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Spiral Capital千葉様×THIRD、投資家インタビュー❶前編

2022年8月末、THIRDは26億円の資金調達を実施したことを発表いたしました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000064081.html

この資金調達を機に、THIRDではnoteアカウントを開設いたします。

企画第1弾として、投資家の方々に出資を決めた背景を語る対談インタビューをお届けします。
今回対談させていただいたのはSpiral Capitalの千葉貴史さんです。

千葉さんは現在、シード〜レイターまで幅広いステージの企業に対して投資・経営支援を担当されています。前職では不動産Techのスタートアップであるイタンジの創業メンバーで取締役COO/CFOを務めるなど、不動産領域の構造的な課題についても深い見識を持つ方が、THIRDに出資することを判断した背景について伺いました。

また、本インタビューは二本立てとなり、後編では千葉さん・井上から見た不動産業界の動向についてお話しています。後日公開しますので、改めてお知らせいたします。

【追記】
インタビュー後編を掲載しました。こちらよりご覧ください。

産業に大きなインパクトをもたらす、日本を支える企業の創出を目指して

THIRD井上(以下、井上):
この度は弊社への出資を決断いただきありがとうございました。同じ船に乗った仲間としてご一緒できることを嬉しく思います。では早速ですが、Spiral Capitalの概要から教えてください。

Spiral Capital千葉さん(以下、千葉さん):
Spiral Capitalは2016年に立ち上げた独立系VCです。大企業の持つヒト・モノ・カネのアセットをスタートアップと組み合わせるオープンイノベーションの推進や、テクノロジーによる産業変革の実現を目指しています。デジタルトランスフォーメーションという言葉が現れる前から、産業変革系のスタートアップやDXの領域に投資をしてきました。
特徴は、運用しているファンドを三つ持っていることです。一つは通常の純投資のVCファンドであるゼネラルファンド。二つ目が、セイノーさんと一緒に運用している物流領域を対象としたLogistics Innovation Fund。そして7月に新しくT&Dホールディングスという生命保険の会社と共同して開始したT&D Innovation Fundの三つになります。

インタビューTHIRDオフィスにて実施

井上:
ありがとうございます。Spiral Capitalにおける出資のポリシーなどがあれば教えてください。

千葉さん:
社会や産業へのインパクトが大きく、人の暮らしや働き方を向上するような事業を行う会社を中心に投資しています。特に重点的に意識している分野を社内ではBig 3と呼んでおり、FinTech、ヘルスケア、スマートインフラ(不動産、脱炭素、モビリティなど社会インフラの産業をテーマにしている)が対象です。

いま日本のスタートアップは、スモールIPOが多いと感じています。アメリカにおける時価総額の上位はTech企業が占め、新しい企業が大きく育っている一方で、日本では次の産業を代表するような会社やグローバルに勝てる会社が生み出されていません。もちろんメルカリやVisionalのように時価総額一千億円を超える会社は出始めていますが、そこに満足してはいけないと思っていますし、VCとしても巨大な金額を動かして一兆円企業を作り出せるような支援をすべきです。2-3年で小規模の成功を果たすのではなく、10-20年かかってでも産業に不可欠なインパクトを残せるかが、私たちがこの仕事に取り組む意義だと考えています。

投資銀行・PEファンドを経て不動産領域での自身のチャレンジ

井上:
では続けて、千葉さんの自己紹介もお願いいたします。

千葉さん:
2016年にSpiral Capitalに1号ファンドの創業メンバーとして参画し、現在はゼネラルファンドの2号ファンドの投資責任者を担っています。

大学卒業後はドイツ証券という投資銀行に入社し、リーマンショックが起こる直前のタイミングだったこともあり、企業再生や破綻処理などの案件を多く担当しました。その後は、カーライルというPEファンドに転職し、産業変革を推進するソフトウェア企業への投資などを約2年間経験しています。様々な企業に触れる中でITの力に感銘を受けていたのですが、同時に経営を経験していないまま投資の仕事をしていることに違和感を覚え、自身でも経営することを志すようになりました。その気持ちを胸にカーライルを飛び出した頃に、元からの友人でもあったイタンジ創業者の伊藤さんに誘われ、取締役COO/CFOとしてイタンジ創業に参画することを決めました。

そこから丸3年、幾度の苦難を経験しながらもピボットしたバーティカルSaaS事業が軌道に乗ったタイミングで、ドイツ証券時代の先輩だったSpiral Capital代表の奥野に「一緒にVCをやらないか」とSpiral Capital立ち上げの誘いを受け現職に参画し、現在で7年目になります。

当日はマスクをつけてお話を伺いました

井上:
千葉さんがカーライルから不動産の世界に足を踏み入れた時は、どういったお考えがあったのでしょうか?

千葉さん:
正直、最初は不動産Techをやろうとしていたわけではないんです。カーライルを退職した時もイタンジに声をかけられた時も、色んな起業プランを考えてはいましたが、取り組みたい事業内容は具体的に決まっていませんでした。なのでイタンジへの関与は、最初のうちは普通にお手伝いのつもりだったんです。ただ、直接関わるうちに、❶不動産という領域が衣食住の住を担う、人の生活に不可欠な領域であること、❷私を含めた3名の創業メンバーの強みや相互補完性の高さを肌で感じ、この経営チームであれば産業を変えられるのではと考え、正式に取締役COO/CFOを引き受け参画することにしました。

井上:
そんな流れがあったのですね。金融から不動産に移られた時、ギャップも大きかったと思いますが、実際にどんな課題意識を持たれましたか?

千葉さん:
不動産業界特有の多重構造の仕組みへの課題意識が強かったです。当時イタンジでは不動産賃貸の情報流通の領域で事業をしていたのですが、業者間情報流通システムや、一般消費者向けのポータルサイトの情報鮮度が低いと感じていました。

HPで掲載されている賃貸物件を申し込んだにも関わらず、成約済みになっていることって多いですよね?ユーザー体験も良いものではないですし、斡旋する側からしても余計な工数につながりがちです。そこで、情報流通やコミュニケーションの構造をシンプルに整理することで、オーナー・管理会社とユーザーを直接繋げる仕組みを作ろうと考えていました。なお、当時の創業初期メンバーがいまも事業を率いているので、その当時の理念は形を変えながら受け継がれており、今や申込受付や業者間流通のサービスで大きなシェアを得るまでに成長しています。

一方で、実際に業界に足を踏み入れることで、業界構造が変わってこなかったなりの理由があることも分かりました。エリアによって不動産業の在り方も変わりますし、システム化の進捗もバラつきがあります。事業で課題解決を試みて蓋を開けると、思っていた状況と違ったことが多く、紆余曲折していました。そのおかげもあって業界の理解は相当深まったと思います。

井上:
身を持って業界課題の根深さを実感されたんですね。そんな中で弊社のビジネスに可能性を感じてくださり嬉しく思います。

難易度が高い不動産Techの世界、それでも投資を後押しした理由

井上:
千葉様とお会いしたきっかけは確か御社の松本さん のご紹介でしたよね。どんな形で松本さんからは紹介を受けたのでしょうか?

千葉さん:
2021年夏頃でしょうか。松本の大学時代に知る中でも大変優秀かつ尊敬していた先輩二人が、CEOとCOOを務めている会社だと紹介を受けていました。なのでお会いする前からお話しするのが楽しみでしたよ!

井上:
だいぶ持ち上げていませんか?(笑)裏でそんなにハードルが上がっていたなんて…結果的に出資いただけて本当に良かったです。第一印象はどう感じられましたか?

千葉さん:
第一印象から良かったですよ。最初のMTGでは資金調達に本格的に動く前のタイミングだったので、会社説明をいただきましたが、その時点で不動産Techのど真ん中の事業が来たなと思いました。

私自身の投資テーマにAIの社会実装があるのですが、2020年あたりから一部のスタートアップがもう一段深く進んでいく可能性があるなと考えていて、そこにハマった感覚がありました。これまでのAIプレイヤー第一世代は受託型モデルが主流で、POC(実証実験)を探索していた時期がありましたが、その後AIのアルゴリズムが一般化し技術が成熟化していく中で、プロダクトに組み込まれサービスとして浸透していく流れを感じていたんです。例えば、私の投資先だと製造領域のアダコテックもそうですね。

井上:
不動産業界に詳しい千葉さんから太鼓判を押されると心強いです。投資を決めた具体的なポイントもあれば教えてください。

千葉さん:
理由は三つあります。一つは経営チームのバランスが良かったことです。

井上さんは前職であるリヴァンプにおいて、業務改善や事業再生コンサルティングを経験されていますが、その時もかなり深く入り込んで細かく現場の理解をしていたことが印象的でした。顧客課題の解像度が極めて高いBizDevチーム、そこに世界的なスキルを有するAIチームがいて、TechとBiz双方が深く絡みながらバランス良く組み合わさっている。それは会社として大きな強みだと思いました。



二つ目はプロダクトですね。先程の理由と重なりますが、パワーのある経営チームから生まれたプロダクトが、深い現場理解に裏付けられた優れたものだと感じました。

ペーパーワークが多いこの領域では、単に業務内容をオンラインに置き換えただけではユーザーに浸透せず使われないことも多いです。不動産物件の管理人のITリテラシーに寄り添い、業務プロセスを無理やり変えていくのではなく、プロダクト側で工夫を凝らすことで、お客様にとってのスイッチコストを下げる配慮がなされていました。その結果お客様からも支持されており、業界の大手企業が軒並み導入を進めているという結果に繋がっていると思います。

三つ目は、マーケットの広がりやポテンシャルへの期待です。不動産業界は、売買・賃貸・管理どの領域であっても、上位企業が物件保有量や取引量で高いシェアを持っている上位寡占型の業界につき、大手から攻めていくことがセオリーです。その中で既に導入が進んでいること、そして今後期待されるアップセルの余地を鑑みると、不動産のメンテナンス領域だけで市場4兆円と言われている中で、THIRDがそのデファクトスタンダードを担えると感じました。そうなることで、日本のかなりの設備の履歴がTHIRDの管理ロイド内で管理されるようになります。管理ロイドでシェアを取りデータを抑えていることで、次のステップとして二段掛け、三段掛けの展開がスムーズにいくイメージが沸きました。

要は、経営チームのバランスが良いから良いモノづくりが出来ているし、良いプロダクトだから顧客に選ばれ浸透しており、それがその後の事業の拡張性に繋がっている、良い循環が生まれている会社だと思ったんです。

井上:
ありがとうございます。経営チームは出資するうえでの判断基準になると様々な投資家の方々より伺います。印象的だった点をもう少し具体的に言うと、どういった要素をご評価いただけたのでしょうか。

千葉さん:
まずは、人と人との信頼関係がとても大事なので、誠実さ・真摯さを持っている経営チームなのかを大切にしています。その上で井上さんに特化した要素で言うと、外部を巻き込む力、言い換えれば採用力や資金調達を実現するストーリーテリングの能力、そして、実際に行動して学びながら改善に活かすPDCA力を感じられたことがポイントです。

これら全ての要素において、井上さんからはこの業界で絶対にやり切るという情熱、そして執念を感じました。例えば、現場の業務にかかる時間を調べるといった、泥臭いことまでやりきって顧客理解を深めてらっしゃいましたね。そこまで深く理解しているからこそ生まれたプロダクトだと思いますし、その深さまで辿り着いた人が途中で投げ出すとは思えないので、必ず最後までやり遂げるだろうという信頼がありました。

井上:
私自身、「経営改革の変数は現場にしか落ちていない」という考えを大切にしています。その点も理解いただけたようで嬉しいです!

千葉さん:
起業は大変ですし、短期で成果が出るものではないので、かなりの時間を捧げる覚悟が必要です。これだけ満たしていれば良いというわけではないですが、上記の点は私の投資先では網羅していることが多いですね。地に足ついた経営を行い、顧客目線で事業に必要な投資をしていく経営者でなければ成し遂げられないと思いますし、井上さんはその要素を併せ持った経営者だと考えています。

一緒に高い目標を達成していけるように、出来る限り支援していくつもりです。これからもよろしくお願いします。

井上:
心強いです。こちらこそよろしくお願いします!


インタビュー後編はこちらよりご覧いただけます。
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https://third-inc.co.jp/recruiting/index


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