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サッカー記者が「コロナ禍新規」のアイドルオタクになっていった話

はじめまして。サッカー記者の竹内達也(@thetheteatea)と申します。
新規オタクの時からとても優しくしてくださっているしとさん(@skt4060)から「オタクアドベントカレンダー書いてくれないですか?」って頼まれたので、場違いなんじゃないかと思いながらも書くことにしました。

頼まれた時は日本代表取材でサウジアラビアにいたので、帰ってから時間つくって書くぞ!と気合いを入れていたんですが、高校選手権、Jリーグ終盤戦、シーズン移行、インカレ、アジア杯前ものと目の前の仕事を進めていた結果、予定日は大幅に過ぎ去り、クリスマスが来ていました。23日の深夜から急いで書いています。マジで遅くなってすみません。
田村保乃さん(5月のYoutube配信で早くもクリスマス比喩を使いこなしていた)くらい前々から機運を高めておけばこんなことにはならなかったはずなので、もし来年があるなら10月のグリカあたりから準備しておこうと思います。よろしくお願いします。

というわけで前置きが長くなりましたが、アドベントカレンダーの仮タイトルに入れたようにいわゆる「コロナ禍新規」としての生活を振り返ることにします。
普段は主に日向坂46と櫻坂46を追っていますが、時々サッカーに例えながら書くので、分からない話は適当に読み飛ばしていただいて大丈夫なように書ければと思います。


コロナ禍新規としての第一歩

僕が日向坂46を追うようになったのは、コロナ禍によってJリーグが中断していた2020年春ごろ、グループ復帰が発表されたばかりの影山優佳さんの存在がきっかけでした。
当時、影山さんは公式ブログで「影山優佳のWE LOVE Jリーグ」というJリーグ全クラブ紹介企画を始めており、その第1回が日本最北端のJクラブ・北海道コンサドーレ札幌だったのですが、あまりの前のめりっぷりに感銘を受けたのが発端です。

サッカー文化の特性上、Jリーグに触れる人はだいたい特定クラブから掘り下げていくのが通例(かつての影山さんもそうしていたはず)で、わざわざ北から順番に始めるという選択をするのは間違いなく、ある種の網羅癖の人です。
試合をすべて見るとか、全スタジアムを巡るとか、スローガンを片っ端から紹介するとか、そういう類のあれです。当時はまさかW杯を全試合見るようになる人だとまでは思ってなかったんですが、僕もどちらかというとそちら側人間でシンパシーがあったので、素直に楽しみだなと思いつつ、次のような形で紹介しました。

結果的にこの予想は当たることになり、日向坂46のまとめサイトに取り上げられ、「影山さんと繋がりあるんですか?」というDMがいくつも届くという新参オタクを震え上がらせるには十分すぎる事案も起きることになるわけですが、それも含めて普段のサッカー記事ではなかなかないタイプの反響がありました。コロナ禍で仕事がなくなるという先行き不安で、精神的にやられかけていたタイミングでもあったので、ファンの人の反応が温かくも感じ、そのことも日向坂46を追い始める理由になりました。

またそのタイミングでちょうど偶然、Jリーグ再開前のインタビュー企画(スポーツナビさん主催)のオファーがあり、影山さん本人にオンライン取材をする機会をいただきました。
ほとんど影山さんのことを知らない状況での取材だったので、サッカーの話題が盛り上がらないかもしれないという懸念もあり、最低限の準備はしておくべきだと片っ端から全メンバーのブログを遡って、プロフィールも可能な限り頭に叩き込んでいきました。網羅癖なので。
ただ、実際のインタビューは影山さんのおかげでサッカーの内容だけで面白いものになり、多くの前向きな反響を頂けるインタビューになりました。

その節にもまとめていただいてありがとうございました。

その後も影山さんには何度かインタビューをさせていただく機会はあったんですが、仕事は仕事として、このあたりから普通にグループを追うようになりました。その縁を作ってくださったのが影山さんだったのは間違いありませんが、他にもはっきりと覚えているきっかけが2つほどあります。

サッカー界を通して見た共創的価値観

1つはインタビュー準備で読んだメンバーのブログが抜群に面白かったことです。

アイドルのブログと言えばライブ出演や番組告知、自分の好きなもの紹介といったテーマが王道だと思っていましたが、節目でグループ全体の描写をしてくれる人(高瀬愛奈さん)、周りのメンバーを上手に捉えている人(潮紗理菜さんや宮田愛萌さん)など、関係性に深みを感じさせるようなエントリがたびたびあったのが印象的でした。
またメンバーごとに書いていることがわりと異なっていて、「グループ内でもそれぞれ考えていることが違っても全然いいんだな」というのも良い意味で驚きでした。最近はわりとメンバー間で目線を揃えた発信がなされているので、ちょっと寂しく思っていたりします。
ちなみにこの頃から影山さんに加え、丹生明里さんを推しメンとして応援するようになりましたが、タフそうで主人公っぽいからというめっちゃサッカーオタク的な理由が大きかったです。

もう1つはライブが面白かったことです。

2020年7月に『HINATAZAKA46 Live Online, YES! with YOU! 〜“22人”の音楽隊と風変わりな仲間たち〜』という配信ライブがあり、たしかせこさん(@seko_gunners)とツイキャスをしながら見ていたんですが、無観客・完全オンラインという難しい状況のなか、物語色の強い演出でそれを乗り越えようとしていたのが印象的でした。
またグループの特色を何より大きく感じた記憶もあり、それは大型モニターにオンライン視聴中のファンを映し出すという演出もあったことです。最初は正直その光景への驚きのほうが大きかったのですが、それでも『約束の卵』という楽曲で富田鈴花さんが映し出された瞬間、思いのこもった涙まじりの表情でモニターを見つめていて、ファンと良い関係性を築けているんだなと感じました。

こうした「共創」的な価値観は日向坂46の一つの強みであり続けているんだと思いますが、個人的には「競争」的な側面が表に出やすいサッカーとの対比で、大きなインパクトを受けました。というのも当時、自分が仕事で見ているサッカー界も、コロナ禍によって大きな変化を迫られていたからです。

コロナ禍前の2019年のJリーグは、DAZNマネーで経済規模が拡大し、観客動員数も大幅に増加し、さらに欧州風味のトライが進む横浜F・マリノスが優勝するという形で、ある種の新時代的な空気が漂っていました。ところが2020年の初旬からコロナ禍により、その歩みがいったんストップし、「まずはみんなで協力して生き残ろう」というムードに変わっていきました。

当時はその変化を「競争から共存へ」といったキーワードで語られていたのですが、実際にサッカー界は、迅速で機動的なコロナ禍対応を行っており、わりと前向きな方向に進んでいるんじゃないかという感覚もありました。個人的にもそういう方向性のnoteをまとめたりしていました。ただ、そう自信を持って思えていたのも、日向坂の活動(とくに当時公開された映画『3年目のデビュー』など)を見ながら「こういうふうに人は協力して前に進めるんだなあ」と感じていたことが大きかったように記憶しています。

オタクとしてどう生きるか

その後は配信ライブを見たり、CDを買うようになったり、興味本位でミーグリに行ったり(影山さんのは卒業するまで行っていました)、雑誌を遡ってインタビューを読み漁ったりと、一般的なオタクとしてのルーティーンをこなすようになり、21年夏ごろからは仕事も平時に戻りつつあったので、普通の生活サイクルの中でグループを追うという習慣がつきました。
初めて現場に行った秋ツアーの『全国おひさま化計画』は休みが取りやすい平日開催が多かったので7公演ほど行きました。とくに丹生明里さんセンターの『ドレミソラシド』は思い出深く、あれからなぜかしゃぼん玉を見ると泣けてきますし、23年秋ツアー『Happy Train Tour 2023』の4期生曲『シーラカンス』で涙腺がバグり始めたのはさすがに自分でもびっくりでした。
また当時はカタールW杯に向けた最終予選が行われていたのですが、第3戦でサウジアラビアに負けて絶望の精神状態のまま宮城公演に徹夜参戦したのを覚えています。ギリギリそこで立ち直ることができ、翌朝の始発でオーストラリア戦に向けた練習を取材できたおかげで、まともな仕事になったので感謝しています。

21年の冬は『冬のユニット祭り』→『ひなくり2021』の3日間とも参加できました。ユニット祭りではソロカバーの高瀬愛奈さん『DEAR...again』、富田鈴花さん『白い恋人達』の披露がめちゃくちゃ印象に残っています。ひなくり2021はとにかく『ってか』が良すぎて震えました。近年は負荷マネジメントによって強度低めですが、いつか完全復活を期待しています。
22年3月にはグループが目標としていた東京ドーム公演『3回目のひな誕祭』にも両日行くことができました。W杯最終予選のオーストラリアから帰国直後という強行日程(個人的に時差のない飛行機長距離移動は逆にキツい)でしたが、あの『JOYFUL LOVE』の景色をはじめ全編通じてここにいられて良かったと思える体験ができました。この時期は総じて、どれも「最高の試合を見た」というサッカーオタク的な感覚に近かったように思います。

ところがその後はサッカーチームと同様、アイドルグループにもいわゆる「サイクルの狭間」的な苦境も来るんだなという学びを感じています。
オタクとして1周目なので「こんなふうに目指すものに手が届かなくなったりするんだなあ」という素直な感想がありつつ、現地取材していたカタールW杯と『ひなくり2022』が重なったり、ことごとくライブのスケジュールと合わないことが多くなって前ほど追えていないのが心苦しいんですが、現状の停滞感に対してはサッカーオタク的な整理はついている部分もあります。

W杯スペイン戦という大勝負を前に余計な記念撮影をしている筆者本人です

いかにして苦境と寄り添うか

サッカーチームで一つのサイクルが終わりに近づいた時、その壁を乗り越えていくためには、究極的に「編成面の改革」しかないんですよね。要するに選手の大幅な入れ替えです。そうした編成の改革を避けながらチームが強くあり続けるという例は、コンペティションの競争力が高くなればなるほど希少です。しかし、アイドル業界で身を切るような編成を推し進めていくのは卒業制度に触れるまでもなく、めちゃくちゃ大変そうだなという印象が強いです。

そもそもサッカーに例えられる移籍市場的なものが存在しないので前提からして大きく違うわけですが、オーディションという新人専用の移籍ウインドーは不定期で数年に1度だけ設けられます。ただ、その際には獲得と放出を同時に行うことはできないので、保有スカッドが膨らむことはあっても、起用選手のテコ入れはまた別ロジックで行うことを迫られます。またシーズンがおおむね年間3ステージ制(シングル発売時期ごと)に分かれており、そのたびに登録ウインドーが開設され、登録外選手はスポット起用しかできないので、保有枠の分厚さを効果的に戦力化するのも難しいという事情もありそうです。最近はJリーグのシーズン移行議論で頭を悩ませることが多く、いろんな課題を考えていたのですが、それすらも可愛く見えてくる激ムズ条件が立ちはだかっており、サイクルを動かしていくのはそれだけ大変なんだなという感覚を持つようになりました。

他にもサッカーに重ねてしまう出来事は多々あって、たとえば映画『希望と絶望』で示唆されていたような、メンバー負荷と高強度パフォーマンスのジレンマはとても象徴的な例です。日向坂の魅力とされていた全力投球なライブは、レッドブルグループの片道切符型ストーミングのプレーモデルに例えられる志向だと感じているんですが、レッドブル軍団の戦略を可能とするのは豊富なスカウティング網で集められた有望若手の大量保有と、フィジカルの汎用性を活用したターンオーバー起用です。ところが全員選抜制を貫いていた日向坂はいわば「主力選手への依存度が高い」状態にあるため、その戦法を常時志向するのは当然難しいよねという結論が出てきます。

そうしたプレーモデルと負荷管理のジレンマは夏の『W-KEYAKI FES. 2022』、秋ツアー『Happy Smile Tour 2022』でパフォーマンスにも大きく表れていたわけですが、個人的には現在の日本代表でリーグ戦と欧州カップ戦の過密日程の中、長距離移動を経ながらW杯予選を戦っている選手たちを見ていると、当時のことを少し思い出します。スケジュールも何もかも違うので単純比較しているわけではないんですが、代表チームは編成に余剰枠を作りづらいという前述の点で類似性があり、そのためファンの反応も近いものがあるので、記事を書く際には少しその点を意識していたりという感じです。

こうしたグループのプレーモデルの話は当時からサッカーファンの人とはよくしていた(レッドブル=日向坂は前述のせこさんの受け売り)んですが、日向坂46に限った話ではないなとも思います。分厚い戦力を抱えていても格式を維持しながらクロース、モドリッチ、ベンゼマが輝き続けていたレアル・マドリーを彷彿とさせる乃木坂46、再出発で編成改革を決断しながらもパフォーマンス向上を突き詰めるためサイクル構築に時間がかかりそうだという一部プレミアメガクラブ勢の改革を想起させる櫻坂46という感じで、個人的にはそれぞれのグループにそれぞれのサイクルがあるんだろうなという思いで見ていました。

またアイドルのプレーモデルは楽曲によって規定される部分がめちゃくちゃ大きいので、いわゆる「曲が強い」「曲が弱い」論争を見ていると、サッカーはそれくらいでかい環境要因に当たるボールやピッチサイズまでは変わらないからいいよなと思います。グループのマンネリ化を個人の努力に転嫁する声もありますが、でもサッカーの編成改革って功労者かつ影響力が大きい人から順に切られたりもする(その選手は他で活躍するチャンスもある)から、アイドルでやるのはだいぶ大変だなという気持ちになるので、そこはあんまり考えないようにしています。

じゃあファンとして何ができるかというと、いまどのようなサイクルに位置づけられ、どのような課題が目の前にあり、どのように乗り越えていくべきかを見つめ、それらと寄り添っていくのが理性的な振る舞い方なのかなとは感じています。もちろん熱狂できたり没頭できれば一番いいのは間違いないんですけど。

終わりに。中盤3枚『Start over!』です

……という感じのことを個人的には昨年末くらいにずっと考えていたんですが、そんな最中のカタールW杯の出発前日、櫻坂46の東京ドーム公演1日目に行った結果、めちゃくちゃ食らってしまい、だいぶハマり込んだままいまに至っています。

もともと『KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!』『欅坂46 THE LAST LIVE』などの配信ライブは一通り見ていて、『W-KEYAKI FES. 2021』くらいからはずっと藤吉夏鈴さんかっけえだけ言ってるタイプのオタクだったんですが、この東京ドームを機にカタールW杯期間は『五月雨よ』が個人的テーマソングになり、今年に入ってからの3rdツアーには6公演通い、大阪千秋楽で食らった『Start over!』の勢いでマレーシアにも行き、3rdアニラにも2日間とも行きました。とても楽しい1年でした。

こんな近くでライブ見ることもう二度とない気がする(マレーシア)

さきほど書いた編成というテーマでいえば、活動終了・改名再出発という決断もそうですし、キャプテンが変わったり、BACKS制と選抜制を弾力的に活用したりと、めちゃくちゃ注目しがいのある采配が連発されているのも興味深いんですが、そうした大きな痛みを乗り越えて掴み取った現状には素直に敬意を感じています。そのあたりのことはまた機会があれば書きたいです。

実は当初、アドベントカレンダーは別のテーマでやろうと思っていて、「これまで現地で見てきたライブアクトベストイレブン」を作りながら過去を振り返ろうと思っていたんですが、GKを『あくびLetter』初披露、1トップを『ってか』ひなくり2021にしたところまでは良いとして、CBに『こんなに好きになっちゃっていいの?』(Happy Train Tour2023)と『僕たちの La vie en rose』(3rdアニラ1日目)と並べて髙橋未来虹さんと土生瑞穂さんで高さ対策を考え始めた辺りから雲行きが怪しくなり、僕の中のマルセロ・ビエルサが3センター全てに『Start over!』(それぞれJapan Expo Malaysia、3rdツアー大阪千秋楽、アニラDay2)を並べたところでプロジェクトが頓挫しました。もう少し場数を重ねて選択肢を増やし、本気のフリーマン藤吉夏鈴×3システムで戦える自信がついたら2026年の北中米ワールドカップを目指します。エスタディオ・アステカ(収容87,000人)で勝ちましょう。

というわけで以上です。読んでくださった方、ありがとうございました。

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