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エンジニア文化の軸?キャリアラダーとは何か

この記事について

エンジニア組織におけるキャリアラダーついて説明します
キャリアラダーとは何か、いつ使うべきか、メリットデメリットなどがザックリわかると思います

日本のエンジニア業界ではメジャーではないですが、GoogleやSpotifyなどを始め、キャリアラダーや、それに類似した制度を取り入れている企業は少なくないです

最近私が所属しているメルカリでも導入をすすめているため、今回紹介することにしました

キャリアラダーとは

会社内での職位、レベルの一覧。および各レベルのメンバーに対して期待するスキルや姿勢、行動に関する説明を含んだものです

ラダーは英語で「はしご」という意味です
主に評価や、ゴール設定、将来のキャリアイメージ想起、文化醸成等に使われます
「キャリアラダー」で検索すると、看護職のキャリアラダーが出てきます

キャリアラダーってこんな感じ

レベル一覧
レベル1 : Engineer 1
レベル2 : Engineer 2
レベル3 : Engineer 3
レベル4 : Senior Engineer 1
レベル5 : Senior Engineer 2
レベル6 : Principal Engineer

Engineer 1の詳細
[コーディング]
テストがしやすく、可読性が高いコードを書くよう意識している

[アーキテクチャ]
サービス全体のアーキテクチャの概要を知っている
全体のアーキテクチャにのっとった機能追加ができる

Engineer 2の詳細
[コーディング]
特定の分野でコードレビューができる
コメントの使うべきタイミングとそうでないタイミングを理解している

[アーキテクチャ]
機能レベルでの設計ができる
どこを共通化すべきか、どこを分離すべきかを説明できる

本物のキャリアラダーはもっともっと項目が多いのですが、ざっくりとしたイメージとしてはこんな感じです

職位や給与テーブルと似ている部分がありますが、以下の点で異なります

・能力ベース
・肩書き(部長・課長などの役職)とは必ずしも一致しない
・職種に特化している
・評価基準として使われる
・求められる行動やスキルが具体的

何に使われるか

ゴール設定
キャリアラダーを見ることで、自分のスキルや行動がどのようなレベルか、今後どう成長していきたいかということが明確になります

人事考課(評価)
評価の基準として使うことで、より具体的なスキルベースで会話が出来るようになります
また、会社がどのような人材を求めているかということが明確なので、評価された理由、されなかった理由などがよりクリアになり、納得性もあがりやすくなります

文化醸成
VALUEで終わらず、実際にどのような行動やスキルに価値を置くかをということがより明確になることで、組織内のメンバーは目指す方向性がわかりやすくなります。組織としての文化の醸成・促進に繋がります

採用
人事考課だけでなく、採用時の評価基準に利用することもできます。行動レベルでどのようなことが求められるかということがわかるため、入社後のズレを避けやすくなります

キャリアラダーのメリット

主なメリットは以下です

・評価者によるバラつきを減らし、一貫性をもたせることができる
・スキルの過不足を見つけやすい
・将来の自己イメージ像、目標を作りやすい
・会社が何を求めているか、何を求めていないかの認識のズレを防げる
・評価者が自信をもって評価する根拠となる

ゴールや自己診断にも利用できますが、特に評価に関するメリットが大きいと思います

キャリアラダーは、VALUEや行動指針と比べ、職種に特化しています
エンジニアであればコーディングや、設計、テスト手法、Delivery Cycle、開発フローといったものが含まれます。そのため、具体的なレベルで話ができるという特徴があります

例として、メルカリのVALUEとキャリアラダーを比較してみます

[VALUE]
  Go Bold(大胆にいこう!) 

[キャリアラダー]
  テストがしやすく、可読性が高いコードを意識して書ける

VALUEの場合、「あの行動は大胆だったか」「大胆なチャレンジか」ということを判断しなければいけません。人の感じ方に依存するため、マネージャー間で認識がズレやすそうです。

一方、「テストがしやすいコードが書けたか」であれば、世の中的に広く知られているノウハウやお作法があるため、評価や認識を揃えることが、比較的スムーズにすみそうです。仮に意見がぶつかったとしても、議論はしやすいはずです

このように、よりその職種に特化することで、より具体的でイメージしやすい基準を作ることが出来ます

基準が曖昧だと、「他のマネージャーと言っていることが違う」「以前と言っていたことが違う」といった問題の火種になります

抽象度を下げることで、議論がしやすく、納得しやすい評価へ繋がります

キャリアラダーのデメリット

もちろんメリットだけでなく以下のようなデメリットもあります

・作成・導入・運用にコストがかかる
・イレギュラーに対応しづらい。取りこぼしや対応できない範囲が発生しうる
・仕事のやり方などのトレンドに応じて変更が必要になる

規模が小さい時には不要だと思います。スタートアップで作っても、コストに割が合いません

評価に直結するため、キャリアラダーの作成には多くの意思決定が絡んできます
出来上がりだけを見ると、簡単に作れそうなドキュメントに見えますが、それなりの時間がかかると考えたほうがいいでしょう
Spotifyなど、キャリアラダー作成秘話をブログに公開している会社もあるので、参考にしてみることをオススメします

また、職種に特化した内容になるため、取りこぼしなどが発生しやすいです
先ほどの例の場合、コードを書かないエンジニアはどう評価するかといった課題が生まれる懸念があります

使っている企業の例

Spotify
Squad、Tribe、Guildなどで有名な、Spotifyでもキャリアラダーが存在します(正確にはラダーではなくCareer Path Framework)

会社への影響度をベースに、ステップ(ラダー的なもの)を昇っていく形式になっています
ステップの登り方は人それぞれで、どのようなスキルを習得して、どうステップを登っていくかは個人個人でマネージャーと設定するというのが特徴的です
各ステップごとに必要なスキルの図があるんですが、一覧ではなく関連性に応じて地図のようにマッピングされていて、見た目にもこだわりを感じます

作成秘話がブログにあげられています(3部構成!英語です)

Building a technical career path at Spotify

Circle CI
Circle CIでは、キャリアラダーにコンピテンシーマトリクスと呼ばれるものを利用しています
縦軸がコンピテンシー(スキルや知識)、横軸がレベルの表です

2018年に作成されたマトリクスと、ガイドラインが公開されています

コーディングやデバッグの仕方、関係性の築き方など、読んでいて勉強になるものが多いです
もちろんCircle CI用に特化されているものの、汎用的な内容も多いです。一読の価値あり

こちらも作成秘話がブログで公開されています(英語です)

7 steps to building an engineering competency matrix

メルカリ
メルカリでは今、キャリアラダーを元とした仕組みを導入してる最中です

会社設立から6年で急成長したことや、エンジニアの外国人比率が半分近いなど、様々な要因が絡み合い、かなり独特な文化が形成されつつあります

こちらもブログで作成秘話や、今現在の話を公開しています(英語です)

Shaping Mercari's Engineering Culture

終わりに

キャリアラダーに限りませんが、こういった文化醸成や評価の仕組みに興味を持っていただけたらいいなーと思います

次は、EM系か、また組織の仕組み的なものでnote書こうと思います

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