アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』を読む②
さて、前回は「集中力を欠くのはスマホのせいなのか?」という視点で書いてみた。
しかしまぁ、この情報量の多い一冊を、こんな簡単には言い表せないので、引き続き一部を紹介していく。
現代社会に人類の「脳」は適応していない?!
と著者であるアンデシュ・ハンセン氏は言っているのだ。
なにせ、我々の脳が今の形を形成するようになったのが一万年前なのだ。
そのころパソコンやスマホはおろか、テレビもねえ、ラジオもねえ、車も全然走ってねえ! 時代に、我らが祖先猿人から進化に進化を重ねてこの脳になったのだ。
その当時の人類と言えば、一部で農耕定住(農業の発生はおよそ12000年前)は始まっているものの、まだ狩猟採集が主だった時代だ。
そこから、一万年の時間をかけて、ちょっとずつ進化して、闘争ではなく話し合いで解決しよう、なんて思考も出来るようになってきたのだが、脳のシステム自体は、まだその当時のものが生きているのだ。
例えば、1万年前は人類は満足に食事を摂ることが出来なかった。
そりゃそうだ。狩猟採集の生活だと、成果のある日とない日がある。
保存食だってずっとあるわけじゃない。
だから、脳は我々にこんな指令を与えるのだ。
「目の前に食い物があったら、とりあえず食っておけ! いつ飢餓になるとも限らないんだから!」
人類が飢餓の危機を逃れるようになってどれくらいの歴史が流れたか?
いや、地球全土でいえばまだまだだ。
だけど、こうしてパソコンやスマホを弄っている人のほとんどが、毎日ご飯にありつけて生きていることだろう。
だけど、脳の指令はまだ変わらない。「食え!」なのだ。
人類の長いスパンで言えば、今はまだ過渡期でもしかしたら数年後にとんでもない飢餓の時期が来るかもしれない。
そうなると生き残るのは、堅実に体型を維持しダイエットして筋肉を鍛えていた人ではなく、栄養分をその身にたっぷりと溜め込んだメタボ体型の人たち、ということになる。
そう。
そもそも脳のシステムが毎日食事にありつけることを想定して組まれていなかったのだ。
食事に際しても、そのような状況なのだ。
パソコンだスマホだ、ってなると「そいつは一体何者なのだ?!」と脳は驚愕するに違いない……。
ところが、そう言った新しい情報にも、幸か不幸か我々人類の脳は対応していたのだ。
脳は新しい物が大好き!?
人類の脳というものは新しい情報についてとてもとても敏感なのである。
これも、一万年前の、人類の生存行動に由来する。
狩猟採集がメインだった頃、ある木に見たことのない果実が実っているのを見た。
それを獲った者は食糧にありつけ、その日の生を永らえることが出来る。
或いは、狩りに出掛けた者が居たとして、その先には誰も行ったことのないエリアがあったとする。
そこに足を踏み入れたら、なんと大猟! ご馳走にありつけた!
そう言った新たなチャレンジこそが人類は繁栄の礎を築いてきたはずである。
我々現代人はそんなことは忘れていても、脳はそのシステムを覚えている。
だから、誰かからのメールに
「美人グループとの合コンのお誘いかもしれない!」
なにか通知が来ると
「なにかお得な情報があるかもしれない!」
もっと些細なことで
「今やっているスマホゲームがキャンペーンをやっているらしい!」
………………
かつて一度でもそういうメールを受け取ると、その情報が得られたというだけで、脳はかつて生き存えたラッキーを喚起し、脳内に快楽性物質を放出する。
その報償物質により、我々はますますスマホを手放せなくなっているというのだ。
じゃあなに? スマホを触るなってことなの?!
読み進めていくと、我々人類がこの10年やそこらですっかりスマホに依存し始めていることは、多くの人が感じていることだろう。
それはもはや生活の一部であり、いまさら切り離すことなど不可能なのは著者も重々理解している。
ならどうすればいいのか?
少しでも依存していると感じる人は、1日に数時間でもいいからスマホの電源を切る時間を設けよう。
デジタルデトックスという言葉がある。
まさにデジタル機器に管理されている生活からの脱却を促す行為であり、その為の言葉だと私は理解している。
要は、スマホとの付き合い方を、よくよく考えていこう、というのだ。
最近、眠りが浅くなった。
不眠症になってしまった。
鬱気味の時間が長くなってきた……。
もしかしたら、原因のひとつにスマホが含まれているかもしれない。
いずれにしても寝る前のスマホをやめてみることから始めてみてはいかがだろうか?
スマホというアイテムは、便利に使ってなんぼなのだ。
機械に支配されるのは、それはもう少し先の未来であって欲しい。
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