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ST3年目までの方へ!誤嚥性肺炎を予防するための重要なリハ栄養の知識

当ノートを閲覧していただき、ありがとうございます。
【栄養】に興味を持ってもらいとても嬉しいです。

このノートを閲覧していただいた方は「リハ栄養」という言葉をご存じかと思います。

「リハ栄養」を一言で表すと「適切な食事をとって適切な運動を行う」ことだと思います。
しっかり「栄養」をとって「適切な運動」を取り入れることで「筋力」を増やしながらさらなる「運動」へとつなげていくことが大切と考えます。

STとして、そして誤嚥性肺炎を予防するにあたり【栄養評価を知ること】【「適切な食事」を提供・提案すること】は大事です。

今回は【栄養評価を知る】ことを中心にお話ししたいと思います。

【栄養評価を知る

リハ栄養を実践していくにあたり、リハビリを行う手順とそう変わりありません。下記にリハビリの大まかな流れをお伝えします。

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リハビリ『評価』の前に『情報収集』『問診』があります。

栄養評価も『情報収集』『問診』は重要な項目です。
今回は【栄養評価】がメインですので、ざっくりとなりますがお伝えします。

『情報収集』

「疾患」

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どのような「疾患」で病院に来られたのか、あるいは問題を抱えているのかを把握するのはとても重要です。
特に「ガン」は見逃せない疾患です。

ガンが「治療を開始したところ」なのか「治療途中」なのか「末期」なのかでリハ栄養の目標が変わっていくことが多いからです。

加えて「栄養評価/管理」が大事でありながら「疾患の治療」との兼ね合いもあるので「医師」「管理栄養士」「看護師」「介護士」「PT/OT」との連携を密に取る必要があります。

例えば、治療に専念するのであれば「安静」をメインで行く場合もありますし「治療に耐える力」が必要になってくる場合は「積極的リハ」を行う可能性もあるからです。

疾患は「ガン」だけでなく「脳血管疾患」「肺炎等の感染症」「精神疾患」「大腿骨頸部骨折」「消化器疾患」によっても問診・評価・アプローチの方法が変わったりするのでおさえておきましょう。

「身長・体重・血液データ」

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これらも問診前に確認しましょう。
病院で入院する前か同時に測定することが多いので、把握しておくことを推奨します。
これらをはじめに把握する理由は2つあります。

①変化を見るため
②適切な食事量を把握するため

①変化を見るため
3か月の入院がほぼ確定している場合は、入院した日の体重が必要です。
そこから3か月でどれだけ変わったのかを把握する指標となります。

血液データで一番重要なのは「アルブミン値」ですね。
「Alb」と表記される場合もあります。
基準値は3.7~5.5g/dLとされています。これらが変化していれば「適切な食事だったかどうか」を判定することが出来ます。

②適切な食事量を把握するため
「身長・体重・年齢」が決まればある程度必要な「カロリー」
「タンパク質」「水分量」を計算することが出来ます。
その人が必要な1日のカロリーを理解しておくことが大切です。そこから、「運動」によって消費されるエネルギーも加味することで「PT/OT」さんに運動量の調整を提案することも可能です。

『問診』

「生活歴」

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本人様にまずお会いしたらご挨拶とバイタルのチェックなどしていくと思います。そこに「リハ栄養」ならではの「生活歴」を聞いていく必要があります。

例えば、普段の「食生活」にて
「1日2食しか食べない」
「どうしても食べられない食材」
など把握していく必要があります。
もし可能であれば「管理栄養士」と相談し「肉中心」のご飯とするか
「魚中心」のご飯とするか細かい内容を決められるとより良いです。

「食事状況」

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食事形態であったり、食事の摂取量、嚥下状態などもここで聞いていきます。
例えば「食事中のムセが多くなっていませんか?」といった内容や
「食事が硬くて噛めないことはありませんか?」なども把握していきます。

「体重減少の有無」

重要な「体重減少の有無」ですがこれがなかなか判明しにくいです。
長期入院が決定していたり、施設であれば別ですが、急性期病院では家族様や本人様の主観であることが多いため正しいデータがとりにくい場合があります。「最近痩せてきている」という言葉で判断していきましょう。

『栄養評価』

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栄養評価は、初期評価の時から再評価の間でどれだけ変わっているかを把握するための指標としても用いることがあります。

主に「スクリーニング」として栄養評価が2つ存在します。

簡易栄養状態評価表 MNA (Mini Nutritional Assessment)
主観的包括的評価  SGA (Subjective Global Assessment)
です。

①MNAは、高齢者の低栄養患者様に対して18項目の質問をして点数を出していきます。
内容としては
「食欲不振」
「自力で動けるかどうか」
「精神症状」
など様々です。
この点数が高いほど栄養状態が良好と判断され、低いと低栄養と判断されます。

②SGAは、病歴・身体所見から栄養状態を3段階に評価するツールです。
内容としては、
「体重の変化」
「食事摂取量の変化」
「栄養要求量」
などを見ていきます。
質問量はMNAより少ないです。3段階というのは「栄養状態良好」「中等度低栄養」「重度低栄養」に分類されます。

ガンの評価:Cachexia Journey

「ガン」の進行に伴い、3つの段階に分けて評価するツールがあります。それが、『Cachexia Journey』というものです。

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「体重減少」の計算方法は
体重減少(%)=(通常体重 - 現体重)÷通常体重×100 
です。

つまり通常50kgの人が3か月で45kgになってしまったら
体重減少(%)=(50-45)÷45×100なので11%となります。
これは低栄養状態であると評価します。

「代謝変化」が起こってしまうと、
炎症などによって筋肉が壊されてしまったり、安静時に必要なカロリーが増えてしまいます。異常なほど筋肉がやせ細っていったりする場合もあります。

「異化」というのは体内に保存されている複雑な栄養素を分解して簡単な栄養素に変化させることを指すそうです。その際エネルギーが産まれて私たちは生きているわけですが、ガンになるとその過程が通常よりも多くなり、異化亢進状態と呼ばれる状態になります。

PS:パフォーマンス・ステータスとは?
患者様の日常での生活がどれほど制限を受けているのかを図るツールです。
0~4点で評価していきます。
0点が良くて4点だと悪いです。

0点:発症前と同じ日常生活が制限なく行える。
1点:歩行可能で家事も可能。
2点:歩行は可能だが日中の50%はベッド上で生活している。
3点:限られた自分の周りのことしかできない。50%以上ベッド上で生活。
4点:ほとんど起き上がれず寝たきりとなる。

という風に見ていきます。

訪問リハビリでも使える方法

訪問リハビリでは、血液データや体重を見ていくことは難しいです。
そのためメジャーを使って測定していく方法をご紹介します。
腕と足の長さを測定して筋肉が衰えていないかを図ります。

上腕周囲長

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利き手または麻痺がない方の腕で測定します。
肩の上から肘までの長さのちょうど半分のところの腕周囲の長さを図ります。
筋肉量が低下していると思われる目安は21cm以下です。

下腿周囲長

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麻痺、拘縮がない方のふくらはぎで最も太い部分を図ります。
筋肉量が低下していると思われる目安は30cm以下です。

浮腫の有無

低栄養によって、足に浮腫が起こることがあります。
浮腫のある部分は押すとへっこんだままもとに戻りにくくなるため、すぐに判定することが可能です。

まとめ

ここまでご覧いただき、誠にありがとうございます。
まだまだ至らぬ内容だと思いますので、3年目の方はこれを基にしてブラッシュアップしてほしいと思います。

以上のような【栄養評価】を行い「体重の増加」「アルブミン値の改善」が見て取れることで【誤嚥性肺炎を予防】することに必要な『抵抗力』を養う指標ともなります。誤嚥性肺炎を予防する指標として【栄養評価】で『抵抗力』の評価にもしていくわけですね。

【誤嚥性肺炎を予防】することはあまり実感がわかず目に見えにくいため、どうアプローチすればよいのか、これで合っているのか不安になると思います。
それをわずかでも払拭出来たらうれしいです。

【栄養評価】以外にも、大切なSTの役割として【「適切な食事」を提供・提案すること】があると思います。
これには【食事環境の整備】や【食形態の選定】など難しい内容があり一概に「これが良い!」というのは言い切れません。
今後ミニ症例を踏まえた事例などを提供できればいいなぁと思います。

参考文献

株式会社ジェフコーポレーション リハビリテーション栄養ポケットガイド2014年9月

日本リハビリテーション栄養学会 診療ガイドライン2018年

開登志晃 田村聡子 2011年 リハビリテーションの栄養管理 リハビリテーションにおける栄養管理の効果判定

谷口正哲 がん患者のリハビリテーションと栄養 日本静脈経腸栄養学会雑誌 2015年

谷口正哲 沢井博純 小林勝正 竹山廣光 がん治療と栄養療法 -最近の話題から- がん患者に対する栄養療法と周辺の問題 2013年

濱口哲也 三木誓雄 がん患者の代謝と栄養 がん患者の代謝栄養 日本静脈経腸栄養学会雑誌 2015年

国立がん研究センター パフォーマンスステータスとは?

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