Lion Heart
修学旅行で動物園なんてガキっぽい、だなんて事を、君はけして言わなかった。
北海道のド田舎にある僕らの中学校は、旭川市まで修学旅行に来た。その見学場所の一つが、旭山動物園。
運良く君と同じ班になった僕は、売店でだらだらアイスを食べている他の班員を放って、二人だけで色んな動物を観に行った。
オリトというライオンがいた。オリトはまだ幼げな顔をしていて、一人きりで柵の中をうろうろしている。「寂しそうじゃない?」という君に、僕は大人ぶって「色々、事情があるんじゃない?」と返す。
けれども君は更に続ける。「いつか睦ぶ相手ができたらいいねえ。」「…むつ、ぶ?」「仲良しって意味だよ。」
図書委員でよく本を読んでいる君は僕よりずっと物知りで、僕は、恥をかいたなと赤くなる。
けれどもたじろいでなんかいられない。僕はこの旅で、長い間の目標を達成すると決めていたんだ。
「…オリトに恋人ができる前に、僕が言う。君が好き、だよ。」
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