他者志向とアドラー心理学

『GIVE&TAKE 与える人こそ成功する時代』(アダム・グラント著 三笠書房)を読んでの感想です。

「ギブの輪がつらくなる時」という記事を書いたときに「自己犠牲的なギバーは幸せになれない」と書きました。

https://note.com/think_m_m/n/n3f7b708c632f

これは『GIVE&TAKE』を読んでいて特に印象に残った部分だったので、記事にさせていただきました。

ではどうすればギバーが幸福になるかというと、「他者志向」が重要だと著者のアダム・グラントは述べています。

ギバーはもともと他者利益への関心が高いのが特徴です。
それでいて自己利益への関心が高い人を「他者志向的」とし、自己利益への関心が低い人を「自己犠牲的」と分けているのです。

では両者の行動にはどのような違いがあるのでしょうか?

自己犠牲的なギバーはわかりやすいでしょう。
自分を省みずに、自分のリソースを割いて相手に与えようとする人のことですが、生物学者のバーバラ・オークレイは「病的なまでに他人に尽くすあまり、自分自身のニーズを損ねる」としています。
そして彼らには「頼まれたら断れない」「人に助けを求めることに抵抗感がある」という特徴があります。

他者志向的なギバーはどうでしょうか?
彼らは人に頼ることに抵抗感はありません。なぜならコミュニティやチーム全体でのwin-winを考えているので自分を犠牲にすることもないのです。
自分を犠牲にしないため、相手に対する共感ではなく相手の利益になることを判断の基準にします。

この本を読んだ時、私は『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)に書かれていたアドラー心理学のことを思い出しました。

他者志向的なギバーの行動はまさしくアドラー心理学の「共同体感覚」に根ざしたものであり、「課題の分離」を行った上で人に与えていると思えたのです。

「共同体感覚」とはアドラー心理学の鍵概念です。
他者を仲間だと見なし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることなのですが、ここでの共同体は学校や職場などを超えたすべての世界を指しています。
ギバーには「この世界のすべてが敵ではない」という意識があるので、人の協力を得て成功することができるのです。

「課題の分離」とは自分の課題と他者の課題を分離することです。
そのためにまず「これは誰の課題か?」と問いかけます。
自己犠牲的なギバーは他者の課題を自分の課題としてしまいますが、他者志向のギバーは課題の分離を行った上で「どう与えるか」を考えます。

(ところで自己犠牲にについてはどう考えるのがいいのでしょうか?
この点についての考察は『いきがいについて』(神谷美恵子著 みすず書房)が参考になりそうなので、いつかは記事にしたいと考えています。)

『GIVE&TAKE』と『嫌われる勇気』という全く違う2つの書籍ですが、結びつけてみると色々と見えてきました。

真のギバーはアドラー心理学の体現者なのかもしれません。

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