にんにく

包丁で茎の残った部分を落とす。皮が包丁を受け止めるが、気にせずに刃を落とす。

断面から皮を剥く。ペリペリとした音共に実が露わになる。調子よく剥いていても時には中途半端に剥けきれない時もあるが、それすらも愛おしい。そして、皮が一度に沢山剥けた時、私はその日何があっても自分を肯定する事が出来る。皮剥きは人の心を掴んで離さない。

半分に切ると、実の中に芽が申し訳なさそうに埋まっている。色が緑ならば大変良い。隙間に包丁を入れ、芽を浮かす。摘んで引っ張ると何とも言えない手応えと共に、芽は体を起こす。芽自体は食べる事が出来るが、焦げやすい為に多くの人は捨ててしまう。私は数万のにんにくの芽の上に立っているのだ。

いよいよ大詰めだ。半分になったにんにくを更に半分に切り、刻んでいく。包丁捌きは何年経っても上手くならない。しかし、指とサヨナラする位ならば今のままで良い。にんにくを切り続けると手がベタつく。きっとこれは神様が我々に与え賜った試練だ。でなければにんにくから得られる物とリスクの釣り合いがとれない。

刻み終えると器には小間切れになったにんにくが盛られている。オリーブ油に入れようが何をしようが私の勝手だ。生殺与奪の権利を私が握っていると思うと、私に眠った加虐心が揺さぶられる。

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