ビュッフェでポテトとナゲットしかとらない、そういうところ。
友達2人とコペンハーゲンでビュッフェに行った。2人とも生まれも育ちもデンマークで、彼らとは2年前フォルケホイスコーレで出会った仲。
私たちは久々に会うときでも、いつも感動の再会というよりは大学の学食でたまたま会ったくらいのテンションで挨拶する。
「お?!ぅぉおー!いえーい久しぶり!最近会ってなかったけど元気してたー?」みたいな。ちょっとだけ、もじもじっとする感じ。なかなか会えないからそれよりもっと嬉しいんだけど、キャー!ってならない。本当はすごく、嬉しいんだけど。
話は少しそれるけど、しいたけ占いで有名なしいたけ.さんが乙女座(私の星座)についてこう言ってた。「乙女座の人たちは100人に1人くらいしか本当の姿を見せません。」" 本当の姿 "ってイマイチつかみずらい言葉だけど正直「なんで知ってるの!」ってくらいあたってると思った。
嘘の自分でいるのは自分が一番疲れる。だから偽ってるつもりはないけど、でもしいたけ占い的に言うならば彼らは私が ”本当の姿” を見せてる数少ない人たちかもしれない。
実はこの2人には、フォルケホイスコーレに留学中、子どもみたいに泣きながら不満とストレスをぶちまけたことがある。覚えてる限り、最近同じようなことを他の友達にしたことはない。しかもストレスによって自己中心度が増した私の不満は、デンマークとかデンマーク人について。彼らも他人事ではない…というかまさに不満の矛先にいる立場にいるのに、ブチまけてしまった。
2人はそんな子どもみたいに泣く私の話をすごい真剣に聞いてくれて、学校に関することは「校長に改善するよう話すからメモとるよ?」と、私が言ったことをこと細かくメモ取りながら聴いてくれた。「私も悪いんだけど…」と弱気な感じで言うと「いや、感じることに良いとか悪いとかないから!あなたが感じる悲しみに大きいも小さいもない。悲しいものは悲しいし、つらいもんはつらいでしょ。大丈夫だから。言って!」と言ってくれた。
一緒に過ごした時間は正直そこまで多くないんだけど、恩人ような兄妹のような、そんな人たち。
話はビュッフェに戻って…。
コペンハーゲンは東京に比べたらとても小さい。私たち3人の共通の友達がそのビュッフェレストランで働いていたくらい。私たちは食事をしながら、世界から国境を無くすべきか否か、みたいな話から、2人が日本に来たら何する?みたいな、いつも通りかなりバリエーションに富んだ話をしていた。(ちなみに国境の話は意見が分かれて結構ヒートアップした)
そこで気づいた。ビュッフェ台には所狭しと種類豊富な食事が用意されているのに、友達の1人(20代前半・女性)はフライドポテトとナゲットと、あとちょっとのポテトグラタンしか食べてない。さっき「やったーー!」と小躍りしていたのはこのフライドポテトと3つのナゲットに対してだったらしい。
そういえば彼女はかなりの偏食。以前彼女の家に泊まらせてもらってた時、ピタパンと冷凍のミックスベジタブルと赤パプリカを切ったのを食べたけど、「ピタパンのポケットに具を入れて食べるのはどうしても嫌だ」(←ピタパンって中に具を入れるためのものじゃないの!?ってなった笑)「ドレッシングとか味がするものが嫌い」と言って味気ないパンと野菜を別々に食べてて、なんだか面白いな〜と思ったのを思い出した。コーヒーも紅茶も、水に味がついたみたいで嫌いだそう。
世界の料理が集まるフードコートに行っても、彼女が口にしたのは水だけだったし、「日本のお土産なにほしい?」と聞くと即答で「旅行用の圧縮パック。あれはすごいわ。グッジョブ、ジャパン。」と意外なものを欲しがったりして、度々ちょっとクスっとなるような新しい視点をくれる。
だから彼女がマックに行ってれば食べられるようなものしか取ってないことにはあんまり驚かなかったけど、心のどこかで「ビュッフェなのにもったいない…」と思っている自分がいることに気づいた。もう一人の彼もチキンとライスしかとっておらず、なんだかお皿が寂しげだった。(いくつかの種類のライスの食べ比べしてるように見えた。)
一方自分の手元に目をやると、いかにもビュッフェ感漂う余白のないお皿があった。ボリューム感と満腹感は目でも味わえる。ただ、よく考えたらそこにあるのは二軍と三軍の集合体だと気づく。あれ、めっちゃテンション上がるものがあんまりない。少なくとも彼女があの少量のポテトとナゲットとポテトグラタンに見せた幸せそうな笑みはこぼれない。。。
私はビュッフェ台で、無意識に「サラダと〜ご飯と〜おかずと〜…あ、コレもアレも美味しそう。ホホイのホイッ」っていうリズムで視界に入った美味しそうなものに手を伸ばしていた。ブュッフェだからある程度とらないともったいないと思っていたんだと思う。
それと似ていてちょっと違うかもしれないけど、" 欲 "はちょっと怖い。" もったいない "という概念は好きだけど、" 欲 "と手を組むと厄介で、本当に大切なものがガラクタに埋もれてしまったり、必要以上に人をアグレッシブにして可能性があると思う。例えば「無料だから」「セールだから」と、安くなってる洋服屋でとりあえず着れそうな服を手に取ったり、「少しでも早く、少しでも前に行って他の人にとられないように」と周りの人を押しのけて列の先頭に躍り出たり…。そうして得たセールの戦利品は、量をたくさん買ったはいいけど家に帰って見たらイマイチどれも気に入らなくて、タンスにしまわれ一生を終えることもある。でも一方、セールの波が引いてから店でふとトキめいて買った1着が、なんだか好きでたまらなくて何度も一緒に冬を越してます。なんてこともある。
そんなことを、この日から1ヶ月後にお風呂はいってたらふと思い出した。
ここで言いたいのはビュッフェで食べ物をとりすぎないほうがいい、ということじゃない。そもそもそんなの私が人に言うことでもないし、次またビュッフェに行ってもきっと私は、なんだかんだ「へへへ。全部美味しそうだからとりすぎちゃったよ」ってお皿に色々盛るだろうし、好きなものを好きなだけ食べれるのがビュッフェなので、好きなものを好きなだけ食べればいいと思う。
私がこれを書き残したいなと思った理由はたった一つ。
この出来事を思い出してる時、すごく幸せだったから。
ビュッフェでポテトとナゲットしかとらない、彼らのそういうことを思い出してる間「わ〜…私は彼も彼女も(その友達2人が)大好きなんだな…」って思って、その感覚がもう幸せでしょうがなかった。それだけ。言葉にするとそれだけなんだけど、出会えたこととか、今まで知ってきた彼らのこととか、日常の中にある特別な幸福感を感じられた喜びとか…全部が一気に顔だしてくれる。「幸せ」という2文字に収まらない、もっと細かい色々がその幸せをつくってくれてて、それがよ〜く見える、そんな感じ。
生きててちょっと感じるモヤモヤとかイライラとかって、ちょっとなら、だましだまし問題なく生きてける。無視するとか、押し殺すとか。
でもそれを続けると、気付いたら自分とはかけ離れてた大きな違和感を生きることになってるんじゃないかと思う。少なくとも私はそう感じる。
だから小さなモヤモヤに危うく人生の舵を取られそうな時は、ポテトとナゲットとポテトグラタンを思い出そうと思う。この「…ふふふっ。好きだわ〜」ってなるこの幸福感が、生活をぽわっとあったかくしてくれて、なんだか自分に戻してくれる感覚になる。そしてそう感じてる自分でいることが心地いいから。
恋人への思いを綴ってるみたいになっているけれど笑、これは彼女たちだけじゃなくて、私は対人関係においてほぼみんなにこんな感覚を持ってる。「あ〜この人すきだな。」って無意識レベルで感じてる。その感覚を意識レベルにもってくると、この人と友達になれて嬉しいなって幸せになったり、その人の魅力的なユニークさに度々「…ふふふっ」と勝手に幸せをもらってたりする。
例えば、「もう夜遅いんだけどなんかお腹減ったんだよね〜ケバブ食べちゃお!」ってとこだったり、あの子が部活を止めようとする友達に言った一言だったり、旅先でいい感じに別行動できる距離感だったり…。
こういう具体的なとこじゃなくても、なんかいつかの笑顔が忘れられないとかもある。私自身もよく分からないところで「ふふふっ(良いな〜そういうところ)」となってる。そういう小さいことを、よく覚えてしまってる。
大切なものや人を「あ〜大切。好き。」って感じることと、それを実際に行動して大切にすることが、私を幸せにしてくれる1つの方法なんだと思う。
誕生日じゃなくてもプレゼントを渡したいし、遠くても近くても頻繁に会えても会えなくても、大切な人は大切にしたいし、それを伝えなきゃ伝わらない。と言い聞かせてる。
ちなみにデンマークから日本に帰国する飛行機の離陸寸前まで、そのブュッフェに一緒に行った友達の1人とは機内でも連絡をとっていた。
私は話の脈略を無視して「色々とありがとうね。あなたが私の友達でいてくれて本当に幸せだし、感謝してるよ。」と伝えた。
そしたら彼女は「私こそだよ。ありがとう。くだらない話も真剣な話もできる関係なのが嬉しいよ。何かあったらいつでも電話してよね!本当に!」と言ってくれた。日本に帰国後のことを相談してたから、心配してくれていたんだと思う。そして何もなかったかのように、「私が日本に行く時にはさ〜…」と、話題は彼女が行きたいという、私も知らないような日本の不思議なお祭りの話に戻る。
キレイな夕焼けとこのやりとりをキッカケに、デンマークでの色々思い出して、離陸するときはちょっとだけ涙がでてしまった。
こうやって振り返って感動して「ありがとう」って思う、こんな感情もまた「大切にしたい」と思うものの一つでもある。
過去にすがりすぎず、でもこういう想いを携えて、足どり軽く進んでいこう。
※追記:ビュッフェの話で出てきた面白い友人が、この記事をわざわざデンマーク語に翻訳して読んだらしく、「ピタパンには野菜だけでは無理だけど他の何かと一緒なら入れて食べるから」とか、「ただ選んで食べてるだけでアンバランスな食事ではない」と丁寧にいくつか訂正してきた。笑 そうゆうとこだよもう!そうゆとこが好きなんだよ!笑
photo by me, Denmark, Copenhagen
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