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宅配ピザはなぜ1枚無料にできるのか。 ピザが食べたくなる瞬間とは・・・。


2020年は外食業界にとって歴史的な災害の年になったが、期せずして急拡大した業界もある。いちばん注目された業態が宅配業界だ。
宅配ピザチェーンについてお話します。

・宅配ピザはなぜ1枚無料にできるのか                     ・業態開発の間違え                                ・宅配業界が突き詰める基本戦略                    ・宅配ピザの価値とは何か


・宅配ピザはなぜ1枚無料にできるのか                 日本の宅配ピザの値段はすでにみなさんお気づきのように、イタリアンレストランのピザの2倍くらい高いイメージがある。               これは宅配ピザの価格の約半分が配送関連の費用だ。
自ら受け取り行くと半額というサービスがもうすっかり定着しているが、配送料がかからなければ、半額でも問題ないのだろう。


・業態開発の間違え
小売店や外食事業の専門用語に“業態開発” という言葉がある。お客から見れば一見どれも同じに見えるカフェやレストランでも、商品が提供される方法(type of operation for selling) の違いがあれば、異なる業態となる。
当然、まったく同じビザを売るお店でも、セルフサービスかフルサービスか、テイクアウト専門、デリバリー専門では業態が異なることを意味する。この違いは、ユーザーにどんな価値を提供するのか最も重要な事業コンセプトの一つである。                            どの業態の事業を営んでいるのかを正確に理解していないと、売り上げや客数に悩んでいても改善策が見つけられない。                  業態とは、エンドユーザーがその事業のどこに価値を感じているかを簡単に見分けることができる基本材料であるからだ。


・宅配業界が突き詰める基本戦略
この度の新型コロナ禍で宅配業界がなぜ伸びたのか?          誰でもわかる答えだが、外のお店へ行くことが危険なためである。    しかも、現在のようにネットで事前決済できれば、直に接触しなくても受け取れる時代だ。コロナ禍のように外出できない社会現象が今後起きなくても、宅配事業者が突き詰めるべき基本戦略について、実際に体験したことから一つお話したい。

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かつて日本中に拡大した宅配ピザチェーンは、なかなかその価格帯ゆえに売り上げが上がらず苦戦した時期がある。                 冷凍技術やレンジ技術も進化してスーパーで売られる冷凍ピザは宅配の3分の1の数百円でまあまあのピザが売られるようになっていた。                それでも、宅配ピザチェーンがなくならないのは、くつろいだ自宅に持ってきてくれるという価値が指示されているからだ。


スマホが普及していない当時、大手宅配ピザチェーンはどこもコマーシャルで販売を競っていた。                         最盛期、大手チェーンは年間7~8回も億単位のTVCFを流し、年間で十億円以上の膨大なチラシを配っていた。                     どのチェーンもどんなトッピングのせるか、今ならお得などの繰り返しであった。数多くの商品開発競争をしているが、どうだろう~。         結局よく売れるのはデラックスなどのいわゆる全部乗せだ。              年末にいたっては毎年カニエビを出していれば毎年売上はたいして変わらない。コマーシャルの調査をするとチーズがトローリとすご~く伸びるシーンが『常に食べたくなる率No1』だ。                    どんな演出やタレント、各社がこぞって商品開発にトッピングを競って高級食材を使って原価を上げても差のない結果となる。
それは宅配ピザのユーザーの一番求めている価値が『早く食べたい』からであって、中身は『迷ってる時間がもったいないので一番売れてるいのでいい』ということになる。



・宅配ピザの価値とは
そのことがわからず試行錯誤を繰り替えしていたある年の夏。      突然115%以上も売上結果が出たキャンペーンがあった。              たまたま猛暑の年でもあったのだが、この時は通常のキャンペーンCFとは大きく異なり、それは非常にシンプルであたりまえの、          『ピザ・・・がやってくる~』というメッセージだけだ。


単純にピザが自宅に届く、熱い夏に快適な部屋から出ることなく、頼めばすぐにやってくるというCF内容だ。                        トッピングや味のことは何も言っていない。                  映像も涼しい部屋で待つ家族、宅配バイクで届けてくれる映像だけ。

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キャンペ―ン担当スタッフも、実は新しいネタもなく、仕方なく絞った案が【宅配ピザの価値の基本、自宅にすぐ持っていく】という価値だった。  驚いたことに、結果はその年実施した多くのキャンペ―ンの中で最高であった。 

この業態の最大のユーザーメリットが、【出来立てを早く届けること】であるから、早く届けることができる商圏を徹底的に絞ってヘビーユーザーを囲い込むことである。               

宅配ピザはあらかじめ準備した生地にオーダーのトッピングをのせ、ベルトコンベアーオーブンに入れて6分~7分(当時)かかるため、配達時間を5分~10分以内にしても、最短で15分くらいになる。
より小さい商圏でも、そのエリアに住む人、働く人のなかで圧倒的独占状態の目安に50%以上をリピーターにするまで集中することが重要だ。    【出来立てを早く届けること】を一度真剣に考え、挑戦して欲しい戦略である。

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