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海離れ(SDGs14.7 その8)

「養殖の水揚げも順調、観光施設も充実していて、食べ物もうまい。」とくればあとはお客さんを待つのみ。でもそのお客さん自体がいないのであれば話は別です。お客さんがいるからビジネスになるわけで、そのお客さん自体が海に興味を持っていないのであれば、ビジネスが始まりもしないかもしれないのです。

燦燦と降り注ぐ太陽。解放感に満ちた砂浜。広大に広がる海。今年はどんな水着にしようかな?その前に水着が切れる体になるために鍛えておこうかな?なんて話は一昔前の話のようです。2021年の夏の風物詩ランキングでは海は18位になっているのです。

夏の風物詩ランキング
表、みんなのランキング 夏の風物詩ランキング!夏を感じるものといえば?(2021.12.21更新分)
https://ranking.net/rankings/summer-features

1985年には3790万人いた海水浴客。当時は小麦色に焼けた肌は自慢のネタで、夏休みが終わればどれだけ黒くなったかを競ったほどでした。しかし、今では日焼けしてしみが心配とか、体がべたべたするど海人気にかげりが出てきて、2015年の海水浴客は760万まで減ってしまったのです。(※1)いわゆる「海離れ」が進んできているのです。
現在の余暇活動のトレンドは読書や映画鑑賞、ショッピングといったインドア的なものが多く、自粛ムードはあったもののそれでも外での活動がほとんどなくなってきているのです。(※2)また日本財団の調査によると40代以上は海と接していると心地よいと感じる人は約5割いるのに対して、10代では海と接しているときに心地よいとは感じないというのが約3割にもなっているのです。(※3)

海との距離比率
日本財団「海と日本」に関する意識調査 「海と日本」に関する意識調査の結果について
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/viewer.html?pdfurl=https%3A%2F%2Fwww.nippon-foundation.or.jp%2Fmedia%2Farchives%2F2018%2Fnews%2Fpr%2F2017%2Fimg%2F31%2F1.pdf&clen=539954&chunk=true

どうして海離れといったことが起きてしまったのでしょうか?その理由をいくつか挙げてみます。

日焼け

一番は紫外線による日焼けの問題です。昔は日焼けしているほうが健康的とみられていて、ガングロなどといったブームもありました。1980年代は色黒だと強く活発に見えて、色白だとひ弱そうに見られていたのです。しかし現在は女性も男性も色白のほうがもてはやされる時代となってしまったのです。そして何より日焼けの最大の難点はシミです。一度日焼けしてしまった肌は紫外線で焼けてしまっているためシミとなってしまうのです。このシミは一生背負わなければならない傷となってしまうのです。

べたつく肌

楽しく海に入ったとしてもそのあとのべたべた感が嫌という人も多いのようです。海には塩ばかりではなくカリウムや塩素など様々なミネラルが溶け込んでいて乾いてしまうとべたついてしまうのです。また髪もゴワゴワに傷んでしまったりします。きれい好きな人にとってはわざわざ汚しに行くような感覚になってしまうのです。

アクセスが悪い

最近では車を持っていない若者も増えてきたとよく耳にします。たとえ車を持っていたとしても、わざわざ渋滞を耐え忍んで、人であふれた場所におもむき、紫外線で肌を焼き、体をべたつかせるために何時間もかけて海に行くのは面倒くさいという人が増えてきたのです。また何かと忙しい日本人にとって休日は体をゆっくり休めるために使うのであって、わざわざ不快で疲れるような修行のような場所には時間を割きたくないようです。

禁止事項が多い

昔はどこもかしこも海に入って飛び込みしたり素潜りしたりしていましたが、今では遊泳禁止区域や行動制限があったりします。O-175などの衛生管理上の問題や治安維持として飲食禁止といったビーチも増えてきています。サメが出たとかクラゲに刺されたとかエイに刺されたといったニュースを聞くたび、海に行くのはためらわれるでしょう。たしかにこういった禁止事項やニュースによって事故も減るのでしょうけど、あれもダメこれもダメで、完璧な安全性を目指して管理されているビーチでは解放どころか息苦しく感じるのも納得です。

その他にも露出が多くなってしまう水着を着るのが嫌だとか、もともと水が怖いとか、ガソリン代や食事でなんだかんだでお金がかかるといった様々な理由が挙げらています。

海離れの人の言い分を見てみると、確かに海は危険なもので、紫外線も浴びてしまうし、貴重な時間とお金を使って、べたつく肌や渋滞といった不快な思いをする場所かもしれません。ましてや水に顔をつけるのが怖い人ならさらに海は恐怖のかたまりになるのかもしれません。ここまで書くと海が嫌になる気持ちも十分伝わります。ここまで理由がはっきりしている海離れの人たち言い分は理にかなっていて納得するには十分なほどです。これでは海に人が来るわけないです。

でもなぜこんなにめんどくさく、マイナス面ばかりに思える海に興味が惹かれるのでしょうか?確かにこのようなデメリットがあるのは誰もが理解していると思います。けれどもどうしても海が好きなんです。少なくとも私は好きです。この理由をしっかり解明して説明ができるようになれば、海離れを食い止めるヒントが生まれてくるかもしれません。

 

※1、日本経済新聞 海水浴客ピークの2割 レジャー多様化、海離れ進む
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21H2T_W7A820C1CC0000/
※2、レジャー白書2021 レジャー白書2021巻頭要約
https://www.jpc-net.jp/research/detail/005478.html
※3、日本財団 海に親しみをあまり感じていない10代は4割
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2017/20170714-22751.html


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