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漫画村はマンガビジネスが上手くいきすぎているからこそ出てきた犯罪者なんだぞ

あの「漫画村」事件の主犯に実刑判決が出ました。

で、その判決の意味を解説しにABEMAさんの報道番組にゲストでお呼ばれ。EXITのかねちーさんりんたろーさん、柴田阿弥さん、パックンさん、安部敏樹さんの質問にぼくが答えていくスタイルです。

概要はyahooニュースさんがおまとめ↓↓↓

記事内容でだいたいなのですが、なにせこの番組、出演者さんとの事前の打ち合わせはまったくナシ。みんなそれぞれ台本だけ読んできているだけで、その場で思ったことを質問してこっちは答えてという報道ファイトクラブなのでもうちょっと説明したかったな、とかそもそも答え方ミスったとかありました。

なのでちょっと振り返りつつ補足をできればと思います。

まずは出た判決について

「罰金や賠償金が全然少ないんじゃないの?」問題

一説には犯人たちが数億円荒稼ぎしたんじゃないかという事件なので、確かに数千万円という賠償金はいかにも少なく見えます。が、これは「刑事事件」の判決ですので、この判決を受けてこれから「民事事件」としての訴訟が始まります。回収できるかどうかは分かりませんが、原告の集英社さんは漫画村の関係者に対してこれから莫大な額の民事訴訟を起こしていかれると思います(この被害額を算出していくのもまた大変なのですが……)。ので、取り急ぎ現時点での判決としてはこれくらいかな、という感じかと。

パックンさんの指摘した「サブスクにするべきでは?」問題

これはずーっと世の中に横たわる「音楽はサブスクリプションサービスによって海賊版を撲滅したんだからマンガもそうするべき」という意見ですね。今までもいろんな方が散々、主張されてきました。

が、この主張、実は検討するレベルにもないくらいあっさりと否定できます。

まず整理すると、当時の音楽シーンはナップスターとか無料で聞けてしまう違法なデータやファイル共有によって、CDなどの売上が大きく損なわれ、マーケットサイズがめちゃくちゃ縮小したところにサブスクリプション型のサービスが登場して売上が回復し、今にも続くビジネスモデルになった、ということなのですが、現在マンガの置かれている環境はこのときの音楽とはまったく違って「市場、売上は拡大中」なのです。

つまり、ビジネスモデルはすでにちゃんと機能していて、毎年市場規模は130%成長。デジタルに絞っても年間売上は4000億円ほどに到達し、紙市場も足せば6000億円オーバー。紙だけやっていたころに比べてもう倍以上。

これを全部やめてサブスクモデルを導入しよう!という提案は、番組でも言いましたが新たに月1000円の会員を述べ年間4億人、月平均でも3000万人以上集めなければいけないわけです。ちなみに月1000円くらいのNetflixさんが先々月発表によると「アジア全体で」ようやく月の会員数が「2685万人」。全然足りてないわけです。

逆にいうと日本の電子書籍市場はサブスクを導入してはいないですが、Netflixさんより遥かに大きい規模なのです。

というか日本において電子書籍は映像サービス全体より大きいんですよ!

それを全部やめるの?マジで?って思っちゃうじゃないですか。ちらっとではありますがこのことについてメディアで説明できたのは今回ホントに良かったと思ってます!

この状況に対しての海賊版、違法サイトの問題なので、サービスやビジネスがうまくいってないから、の正反対の話で、めちゃくちゃ上手くいっているからこそ、犯罪者たちが金の匂いを嗅ぎつけて集まってきている、というのがこの問題の本質で。

だからビジネスが上手くいっていなくて緊急事態!ではなくて上手くいっているビジネスが犯罪者に狙われている緊急事態!なんです。

それに対して業界として全力で、いろんな方法で対処しているし、犯罪者撲滅のために皆さんの協力も得られると嬉しい!という話なんですね。

「サイトやサービスが多すぎて不便、非効率」問題

にもこのことから反論できます。これだけ多いからこの規模にできている、という解釈ができますから。

日本は特に「〇〇経済圏」が多い国ですので、電子書籍を「楽天ポイントがつかないとやだ」「Tポイントをつけて」「PayPayの還元が欲しい」「余ったヨドバシのポイントで払いたい」「毎月のスマホの決済と一緒にdポイントで」「U-NEXT月会費の余った分で」……この読者さんたちのすべてのニーズにそれぞれ対応するサービスがあります。これは巨大な一個のサービスではおよそ対応できませんというかしてません。Netflixでもappleミュージックでもポイントなんかつきませんしポイントでも払えませんよね?不便とか非効率どころかめっちゃうまく日本の事情に対応してると思います。サービスを少なくしろというならそもそもまずポイントからでは……?

じゃあ結局読者はどうしたらいいの?問題

もうちょっと時間があったらEXITかねちーさんの「立ち読みしててすみませんでした」の話に乗っかって、これからも全然立ち読みしてください!webで!という話をしたかったんですよね。

マンガはそもそも「連載時はものすごく安価に提供。たくさん読んで」もらって「のちのち単行本になったときは多少お金を払って買ってください」というビジネスモデルです。連載を紙の雑誌でやっていた時代は印刷費や流通費がかかるのでタダというわけにはいきませんでしたが、それでも週刊少年ジャンプさんは180円とかで提供されていたわけで(今でも290円。日本がデフレじゃなければ安く感じるのですが……)限りなく安価を目指していたわけです。

それが現代、webを使うことによってついに連載はすべて無料で皆さんにお届けすることができるようになりました!これはもうむしろマンガのビジネスモデルが目指していた状況ですね。集英社「ゼブラック」講談社「コミックdays」小学館「サンデーうぇぶり」スクエニ「マンガup」秋田書店「マンガクロス」……などなど出版社の公式アプリやサービスでほぼすべての連載が読める状態です。近頃は紙に載ってる連載も「出張連載」とかでwebで読めることも多いですし。

出版社別とか面倒くさい?そうですか。だったらピッコマやLINEマンガ、ebookjapanなんかのアプリで曜日連載なんかどうでしょう。各社の精鋭が集まってセレクトされた連載がまとめて読めますよ。

最新のマンガはいまいちついていけなくて昔のが読みたいんだよね?そうですか。だったらマンガBANG!やまんが王国、ピッコマなんかの名作リバイバル連載とかどうでしょう。

メジャーすぎるマンガはあまり読まないんだよねえ……?そうですかそうですかだったらpixivコミックやニコニコ漫画さんにも無料連載が大量です!大手さん以外のちょっとエッジの効いたマンガがいっぱいですよ。

これら全部「無料連載」ですから。あるんですよ。漫画村とかいかなくても。だからね、とにかく「連載」を読んで欲しいんです。テレビや映像配信とかでいう「リアタイ」です。この「連載をリアタイで」という文化を「再び」根付かせる努力が業界全体に必要だしみんなが目指しているところです。ですので、コミックスをお金出して買うかどうかは置いておいて(昔だってコミックス買う子は買っていたし、回し読みの雑誌しか読まない子もいたわけです)とにかく読者の皆さんは連載を無料で読んでいただいて、楽しんで、仲間内で話題にして、とかしてもらえればそれがいちばんいいし、まずはそれだけでいいと思います!

あと最後に……

錚々たる企業が考えたビジネスモデルにぼくがyahoo,LINE,kakaoの3社しかあげなかった問題←関係者向け言い訳

いや違うんですよ。番組の直前やってた別のやり取りでyahooとLINEが統合してバックヤードをEBJがやるというニュースについて話してて……それでパッと2社出てきてその流れだとピッコマさんだからkakaoで、そんで日本勢はってなったところでどれとどれをあげればいいか一瞬考えちゃって何も出せなくなっちゃったんですよ!!!

……っていう言い訳をしに今日はやってまいりました。

改めまして錚々たる企業群とは

amazia、amazon、アムタス、Animate、apple、booklista、booklive、CCC、CyberAgent、DeNA、DMM、dwango、大日本印刷、DOCOMO、エイシス、フジテレビ、google、KDDI、MediaDo、MTI、NTTsolmare、NTTぷらら、パピレス、pixiv、楽天、softbank、SHARP、SONY、TBS、凸版印刷、U-NEXT、ヨドバシカメラ……他他。出版社側は割愛。

さんたちのことです。言えない!これ全部はパッと言えない!ごめんなさい!

そして抜けてないよね!何度見返しても自信ないよ!

でも読者の皆さんは、こんなにも豪華なメンツが電子書籍に可能性を感じてビジネスとして育ててきたし、これからも支えていくんだという事実を覚えて帰ってもらえると幸いです!

最後に番組そのものに興味持っていただいた方はダイジェスト版が公式youtubeに上げられていたので貼っておきますね。

ABEMAのアプリ入れている方もこのyoutubeのリンクのコメント欄からいけますよー。


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