんなリアクションが返って来たか、教えてくれ。」








はぁ?!?!?!

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