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【仏事作法解説】浄土真宗のお経。何をとなえると良いのか(浄土真宗本願寺派)

今回は、「浄土真宗のお経。何をとなえると良いのか」というテーマでお話したいと思います。

浄土真宗のお寺とご縁がある方や、ご家族を亡くされた方から、このようなご質問をいただくことがあります。

「お仏壇の前でお経をとなえようと思うのですが、何のお経をとなえるのが良いのでしょうか」

このような質問です。今回はその質問にお答えしていこうと思います。それでは、さっそく見ていきましょう。

▼動画でもご覧いただけます

◆何のお経をとなえると良いのか

「何のお経をとなえると良いのか」という質問に対する答えですが、浄土真宗本願寺派では、『日常勤行聖典』というお経の本があります。このお経の本は、名前に日常とついているように、日常的にお経をとなえていただきたいという願いからつくられたものだと思います。ですので、この『日常勤行聖典』に記載されているお経をおとなえすると良いということになります。

では、どのようなお経が記されているかというと、主に5つのお経や讃歌が記されています。

・『正信念仏偈・和讃』(しょうしんねんぶつげ・わさん)
・『讃仏偈』(さんぶつげ)
・『重誓偈』(じゅうせいげ)
・『十二礼』(じゅうにらい)
・『仏説阿弥陀経』(ぶっせつあみだきょう)

『日常勤行聖典』には、主にこの5つのお経や讃歌が記されています。

補足ですが、ここではお経や讃歌と言い方を分けています。それは分類上、お釈迦さまが説かれたものをお経と言い、それ以外はお経とはされていないからです。この中の『正信念仏偈・和讃』は、親鸞聖人がつくられたものですので、厳密にはお経ではなく、聖典や讃歌と言われます。聖典とは聖なる書物のことで、讃歌とは仏様のお徳を讃える偈のことです。

また、『十二礼』も、龍樹菩薩というお坊さんがつくられたものとされていますので、お経ではなく讃歌と言われます。便宜上、今回はお経ということで話をすることもありますが、そういう前提がありますので、念のため補足しておきます。勿論、『正信念仏偈・和讃』も『十二礼』も、お経と同じように大切にされています。

繰り返しますと、「何のお経をとなえると良いのか」という質問に対する答えは、『日常勤行聖典』に記されている5つのお経や讃歌をおとなえすると良いということになります。

◆お経や讃歌の種類

次に、今挙げた『日常勤行聖典』に記されているお経や讃歌の簡単な解説と、どのような時にとなえると良いのかについても補足しておきます。

まず、『正信念仏偈』ですが、これは浄土真宗の宗祖である親鸞聖人がつくられた偈です。浄土真宗で根本のお経とされる『仏説無量寿経』の内容や、七人の高僧の著書をもとにして、阿弥陀仏という仏様の救いを喜び、あきらかにしたものです。

本願寺の第八代の宗主である蓮如上人は、文明5年(西暦1473年)に、この『正信念仏偈』と、同じく親鸞聖人がつくられた『和讃』とを合わせて、毎日の朝夕にとなえるという仕組みをつくられました。

現在でも西本願寺では、親鸞聖人の御木像がご安置された御影堂(ごえいどう)にて、朝には『正信念仏偈・和讃』がおとなえされ、夕方には『正信念仏偈』がおとなえされています。また、浄土真宗の各お寺の法要という行事などでも、『正信念仏偈・和讃』はよくおとなえされます。

このように、『正信念仏偈』は浄土真宗において、とても大切にされているものです。ですので、「何のお経をとなえると良いのか」という質問に対して、もし一つだけ挙げるとするならば、『正信念仏偈』をおとなえすることをお勧めします。そして、『正信念仏偈』に加えて、その後に記されている『和讃』も合わせておとなえされると良いでしょう。

次に、『讃仏偈』と『重誓偈』です。先ほども少しご紹介しましたが、浄土真宗で根本のお経とされる『仏説無量寿経』というお経があります。『讃仏偈』と『重誓偈』は、この『仏説無量寿経』の中にある偈の部分を抜き出したものです。阿弥陀仏という仏様がおこした、「迷い苦しむものを救う」という願いが示されています。

西本願寺でも、阿弥陀仏がご安置された阿弥陀堂という本堂では、朝に『讃仏偈』がおとなえされ、夕方には『重誓偈』がおとなえされています。

『讃仏偈』と『重誓偈』は、『正信念仏偈』や『仏説阿弥陀経』と比較すると短いお経です。もし、時間があまりない時には、『讃仏偈』や『重誓偈』をおとなえされるのも良いでしょう。

次に『十二礼』ですが、親鸞聖人が尊敬された龍樹菩薩というお坊さんがつくられた偈とされています。阿弥陀仏の浄土という仏の国へ往き生まれることを願い、阿弥陀仏を讃嘆した偈です。

たまに、『十二礼』をおとなえされるのも良いでしょう。

『仏説阿弥陀経』ですが、こちらは「仏説」(仏が説かれた)とあるように、お釈迦様が説かれたお経とされています。『仏説無量寿経』と同じく、浄土真宗でとても大切にされているお経です。

『仏説阿弥陀経』には、阿弥陀仏の浄土という仏の国の麗しさが説かれています。そしてまた、阿弥陀仏の救いを信じ、南無阿弥陀仏とお念仏をとなえることの大切さが説かれています。

『仏説阿弥陀経』は、ご法事などでもおとなえされることの多いお経です。また、「盂蘭盆会」というお盆の法要などでも、となえることも多いかと思います。

『日常勤行聖典』に記されているお経の中では、『仏説阿弥陀経』は一番長いお経です。お休みの時などのお時間がある時には、『仏説阿弥陀経』をおとなえされてみてはいかがでしょうか。

ちなみに補足ですが、浄土真宗では『般若心経』はおとなえしません。それぞれの宗派には教えがあります。そして、その教えの内容が説かれたお経をおとなえします。お経は呪文のように聞こえますが、ここまでご紹介してきたように、お経には内容や意味があるのですね。『般若心経』も仏教の聖典ですから、その内容はもちろん尊いものなのですが、浄土真宗の教えとは違った内容が説かれています。ですので、浄土真宗ではおとなえしません。

◆お経をとなえるタイミング

最後に、お経をとなえるタイミングについて補足しておきます。

お経をとなえるタイミングですが、できれば毎日の朝と夕方に、仏様に手を合わせる時に、お経もとなえることが望ましいです。お仕事などで夕方に帰れない場合は、夕方ではなく、夜でも構いません。可能な方は、是非、毎日の朝と夕方(もしくは夜)に、仏様に手を合わせる時に、お経をおとなえしてみてください。

お仕事などで慌ただしくて、時間が取れない場合もあるかと思います。その場合は、少し時間に余裕がある時や、どなたかの月命日などに、お経をおとなえしてみるのはいかがでしょうか。

無理をしすぎても続かないということもあるでしょう。また一方で、となえる日をつくらないと、中々習慣として定着しないということもあります。

例えば、新たにお仏壇を購入された方は、まずは仏様の前に座り、手を合わせることから始めてみても良いかもしれません。仏様にご飯をお供えして、お線香をお供えして、「南無阿弥陀仏」(なもあみだぶつ)とお念仏を称えて、手を合わせるところからまず始めてみましょう。そして、それを徐々に習慣にしていきましょう。勿論、初めからお経をとなえようという思いのある方は、お経をとなえていただくと良いです。

毎日、仏様に手を合わせることができるようになった方は、次の段階として、少し時間に余裕がある時や、どなたかの月命日などに、お経をおとなえしてみるのはいかがでしょうか。それができたら、少しずつお経をとなえる日を増やしてみます。そのようにして、無理をし過ぎず、でも習慣にすることを意識しながら、お経をとなえる日をつくってみてはいかがでしょうか。

仏様に手を合わせて、お経をとなえるという習慣は、とても良い習慣かと思います。是非、日々の習慣にしていただければと思います。

いかがだったでしょうか。今回は、「浄土真宗のお経。何をとなえると良いのか」というテーマでお話しました。参考にしていただければ幸いです。

また、お経のとなえ方が分からないという方もおられるかと思います。

信行寺のYoutube「寺子屋チャンネル」では、お経をご一緒におとなえいただける動画や、となえ方の解説動画も用意しております。そちらも、是非ご活用なさってみてください。

また、「正信念仏偈」の内容を解説した動画も用意しております。

先程、お経には意味があると申しました。お経の意味を知ると、この人生をより心豊かに生きていく智慧を学ぶことができたり、仏様の慈悲の温もりを味わうことができます。お経の内容を知ると、となえる時の心持ちも変わってきます。是非、こちらの動画もご活用いただければと思います。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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◇参照文献
・『浄土真宗聖典』注釈版/浄土真宗本願寺派
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・『浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典』/浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典編纂委員会
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・『浄土真宗辞典』/浄土真宗本願寺派総合研究所
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・『浄土真宗本願寺派 法式規範』/浄土真宗本願寺派 勤式指導所
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・『浄土真宗 必携』み教えと歩む/浄土真宗必携 編集委員会
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