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◉今お寺に求められている3つのこと①「ショート法話」と「お寺の掲示板」【お寺の日々#181】

経営に、「プロダクトマーケットフィット」(PMF)という考え方があります。

「サービスや商品が、顧客の求めに合っている状態」のことを言います。

いくら良い物でも、求めに合っていなければ、必要とはされません。

誰もがスマホを持つ時代に、どれほど性能の良い公衆電話やポケベルを作っても、それほど必要とはされません。

どんな業界であれ、「サービスや商品が、顧客の求めに合っている状態」になるように、日々仕事をおこなっているとも言えます。

お寺においても、「時代に合ったもの」「求められているもの」がなければ、必要とされないのは同じことです。

時代が大きく変化している今、お寺もその変化の中にいます。

そうした観点からお寺を眺めてみた時に、日本のお寺に今求められていることはどんなことでしょうか。

色々あるかと思いますが、今回は具代的に三つを取り上げてみたいと思います。

◆ショート法話とお寺の掲示板

今お寺に求められていることの一つ目は、「ショート法話」と「お寺の掲示板」です。

「ショート法話」とは、短い法話のことです。

「お寺の掲示板」とは、ここではお寺の掲示板に張り出される言葉のことを言っています。

どちらも短い言葉で、仏教の考え方(智慧)に触れられるという共通点があります。

現代は、生き方や考え方が多様化しています。

生き方や考え方が多様化しているということは、正解がどれかが分かりづらく、迷いやすく悩みやすい時代であると言えます。

日本の高度経済成長期のように、就職し結婚をして、家や車や家電製品を買うといった、多くの人が信じられる幸せのモデルがあった時代では、生き方や考え方は現代よりもシンプルだったことでしょう。

しかし今は、生き方は人それぞれです。

就職するかどうか、結婚するかどうか、どこに住むのかなど、生き方は人によって違います。

生き方が人それぞれということは、人によって考え方や価値観が違い、意見も様々になります。

人によって意見が違うため、正解がどれかが分かりづらく、現代は迷いやすく悩みやすい環境にあると言えます。

親に聞いても、親が生きてきた時代とは環境が変化していて、親の成功モデルをそのまま適用できないことも多いのではないでしょうか。

こうした時代の中で私たちは今、「何が正しいのか」「どういうふうに生きていくと良いのか」など、自分で考え、判断することが求められています。

しかし、自分で考え判断するといっても限界があります。

やはり、確かだと思えるものを求めたり、頼りになる人の話を聞きたいと思います。

有識者や成功者と言われる方の意見が重視される傾向にあるのは、生き方や考え方をそこに求めようとする人がいるという背景があるように思います。

仏教もまた、2500年の時と様々な国を経て、人類が積み重ねてきた智慧の結晶です。

仏教には、生き方や考え方の智慧が詰まっています。

その仏教の智慧に触れたり、尋ねたりすることで、心が安らいだり、生きる支えになることがあります。

生き方や考え方が多様化する中で、「何が正しいのか」「どういうふうに生きていくと良いのか」と、その智慧を仏教に求める方もいることでしょう。

ただし、仏教に触れてみようとする時に、まず障がいとなるのは、仏教の難解さや、言葉の難しさです。

専門用語や言葉が古く、何を言っているのかがそもそも分からないという問題があります。

そしてまた、悩みの種類が時代によって違うため、仏教で示される内容が心に響いてこない、自分の悩みと重ならないという問題もあります。

また、時間感覚が加速化している現代で、長尺の法話や文章は見られづらい傾向もあります。

そんな中、短かく分かりやすい言葉と、現代の私たちに響く言葉で、生き方や考え方を示してくれる「ショート法話」や「お寺の掲示板」は、時代に合った方法だと思います。

短い言葉に自らの人生や思いを重ね、心が安らいだり、生きる支えとされている方がおられます。

ただし、昨日も書いたことですが、短い言葉にすることで、仏教の本質的な部分が抜け落ちてしまうこともまた確かです。

分かりやすくする、単純化する中で、どうしても本質的な部分が抜け落ち、誤った解釈を生んでしまうこともあります。

ですので、短い言葉で仏教を表現しつつも、しっかりとした法話などに触れられる機会も用意し、いずれそこにご縁をもっていただけるように工夫することもできると望ましいのでしょう。

本当は、生き方や考え方が多様化している時代だからこそ、じっくりと腰を据えて、すぐに答えを出そうとせずに、聞き続ける、考え続けるという思考の胆力も必要とされているのだとも思います。

しかし、長いというだけで、難しそうというだけで敬遠されることもあります。

仏教やお寺への入り口として、「ショート法話」や「お寺の掲示板」を活用することは、今の時代に合ったことではないかと思います。

続く

2024.04.17(水)記す

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◉朝参り
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・内容:読経・ストレッチ・法話

◉永代経法要
・5月17日(金)、18日(土)13時30分~15時頃
・内容:読経・講演
・講師:尾角光美さん(一般社団法人リヴオン代表理事)

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