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お金の使い道

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トラとイノシシは、みんなからあつめたお金をつかって、どうしたら学校がもっとすてきになるか話し合っていました。

トラは言いました。

「ぼくはとしょかんがすきだから、としょかんの本をふやしたり、いすをふかふかなものにかえたりしたいな」


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イノシシがおこりっぽく言いました。

「ええっ、としょかんなんかより、うんどうじょうをきれいにするほうがいいにきまってるよ!あそんでいるときにだれかがけがをしたらどうするんだい。きみは、みんなのあんぜんなんてどうでもいいんだね!ひどいやつだなあ」

いきなりせめられたトラは、びっくりして、こう言いかえしました。

「きみだって、べんきょうがしたい人のことを何も考えていないじゃないか!学校はべんきょうするところだぞ!としょかんがどうでもいいだなんて、きみこそひどいよ!」

イノシシは顔をまっかにしました。


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「なんだと!」

ふたりは今にもとっくみあいの大げんかになりそうでしたが、イノシシは友だちに呼ばれて教室を出て行きました。そして、タコがやってきました。


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「おや、トラくん。どうしたんだい、そんなにこうふんして。何かあったのかい」


「ねえタコくん、イノシシのやつが、みんなのお金をとしょかんの本やいすじゃなくて、うんどうじょうのせいびに使おうと言うんだ。みんなべんきょうしに学校に来ているのに、べんきょうさせないつもりなんだ!ひどいよね。タコくんもそう思うでしょう?」


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タコは、あつく語るトラになんと言えばいいのかなやみましたが、ゆうきを出して言いました。

「トラくん、ぼくは、としょかんもうんどうじょうも大切だと思うよ。べんきょうもうんどうも楽しいからね。だから、りょうほうに半分ずつお金をつかうのはどうかな」

トラは、タコのいけんを聞いて、れいせいになりました。そして、少し考えてみました。

「そうだね、どっちにもお金をかけたら、どっちもうまく行きそうだ!イノシシくんに話してみよう」


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やがてもどってきたイノシシも、このかんがえにさんせいでした。


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何日かして、お金はぜんぶ使いきりました。

しかし、お金はたくさんはなかったので、本がすうさつふえて、やぶれていたサッカーゴールがしゅうりされただけでした。

イノシシは言いました。

「もっとよく話し合って、ゆうせんじゅんいをきめるべきだったね。ぼくがトラくんに強く言ってしまったから、ていねいなぎろんができなかったよね。ごめんね」

タコは言いました。

「ぼくも、ちゅうとはんぱなていあんをしてごめんよ」

トラが言いました。

「ぼくもはんせいするよ」


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3人はなかなおりして、それからはきちんと話し合うことで、学校をどんどんすてきなところにしていきました。


【解説】

何かについて議論するとき、相手の主張を曲解して取り上げ、その曲解された主張を攻撃し反論する手法を、ストローマン(藁人形論法)と言います。この物語では、イノシシはトラの図書館を充実させたいという主張を「トラは図書館のためなら運動場でみんなが怪我をしてもいいと思っている」と捻じ曲げて攻撃しています。反対に、トラはイノシシの運動場の設備を整えたいという主張を「イノシシは図書館なんかどうでもよくて、みんなが勉強するのを妨げようとしている」と捻じ曲げて攻撃しています。
相手の主張を捻じ曲げて攻撃すると一瞬勝った気になれますが、第三者から、言葉が通じない人だとか論理的ではないと思われ、結果的に自身の信頼性が低くなってしまうので、やめましょう。
二つの相反する主張の中間が真実だとする誤謬を、中庸に訴える論証、あるいは偽の妥協と言います。この物語では、タコはトラとイノシシのアイディアの真ん中をとりましたが、結果的には満足な改善にはなりませんでした。
二つの物事の間を取ることは有効な場合もありますが、安易にそうするのは考えものです。よく考えた上で、ベストな選択ができるようにしましょう。


参考:"strawman"


”middle ground”



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