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【幸せを育む時間】幸せのメカニズム(前編)【前野隆司教授の著書を紹介】

人生や幸せについて考えるご縁となるような本をご紹介しております。今回は、幸福学の権威である前野隆司教授の著書、『幸せのメカニズム』という本をご紹介させていただきます。

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◆幸せのメカニズム

私は5,6年ほど前に、前野先生のこの本を読んで、とても感銘を受けました。というのも、幸せについて体系的にまとめられていたからなんですね。

本来、幸せとは人それぞれですし、すごく抽象的でとらえにくいものというイメージはないでしょうか。必ずしも、自分が感じる幸せの感覚は、全員に当てはまるものでもありません。

例えば、本にも出てきますが、幸せって何だと思いますかと聞くと、「十分なお金があること」とか、「夢をかなえること」とか、「平穏で何もないこと」とか、「そもそも人それぞれなので、定義できない」とか、色々な意見があり、人によって捉え方がまちまちです。そのどれもが間違っているわけでもありませんし、一つのことだけ取り上げても、人によっては共感できないということもあり得るわけです。

「平穏で何もないこと」が幸せと感じる人もいれば、「平穏で何もないこと」は退屈だと感じる人もいますね。仏教も心の充足や、心の豊かさを大切にしていて、幸せに近い感覚を大事にしていますが、それでも幸せって何かということを語ることの難しさを私は感じていました。

そんなことを思っている時に、前野先生の『幸せのメカニズム』という本を読みました。拝見してみると、幸せについて体系的にまとめられていました。幸せとは抽象的で、捉えにくいものだと思っていたものが、まとめられていて驚きました。

この本では、幸せについての先行研究や、アンケート調査をもとに、幸せを四つの因子にまとめておられます。そして、その四つの因子を意識して行動していくことで、人は幸せになっていくという具体的な方法まで書かれています。前野先生は、正しく幸せを目指すことの重要性を指摘されています。

そこで今回は、前野隆司先生の『幸せのメカニズム』という本を参考に、正しく幸せを目指す」ことについて学んでみたいと思います。


◆正しく幸せを目指す

前野先生はこの本で、幸せとダイエットはよく似ているとおっしゃいます。例えば、幸せのメカニズムを理解しないまま独り合点をし、間違った幸せを目指した結果、リバウンドしてより不幸になったり。一部の幸せだけを目指した結果、バランスが悪くて長続きしなかったり。そのうち幸せになるだろうとたかをくくっていたら、どんどん不幸が積み重なっていったり。

まるで、正しいダイエットの方法を知らないと、効果がないばかりか、かえって健康を害してしまうこともあるように、幸せのメカニズムを知らないと、幸せの階段を上っていくことはできないと言います。

ですから前野先生は、幸せになるための人間の心のメカニズム全体を明らかにし、誰にでも理解でき、明確なやり方で正しく幸せを目指せるようにしたい。そして、幸せを因数分解して、具体的な目標にまで落とし込むことが大事だとおっしゃいます。

つまり、幸せという抽象的で、漠然としたものを体系化して傾向を見出し、幸せになるにはどうしたらいいかという具体的な目標にまで落とし込んだ。こうしたことが前野先生の研究の特徴であるように私は感じました。


◆地位財と非地位財

幸せの4つの因子という話がこの本の柱になるかと思いますが、今回はその前提となる地位財と非地位財という考え方を見ていきます。

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地位財とは、お金とか物とか、地位など、人と比較して満足を得るようなタイプのものです。こうした地位財による幸せは長続きしないものと言われます。

そして、非地位財とは健康や安心、心の幸せなど、人との比較は関係なく幸せが得られるようなタイプのものです。こうした非地位財による幸せは長続きするものだと言います。

どういうものが幸せにつながるかを、地位財、非地位財という考え方で見ると分かりやすいですね。

例えば、心の幸せのような、幸せが長続きする非地位財を大切にして日々を過ごすと、我々は幸せに近づけそうな気がします。しかし、地位財のほうのお金や物は、生きていく上である程度必要なものですから、それがなくてもいいという話でもないでしょう。

とはいえ、金銭欲や物欲といった地位財ばかりを満たそうとするばかりでは、欲が増大するばかりで満足を知らない、むなしさを感じる生き方にもなってしまいます。心の幸せなどの非地位財のほうにも目を向けることは大切なことでしょう。

前野先生はこの本で、地位財と非地位財の両者のバランスを取ることが大事だと言われています。地位財はお金や物、地位など、そして、非地位財は健康、安心、心の幸せなどと言いましたが、これを別の見方でみてみれば、地位財は変化を促すような種類のものとも捉えられますし、非地位財とは安定をもたらす種類のものとも言えます。または、革新と保守とか、競争と協調とも言えるかもしれません。東洋流にいうと、切磋琢磨と和の心というようにも考えられると前野先生は言われます。

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このように、本来的には両者のバランスが大切なのではないかと言われています。


◆フォーカシング・イリュージョン

ただしそれだけでなく、前野先生は地位財に関する問題点も指摘されています。前野先生がおっしゃるのは、近代から現代にかけて日本の人々の価値観が偏っていたのではないかということです。つまり、お金や物とか、地位といった地位財を満たしていくほうに、価値観が偏っていたのではないかということです。

工業化の進展こそが先進であり、進歩、発展こそが善であるという、そうした考え方が多数派の時代の価値観が間違っていたのではないかとこの本でおっしゃっています。

環境汚染、資源の枯渇、バブルの崩壊、貧富の格差拡大、戦争やテロをやめない人々。近代から現代にかけての工業化や経済発展の結末は、持続可能ではない世界だった。そしていくら経済が成長しても、人々はぜんぜん幸せになっていなかった。

前野先生は、プリンストン大学の名誉教授のダニエル・カーネマンさんのフォーカシング・イリュージョンという考え方でこれを説明されています。フォーカシングとは焦点をあわせることで、イリュージョンとは幻想です。

つまり、近現代の西洋や日本などの先進国は、工業化や経済発展、科学技術の進歩などによって豊かになることで人々は幸せになると思ってフォーカスしてきたが、その価値観はイリュージョンだった、幻だった。

確かに、現代の日本は、物があふれ、豊かになり、とても便利な時代になりました。しかし一方で、先程のような大きな問題を抱えてしまいました。そしてまた調査によると、GDPは成長しましたが、日本の生活満足度はこの何十年、全く上がっていないそうです。

つまり、国は豊かになったように見えるけれども、人々はそれほど幸せにはなっていなかった。前野先生は一人のエンジニアとして、そのことにとてもショックを受けたそうです。それから、人の幸せを研究するようになったそうです。

今は経済も低迷し、これまでのあり方が行き詰まってしまっています。近現代の日本は、金銭欲や物欲、名誉欲などに目がくらみ、目指すべき方向を間違ってしまったんじゃないか。

前回ご紹介したドイツの哲学者のマルクス・ガブリエルさんも、アメリカ的消費社会のあり方、資本主義のあり方が、地球温暖化や格差、原子爆弾等の現代のグローバルな諸問題を引き起こしていると指摘していました。その話に通じる部分を、前野先生のお話から感じました。

前野先生はそんな思いがあり、イリュージョンではない確かな幸せに向けて、人間の心のメカニズム全体を明らかにし、誰にでも理解でき、明確なやり方で正しく幸せを目指せるようにしたい。そう言われているのだと、私はこの本を読みながら感じました。

そして前野先生はこうもおっしゃいます。究極的には、世界中の人々が、争ったり妬んだりしないで、みんなで幸せを目指すような、明日の世界に貢献したい。さまざまな場で有益な、人類にとって役に立つ学問としての体系的幸福学。そうした学問の必要性を感じ、前野先生は幸福学研究をおこなっていると言います。


いかがだったでしょうか。

今回は、幸福学の権威である前野隆司先生の著書『幸せのメカニズム』より、地位財と非地位財や、フォーカシング・イリュージョンということから、正しく幸せを目指すということについて学びました。

そして、その具体的な方法が、四つの因子ということで示されていますが、幸せの四つの因子については次回にご紹介させていただきたいと思います。

『幸せのメカニズム』。気になった方は、是非本を手に取ってご覧になってみてください。

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