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Mind the Gap

もちろん300点に満たない英語学習者は語彙力が圧倒的に不足しているのでそれを伸ばす必要があります.TOEICの単語の勉強といえば,『TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ』(朝日新聞出版)が定番ですが,超初級者(実は初級者も)はこの本を使ってはいけません.この本は一定レヴェルを超える学習者には名著中の名著です.たとえば,英語を話すのには何も抵抗感がない,学生時代は英語が得意で自信があったのになぜか上級者の関門である800点や900点に満たない,という学習者はこの本で抜けをつぶせばあっという間に900点を超えます.

でも,超初級者はこの「TOEIC特有の英語表現」を学習する前に空気や水のように重要な頻出単語1000-2000がごっそり抜けているのです.ここを埋めない限り,TOEIC頻出語を押さえても,一向に英語力も得点力も向上しません.

ではどうすればいいのかというと,それはかなり難しい問いになりますが,もしこの記事のように.『TOEIC® L&Rテスト やさしい英語で基礎トレーニング』『「意味順」で学ぶ英会話』を使って勉強しているのであれば『基礎トレーニング』のWords & Phrasesを確実に全部つぶすだけでいいです.本を漫然と眺めているだけでは覚えられないというのであれば,flash cardsを作るとか,それに類するアプリ(英語ではappといいます)を使って繰り返し覚えるとよいでしょう.

実はTOEICに限らず英語の習得において,語彙というのはものすごい大事です.本当は文法よりもずっと大事です.だけど,この学習者が語彙を身につけるために何をするべきかという問いに対して明確な答えを出すのはものすごく難しかったりします.ここから書くことも,完全ではありません,ある程度わかっている範囲でお答えすることにします.

Learn high frequency words!
はじめに書いたように,TOEIC特有の頻出語より前に,話し言葉や書き言葉だとか学校とか会社とか日常生活とかネイティヴかノンネイティヴとかそういうことに関係なく,英語世界の中で最もよく使われている頻度の高い1000語できれば2000語をまず覚えることです.自分が相当できないという自覚があれば頻出600語ぐらいでも良いかもしれません.それには,the, of, and, make, canなども含まれます.

さらに,語彙を身につけるということはこういうことだということを理解してください.

スペリング(つづり字)を見て音が浮かぶ。スペリング(つづり字)を見て意味が浮かぶ。音を聞いて意味が浮かぶ。④品詞・使い方がわかっている。⑤文脈がわかっている。

『はじめてのTOEIC® L&R テスト きほんのきほん』をより効果的に使うために

これをこなすには上に書いたように単語集で学ぶのではなく,自分が使っている教材の語彙を覚えるほうが良いのですが,このように指導者がいくら云っても学習者は単語集を欲しがるようです.そういうこともあり,プレジデント誌のインターヴューを受けた際には,300点以下の学習者向きの教材として次の2冊の単語集を薦めました.

どちらも中学生用の本ですが,前者は短い会話用例ベースになっている点,後者は中学生には必要かもしれないが大人の英語学習者には要らないような単語の収録が少なく,見出し語も少なく設定しているのが良いので紹介しました.いまも現役の本として刊行されているのか(絶版になっていないのか)は正直わかりませんが,Amazonにはまだ新品の在庫があるようです.

だいぶ前の本なので,今回もう少し新しい本を紹介しようかとも思いましたが,ベストのものが見当たりません.TOEIC用の単語集としては『金のフレーズ』が初級者が使うには難しすぎることは上に述べた通りですが,実は基本的な語を扱った『銀のフレーズ』があります.本当は600点を超えるまではこの本のほうがいいと思います.また,『金のフレーズ』が出る前の定番の単語集だった『新TOEIC TEST 出る順で学ぶ ボキャブラリー990』(同ハンディー版)や『TOEIC(R) L&Rテスト 頻出英単語』にはもう少し基本語が入っています.でもやはりこれらの本も超初級者には難しすぎるかな,と思っています.実は『TOEIC(R) TEST 英単語 超入門編』(Jリサーチ出版)や『まず覚えるTOEIC TEST英単語―基礎の基礎!』(Z会)という本が過去には出ていますが,上に挙げた『コーパスからはじめる単語使いこなし英会話』『中学英単語α』に出てくるような基本語の最も基本的な用法は含まれていません.

実は,そういう状況なので何年も見出し語を500-600前後に絞り,意味を覚えるのではなく,語の使い方に通じ,1冊やると文法やリスニングの力もつくようなTOEICの超初級者対象の単語集を出そうといくつもの出版社に持ちかけたのですが,売れる見込みがない企画は難しいようで,それは実現できていません(出版社で興味のあるがいらっしゃいましたら,ご連絡ください).ということで,対策としては最初に戻りますが,『基礎トレーニング』の語彙を覚えてくださいね,ということになります.

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