The gold mine effect
副題は crack the secrets of high performance
邦題は「最高の人材を見出す技術」
この著者はとんでもなくパワフルな人で、トップアスリートを育てるにはどんな環境が一番いいのかを世界中を旅してこの本にまとめたのである。
その中でも特に頭に残った項目が3つある。
一つ目は、民族とスポーツの優位性に関連がないと著者は考えている。ケニア人はマラソンが早いとかそういったことは本当は関係ないということ。
高地に住む民族だからマラソンが早いとかではなくて、その中にも爆発力が強い人は存在するということだ。
著者はそれよりも個人としての遺伝の方がスポーツに関わってくるといっている。しかし、そんな遺伝的なことが本当に関わってくるのは、オリンピックの決勝とか、そういったレベルであり、とことん突き詰めなければわからない。
とことん突き詰めるということは、本人が主体的に死に物狂いで頑張ることである。つまり遺伝的なことなど考えていられないわけだから、そんなことは考える必要はないと記されていた。
これと関連して2つ目は、考えすぎてはパフォーマンスは落ちるということだ。これは本当に最短距離で成長できるものなのかなどと考えすぎて練習を行なったりしていると、パフォーマンスが上がってこない。その練習の集中度が没頭している人間とは全然違うからだ。子供は心で走るが、大人は頭で走ると著者はいう。
競技中は夢中になる。それが大切なのだ。
3つ目は環境である。これは良い面と悪い面の二つに分かれる。
まず良い面で環境を整えるとはどういうことがを著者は説明している。
マラソンで強い国などはオリンピックのトップ選手も、そのほかの選手も混ざって走ることが多いそうだ。「このスクールから日本代表が誕生したんだ!みんなも目指せるぞ!」と言われると子供たちも俄然やる気になると思う。
しかしオリンピックで優勝した選手が、それほど大きくない整っていない施設で、一緒に練習していて、その選手から
「私も同じ練習をしていた。頑張ったら世界一になれる」と言われるのとで説得力が違う。自分も絶対になりたいと必死に取り組む選手がより多くなるのは目に見えている。トップの選手が身近にいることで、自分も行けると心から信じられることが大切で、そのためにはトップの選手が近くにいる環境は有利だという。
そして子供が夢に向かい走り始めた時、親のサポートは不可欠で、そして挫折しそうになった時、友人やコーチ、親が適度にプレッシャーをかけて、集団でその選手が復帰するように示して行く必要があると著者はいう。あくまで適度なプレッシャーで自発的に復帰するように、集団でサポートするのだ。
これまでは良い環境だが、反対に整いすぎた環境は選手を破滅させるという。
ヨーロッパのサッカーではクラブが下部組織を設けて、その下部組織に入ると とてつもない良い待遇をうける。寮費と食費はただ、服やスパイクは支給される。そうすると選手の心理の中では、自分はすでに成功者だと錯覚してしまう
と著者はいう。
これは日本で言えば、まだ中学生なのに高校の特待生の誘いが来ただけで成功者と勘違いする、または周りが成功者とはやし立てることと同じだと私は感じる。
本当はプロを目指しているとしたらどうだろう? プロになるという目標設定からして、高校に特待生で行こうが普通入試で行こうが、その高校に入ってスタートするということに変わりはない。
普通入試で入った選手が死に物狂いで頑張って、エースになってドラフトに引っかかることだってあり得るわけだ。
成功者と勘違いすることは、途端にハードワークするという心を失わせる。
これは身近にいる人が特に気を付けて本人に言葉がけしなければならないと感じる。
「特待生なんて別にすごいことではない」と声をかけるのではなく、
君はスタート地点に立つことを確約してもらった。準備にフライングはないから、今から準備して他の選手たちよりもフライングして良い権利が与えられていることは、幸運だ
というような趣旨で声をかけてもらえたら、本人は納得するのではと思う。
以上の3つが世界中を回ったユースアスリートをトップアスリートに育てることを専門職としている人の著書だ。興味がある人はぜひ読んでほしい。
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