見出し画像

独立系アプリクリエイターになろう

永遠のGW

「あれ、仕事がないぞ?」

2020年4月。コロナウィルスが猛威をふるい、主要都市に緊急事態宣言が出された。

僕はあるフィンティックベンチャー企業でフリーランスとして新しいWEBサービスとモバイルアプリ開発の2つのプロジェクトに携わっていた。

3月までは順調に作業を進めていたのだが、コロナウィルスの影響で先行き不透明になり、両プロジェクトとも無期限の延期となってしまった。

そして、僕の契約は4月から実績稼働ベースに切り替わっていた。実質的な作業がなければ請求はできない。

その会社の正社員の方の手も空き始めているようで、仮に僕が携わっていたプロジェクトが再開するとしても、僕の作業は正社員の方へ引き継ぐ事になりそうだ。

4月の中頃までに3月までの残作業を一通り終わらせると、もうその会社でできる仕事はなくなっていた。

4月中頃にして、僕は永遠に終わらないGWに突入していたのだ。

コンサルティングファームに別れを告げる

遡ること2019年の春。僕はコンサルティングファームでの最終出社のため、オフィスでPC返却等の最後の手続きをしていた。

10年以上、愛着と誇りをもって身を粉にして働いてきた会社だ。しかしそんな事は目の前にいる事務の方にはまったく意味がない。

僕は入館証を返却して追い立てられるようにエレベーターホールまで見送られると、もう二度と素敵なオフィスに入る事はできなくなった。

感傷に浸っている場合ではない。僕はコンサルティング・ファームでのキャリアに見切りをつけ、AIエンジニアとして再起を図る事にしたのだ。

プログラミングに興味を持ってIT業界に飛び込んだはずが、いつの間にかシステムを触る事は殆どなく、予定は会議で埋め尽くされ、話す事が仕事、と思うようになっていた。

IT業界といっても、実際にモノを作るエンジニアやプログラマの地位は最底辺で、より高い地位のお客様と話ができるほどランク・報酬があがっていく仕組みだった。
プログラマのままがいい、というやつは向上心のない頭のおかしいやつだと思われていた。

エンジニア軽視の時代が長く続いていたが、そんな時代をあざ笑うかのように、AIエンジニアが脚光を浴びリスペクトを受け始めていた。

高度な理論を身につけたデータ・サイエンティストが自らPythonやRでプログラミングし、今までのシステムでなし得なかった成果を出し始めたのだ。

AIエンジニアは、プロジェクトでチームリーダーやプロジェクトマネージャーに匹敵する、またはそれ以上の報酬を得る事も珍しくなくなった。


エンジニアが正当な評価を受けてリスペクトされる事、それこそが僕が求めていた事だ。

コンサルティング・ファームのキャリアを捨てる事に迷いはなかった。

AI武者修行

2019年の暑い夏。
AIエンジニアの登竜門である、Kaggleのコンペティションに参戦していた。PCのGPUは夏の太陽のように暑く、ファンの回転音はセミの大合唱をかき消すぐらいうるさかった。

Courseraの機械学習とDeep Learningの講義を修了し、「ゼロから作るディープラーニング」①・②を通読した後、Kaggleのコンペティションで腕試しをしていた。

自らAIの新しい理論を生み出す事はできないが、すでに確立された理論と技術を活用してプログラミングに落とし込む事はできるようになっていた。

徐々に自信を深めつつある中、以前に仕事でお世話になった知人のフィンテックベンチャーに声をかけていただいた。

「これからデータ分析基盤サービスを作るんだけどやってみない?将来的にはAIも活用していきたいと思っている」

僕は渡りに船と二つ返事で了承した。

フロントエンジニアの時代

フィンティックベンチャーでWEBサービスの開発チームに入った僕は、WEB開発の世界が大きく様変わりしている事に驚いた。

自分が10年以上前に経験した手法は完全に時代遅れになっている。

主役がサーバー開発からフロント開発へ。

僕は慌てて最新のWEBフロント技術やサーバレス技術をキャッチアップしていった。

ユーザの求めるUI・UXを実現するために、WEBデザイナーと高度なスキルを持ったフロント開発エンジニアがプロジェクトの主役となってきている。

一方でサーバサイド開発やインフラエンジニアは徐々にクラウドやサーバレス技術にとって変わられていっているようだった。

ある程度の規模のWEBサービス開発であれば、デザイナーとフロントエンジニアだけでリリースできるような時代が来ていた。

サーバサイドやインフラエンジニアとの意思疎通が不要になることで、高い生産性が発揮できる。

これなら一人でも競争力のあるWEBサービスを開発できるようになるのではないか。

僕はプロジェクトに従事する傍ら、アプリクリエイターとして個人でサービスを開発する事を考え始めていた。

背中を押される

あと3ヶ月したらアプリクリエイターとして独立しよう。
もうあと3ヶ月したらアプリクリエイターとして独立しよう。
いつかアプリクリエイターになろうと思いながらも、独立して収入がなくなる事、アプリが泣かず飛ばずで大失敗する不安から、なかなか決心できずにいた。

もう少し貯金してからの方がいいかな、
今のプロジェクトも途中で抜けると迷惑をかけてしまうし、
いくらでも言い訳ができた。

しかし突然言い訳ができなくなった。
あてにしていた仕事が急になくなったのだ。

知らず一足早い永遠のGWに突入していた。

アプリクリエイターとして注力するのは今しかない。今すぐ始めよう。

WEB、AI、デザイン。一人でやるしかない。

僕は独立アプリクリエイターになった。

#個人開発 #WEB開発 #アプリクリエイター