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ThingsがバリューチェーンのDXに挑む理由│Interview #01 代表取締役 鈴木 敦也

こんにちは、株式会社Things 公式note編集部です。

私たちは、バリューチェーンの改革を推進する製品開発プラットフォーム「PRISM」の提供を通して、製造業のデジタルトランスフォーメーションに取り組むスタートアップです。

ありがたいことに、2023年3月にプレシリーズAで2.2億円の資金調達を実施。日本経済新聞をはじめとしたメディアの皆様にもご注目頂き、2023年5月に「PRISM」を正式にローンチしました。

しかし、当社が向き合う社会課題や、解決した先の未来、そして私たちのチームについてまだまだお伝えしきれていない…!

ということで、社員インタビューシリーズをはじめます!

記念すべき第一回は、代表取締役の鈴木 敦也(すずき・あつや)。創業につながる原体験や、私たちが解決に取り組む課題、プロダクト思想、組織運営についてお届けします。

技術の社会実装を支えるビジネス職を13年経験。満を持してThingsを創業

ーー鈴木さんはモノづくりへの愛が大きいですよね。

鈴木:私は元々音楽が好きで、高校生の頃「スピーカーを作りたい!」という思い一つで、大学では機械工学科に進学。研究室では民族楽器の振動解析に没頭しました。

高校生の頃はほとんど音楽の世界しか見えていませんでしたが、大学では視野がぐっと広がりました。

機械に関する分野の知見を広げるうちに、優れた技術や研究があっても、経済合理性がない事で広く浸透しない例も沢山ある事を感じたのです。

そのため就職活動では、「技術に関係するところに対して、事業開発で携わりたい」と考え三菱商事に入りました。

ーー学生の頃から、製造業を盛り上げることを意識していたんですね。

鈴木:三菱商事に入ってすぐの配属アンケートで、第一希望から第六希望すべてに「機械グループ」と書いて、人事の方に呆れられました(笑)

ーー熱い思いが伝わってきます(笑)

鈴木:三菱商事では希望が通って機械グループに配属され、主にドバイ向け鉄道案件やトルクメニスタン向け化学プラント案件を担当。海外駐在も経験しました。

その後電子楽器メーカーのAlphaTheta(旧Pioneer DJ)でDX推進リード、VR機器メーカーのFOVEで資金調達と事業開発を経て「技術をエンパワーするビジネスサイド」として広く浅くキャリアを積んできたと思います。

約13年間というキャリアを振り返ると、現場でエンジニアと喧々諤々言いながら最高のモノづくりをしていた時が一番楽しく、印象に残っています。

製造業の変革には、技術部門を対象としたSaaSが必要

ーー「PRISM」は、技術部門を含めたバリューチェーン全体を対象とした、先例のないプロダクトです。

鈴木:技術部門の働き方を変えたいと考えるようになった原体験は、三菱商事で担当したインフラ案件で、駐在時に経験したトラブルです。

当時は重工メーカーさんと机を並べて、何もない砂漠にインフラを建設するという、1日に最大で2万人もの人が従事するダイナミックな現場に身をおくことができました。

巨大なインフラプロジェクトに関わるというのは華やかに聞こえますが、そこで見たものは図面をはじめとした大量のドキュメントのやりとりと整理に忙殺されるエンジニアの姿です。

そして実感したのは、機械や設備をひとつ納品するためには膨大なドキュメントが日々生まれて、それらに管理上のミスがあると大きな手戻りにつながるということでした。

ーーどんなことがあったんですか?

鈴木:とある設備の内部に据え付けられている部品に関し、お客さまと図面をやりとりする中でバージョン管理上のミスがあり、古いバージョンの図面で作業を進めてしまっていたんです。

納期直前にそのミスが発覚し、その設備内部に取り付けられたある部品を全て、ひとつひとつ変えていく大きな手戻りになりました。

日本からはエンジニアが10人規模で出張し、炎天下の中突貫で交換作業を進め、私自身も各方面に頭を下げながら何とかギリギリで納期に間に合わせた経験がありました。渡航費用、宿泊費用、工賃諸々を合わせるとコストインパクトは一千万円規模だったと思います。

製造業では設計段階のミスが増幅されて後工程に影響を及ぼす性質がある一方、数十万点もの部品を扱うためどうしてもミスは起こります。そうした構造的な負を肌身で感じた出来事でした。

ーー全国の製造業の現場で、似たようなことが日々起きていると思います。

鈴木:その後入社したPioneer DJで、DXを推進する旗振り役としての経験が「技術部門の働き方を変えたい」という使命感に少しずつ変わっていきました。

私は電子楽器が企画されてから開発、生産され、お店に並ぶまでの流れを俯瞰しながらデータの利活用を推進していました。

製品開発・生産の現場では、設計者が構想設計や原価管理を行い、その後調達・生産と工程が進むにつれ、製品開発に関する情報は枝分かれし、必要な情報が各工程で書き足されていきます。

一方で、製品化を進める上では部門間の擦り合わせが不可欠で、頻繁な定例会への出席に加え、担当者間での口頭、エクセルやメールでの調整も行われます。ハードウェアは部品が一つでも足りなければ完成しません。製品開発を進める上での情報管理は正確性を求められる上に非常に複雑で、現場に大きな負荷がかかっているのです。

ソフトウェア開発の世界ではgithubがソースコードの、セールス・マーケティングの世界ではSalesforceが顧客の情報を一元管理することで、部門間のやり取りがスムーズに動いています。製造業の抜本的な改革にはバリューチェーン全体で情報を正確に受け渡す仕組みを整備することが不可欠なのではないか、と。

ーーなるほど、これらの経験が「PRISM」のプロダクト構想につながっているんですね。SIerや大手パッケージベンダーではなく、SaaSで起業しなければいけなかったのでしょうか?

鈴木:SaaSであれば、ビジネスモデルを前提としたプロダクトや企業文化、サポート体制をスクラッチから作れるのではないかと考えました。

大手のSIerでは、パッケージソフトのカスタマイズ開発がビジネスモデルとして確立しています。予実の考え方や社内体制もそれを前提としているため、既存の商慣習を変えられない可能性が高いと思いました。

また、既存のパッケージベンダーでSaaSをやるにも、組織体系や社内文化の改革から手を付けなければ進まない。製造業全体がDX化に前向きな今だからできることをしたいという思いで、起業という選択肢をとりました。

「PRISM」で現代のあうんの呼吸を導きたい

ーー「PRISM」は、具体的にどのようなお客様に、どんな価値を提供しようと考えていますか?

鈴木:「PRISM」は、製品開発、生産のプロセスにおいて部門間をまたぐ「絶対的なデータベース」を作ることで、生産に関わる各部門が最適な判断を下せるようにするソフトウェアです。

製造業において本当の意味でDXを実現するためには、品質の8割を左右する設計部門の働き方を変えることを起点に、バリューチェーン全体を巻き込むことが必要です。

製品開発・生産を進める上で部門間の結節点となるのはBOM(Bill of Material)と呼ばれる部品リストです(※)。この部品リストがマスターとなり、調達や生産が自部門の活動を進めます。一つの製品を生産するために必要な部品点数は数百から数万に及ぶ事もあります。

「PRISM」ではこのBOMをクラウドで一元管理することで、製品開発の過程で必要な情報を誰でもすぐに入手できるようになります。

たとえば調達部門や生産部門が最新版の図面を入手するために設計部門にリクエストしたり、手動で行っていたBOMのメンテナンスが自動化されたりすることで、製品開発の効率が向上することが期待されます。

※編集部注:PDM(製品情報管理システム)やPLM(製品ライフサイクル管理システム)を導入している企業もありますが、予算が潤沢な大手企業に限られます。

ーーこれまでのやり方が大きく変わりそうです。

鈴木:分業化によって発展した製造業では「部署内で承認が取れたら初めて隣の部署に渡す」というバッチ処理の流れで情報の受け渡しをしてきました。

これが「PRISM」を導入することで情報の受け渡しがなめらかになり、各々が最適な判断を下せるようになる。お互いゆるやかに侵食していき、モノづくりがなめらかになっていく世界、言わば「現代のあうんの呼吸」を実現したいと考えています。

メンバー全員が顧客に向き合い、価値を提供

ーー製造業界では、デジタル環境の改革を考えている企業も多いと思います。「PRISM」は国内の市場で受け入れられるでしょうか。

鈴木:製造業のIT支出は約5.4兆円とも言われ、全産業トップ。さらにコロナ禍以降のDX需要で成長率もトップです。

こうした中、中堅メーカーの方から、老朽化した社内システムを刷新したいというお話を良く聞きます。特に事業承継を経て代替わりした社長がいるメーカーは改革意欲が強く、ITを積極的に活用したい傾向が強いです。

一方で、中堅メーカーにとって高価なシステム導入はハードルが高いため、製品開発現場でのドキュメント管理はエクセルやメールで何とか運用しているのが実態です。

この分野にアプローチする製造業スタートアップの数はまだまだ少ないですし、さらにBOMという複雑なシリアスデータに正面から向き合ってきたのはThingsだけですので、先行優位性があります。

ーー6月にプロダクトを正式ローンチして以降、お客さまの反応はいかがですか。

鈴木:プロダクトの進化スピードや、UX・UIを評価いただくことが多いです。

プロダクトの進化が速いのは、Slackでお客さまと会話できるオープンチャンネルを設けるなど、PdM、デザイナー、エンジニア全員がユーザーと直接の接点がある環境で開発を進めているからです。

ある日、お客さまからユーザビリティ改善に関するリクエストを頂きました。背景を理解するために、エンジニアから直接連絡して、その日のうちにインタビューを実施。リクエストを頂いた翌日には改訂版がリリースされていることもありました。

今後もメンバーがお客さまに向き合い続けることで「PRISM」を進化させ、製造業における本当のデジタルトランスフォーメンションを実現したいと考えています。

「PRISM」を全国のお客さまに広げていくために、熱量の高い人材が必要です。

組織もモノづくりも、「見えている景色」の共有で力を発揮する

ーーPRISMを盛り上げていくために、今のフェーズで必要な人材について教えてください。

鈴木:シンプルに言うと「素直ないい人」です。

アーリー期のスタートアップはトラブルも多いですが、そんな中でも愚直にコトに向かうスタンスの方が合うと思います。製造業に関わったことがなくても、自発的にユーザーインタビューをしたり、顧客打ち合わせに参加したりなど、貪欲に知識を吸収する好奇心を持った方は、成長が速い。

そうした行動の積み重ねが事業の成長につながり、ひいては「製造業のバリューチェーンを変革する」というミッションの実現に近づいていきます。

ーー新しい方がジョインするにあたり、「ここは自慢できる!」というポイントを教えてください。

鈴木:社内でも情報をオープンにしている思想です。スタートアップではよく「自走できる人材」が求められますが、そもそも異なる強みを持つメンバーが自走し活躍するためには、情報もフェアに与えられなければならないと考えています。

Thingsはドキュメント文化があり、個人情報と顧客の秘匿情報以外は基本的に全てNotionに情報が集約、メンバー全員が閲覧できる形で記録されています。新しく入った方でも過去のMTGノートなどが参照できるようになっていますよ。

Slackのパブリックチャンネル率も80~90%と高い水準で推移しています。一般的にはパブリックチャンネル率が70%もあれば良い方と言われているので、コミュニケーションに関してはかなりオープンだと思います。

「だれもがいつでも情報にアクセスできるようになっていれば、あうんの呼吸でどんどん良いものが生まれていく」というのが「PRSIM」のプロダクトとしての思想であり、Thingsの組織運営でも同じです。

情報のやりとりがなめらかであることの価値を私たち自身が体現した先に、Thingsが目指す未来が実現できると思っています。

ーー鈴木さん、今日はありがとうございました。

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