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漁業補助金(SDGs14.6 その2)

人類の数は現在78億人(※1)。最新の研究では2064年に97億人のピークを迎える(※2)ようです。1万年前の地球には陸上生物のうち99%が野生生物で、人間は1%しかいなかったのですが、現在では人間が32%を締め、人間が食べるために育てている家畜が67%。陸上の野生生物は1%しかいない状態になってしまったのです。

人口比率

図 POPULATION MATTERS 「WELCOME TO THE ANTHROPOCENE」https://populationmatters.org/campaigns/anthropocene

ここまで増えてしまった人類。特に困るのが食糧問題。野生生物であれば生態系のバランスの影響で、種が多すぎたら数が減ってくれるのですが、人間はそうもいかないし、知恵を絞って問題を克服してしまいます。そこで人間は自分たちが食べる動物を意図的に増やす家畜という手段を考えます。現在地球上の鳥の7割は人間用のニワトリ(※3)で、陸上の土地の4分の1は家畜に使われています。ステーキを1㎏作るために必要とする飲料水は1万5000Lにも及びます(※4)。さすがに生態系のバランスという面では限界にきています。そこで目につけたのが無尽蔵と思われている海洋資源。つまり魚です。魚は、家畜するような場所もなく、お金もないような国にとってはありがたい食料です。地球の7割をしめる海のいたるところにいて、釣り竿一本さえあれば手軽に手に入れることができる貴重なたんぱく源。しかも血をサラサラにしてくれるEPAや頭がよくなるといわれるDHAなども豊富。人類に残された唯一の狩猟活動なのです。魚の水揚げは1950年ごろは世界では2000万トン程度だったものの、ここ50年で急激に人気が高まって、現在は1億8000万トンもの魚が獲られているのです。その火付け役になった国こそが『日本』なのです。

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図:FAO The State of World Fisheries and Aquaculture 2020
https://www.fao.org/state-of-fisheries-aquaculture/en/

もともと海外では魚を食べる文化が少なく、特に生の魚はあまり食べらておらず、場所によっては魚に食らいつくのは野蛮な人間とさえ思われていました。しかしここで見直されたのが日本食です。日本はもともと殺生を控える仏教国。精進料理や一汁三菜といったようなおごそかな菜食中心の食文化が育っていました。貴重なたんぱく源である魚についても必要な分だけ獲って食べるまさに和食のイメージです。そんな健康志向で自然にも優しい料理という日本食のイメージはグローバル化の流れの中で世界中に広まり、注目されるようになってきたのです(※5)。その中でも日本食を一躍有名にした料理こそ、みんな大好き『すし』です。カリフォルニアロールやハワイのポキなどもまさに日本の魚食文化からの影響なのです。さらに技術革新が魚食人気の背中を押していきます。冷蔵技術が発達し、アシが早いという魚料理最大の弱点も克服し、そして輸送手段や漁獲技術進化により大量に魚を手にすることができるようになったのです。世界中で人気になった魚は格好の金儲けの手段となっていったのです。海は管理するには大きすぎる。無限にも思える野生の魚は誰が管理しているわけでもないし、どんなにとってもだれにもばれないわけです。しかも原始的な狩猟活動で捕獲でき、手っ取り早くお金になり、とればとるほど外貨を得られるという打ち出の小づちとなったのです(※6)。魚を大量にとるにはそれなりに大掛かりな仕掛けも必要です。そこで国自体が漁業者へお金を支援して大量に確保するように働きかけるような動きが出てきました。それが漁業補助金。世界中が魚の争奪戦を繰り広げることになったのです。

※1、GLOBAL NOTE 世界の人口 国別ランキング(2021年8月20日)では77億9480万人
https://www.globalnote.jp/post-1555.html
※2、2021年8月23日 日本経済新聞 世界の人口、なぜ減少に向かう?
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL213760R20C21A8000000/
※3、The Guardian:Humans just 0.01% of all life but have destroyed 83% of wild mammals – study
https://www.theguardian.com/environment/2018/may/21/human-race-just-001-of-all-life-but-has-destroyed-over-80-of-wild-mammals-study
※4、グリーンピース 牛のゲップだけじゃない。肉の大量消費が引き起こす10の環境問題まとめ
https://www.greenpeace.org/japan/sustainable/story/2021/07/05/52110/
※5、マクロビオティックWEB マクロビオティックとは?
https://macrobioticweb.com/about/about.shtml
※6、JICA 知っておきたい!水産をめぐる世界の現状
https://www.jica.go.jp/publication/mundi/1711/201711_02_02.html



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