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【怖笑】100体の幽霊に囲まれる

最近YouTubeで、事故物件や廃墟などへ行き霊を撮ろうとする人たちがいる。私がYouTubeばかり見ているからか、そのようなところへ行ってアップするユーチューバーがたくさん見かける。霊感のある人や霊能力者からしてみたら「バカじゃないのか」「取り憑かれたいのか」と思うほどである。それだけ分かっている人は行かない。

しかしまれに予期せぬ訪問者もいる。そのような場所とは考えなかった場合に、思わぬところで会ってしまうこともある。私もそういうことのある1人だ。「旅はトラブルが付きもの」というが、私の場合はどこかへ行けば何かが起こる。それはそれで面白い。私は何が起ころうとも楽しめる域に達したのだ。ここで以前に起こった、怖いようで面白い話を語ろうと思う。

ある時期友人と温泉旅館巡りにハマっていた。トラベルズーというアプリで、安い旅館を見つけては旅に行っていた。

ある日とても安く泊まれる旅館を見つけて、予約をした。そこは確か東京から電車で向かい、そこそこ近い場所だった。場所を話してしまうと支障があるので伏せるが、そこは有名な素晴らしい温泉街だった。

旅館に着くと、私たちが泊まる部屋はとても広かった。部屋食用のテーブルのある部屋や、寛ぐための部屋、ベッドのある寝室など、広さにしたら2人ではもったいないくらいだった。しかし入った瞬間ゾクッとした。これはいるなと思った。彼らは部屋のあらゆるところに隠れて私たちを見ている感覚だった。古いアンティークの家具が置いてあったので、家具に吸収されたエネルギー(念)ということもある。だから私は友人には言わなかった。

夜になり夕食も食べて、語り合っていたらだいぶ夜も更けていた。移動疲れもあったのか、友人は布団に入るとすぐに寝てしまった。一方私はソワソワしていた。なぜならあちこちから視線を感じていたからだ。1人や2人の感覚ではなく、大勢の視線を感じると、きっと誰でも緊張するのだと思う。そんなわけで私は寝れなかった。

目をつぶってからしばらく経つと、お手洗いへ行きたくなった。この圧の中目を開けるのが嫌だったのだが、限界にきていたのでトイレへ行くことにした。目を開けると案の定ヤツがいた。幽霊だ。男の霊は私をガン見していた。その当時の私はまだ人間らしかったので、舌打ちをしながらトイレへ向かった。ヤツは一緒についてきた。「ついてくんじゃねーよ!」とテレパシーで話しても、ヤツは堂々とトイレの中まで入ってきた。そして私たちはトイレ中向かい合っていた。

ヤツを引き連れてトイレから戻ると、ベッド周りは賑やかになっていた。隠れていたヤツらが集まってきたのだ。おいおい、勘弁してよと一気にテンションが下がると、その部屋は凍りついたような気温になっていた。となりの友人を見るとうなされていた。「かわいそうに、金縛りにあってるのか」そう思いながら私はベッドへ横になった。

ガヤガヤした空気の中必死で寝ようとした。しかし彼らは私と波長が合ってしまったためベッドの周りから私の顔を覗き込む。その数はおおよそ100体だった。私はイライラがピークになった。そして気づいた時には説教をしていたのだった。

霊たちを正座させ、一体何をしているのかと問いただした。すると彼らは私を怖がらせようとしていたという。恐怖に怯える私を見たかったそうなのだ。しかしよくよく聞いてみると、そこには切ない彼らのストーリーがあった。

話はこうだ。ある誰かが死んだ。でも本人は死んだことに気付いていない。何があったのかも分からない。そこで、近くを通った人に聞いてみた。
「ここはどこですか。一体何があったのでしょうか。」
するとその人は、
「ギャー!!」
と言って逃げていった。
なぜだろうと思いながら、また別の人にも声をかけた。すると彼らもまた同じ反応だった。何度も何度も、何年も何年も同じことを繰り返しているうちに、自分はなぜ人に話しかけるのかを忘れてしまった。そしていつの間にか自分は人をあえて怖がらせていたのだった。

霊が集まる場所というのは、薄暗くてジメジメしているところだ。そんなところは気の流れも悪く負のエネルギーも集まりやすい。すると、他の霊たちもだんだん集まってくる。その場所はまさにそんな霊にとってのベスポジだったわけだ。

そのような場所に、1人また1人と、霊が集まってきた。霊はお互いに見えていないというが、同じような行動をすると見えてくるのかもしれない。そうやって仲間ができ、お互いになぜここにいるのかも忘れて、こうやって怖がらせていたのだった。

下にいる霊の種類にはいろいろある。事故などで死んだことに気付いていない者、生きることに未練がある者、自殺した者などだ。そこは波長が違うのでお互いに見えないが、私たちと同じ場所で彼らは彷徨っている。しかし私のような霊界の波長を合わせられる人は、彼らが見えてしまうのだ。そうすれば彼らもまた私が見える。だから寄ってくる。

私は彼らに説明した。君たちのいる場所は霊界だと。君たちはすでに死んでいて、話しかけても人は幽霊として認識すると。酷な話だったがみんな真剣に聞いているようだった。

100体もの霊たちの中で一際目立っていた落武者がいた。相当昔からいたのではないか。私は彼と他数名を残して、他の霊たちを説得し成仏させた。そして落ち武者に言った。
「お前さんたちはここを守りなさい。ここら辺一帯を守る霊として役目を与えます。悪い霊が来ないようにしたら、あなたたちは感謝される。そうしたらこの場所に幸せなエネルギーが増える。ここはそうして繁栄していくよ。」

まぁ今考えてみたら私はどの位置から命令しているのかとビックリする。これは神様的な方がやることなのではないか。でもそれはそれでいい。なぜなら彼らは誰かに言われたかったからだ。その言葉を長年待っていたのだ。これから生まれ変わる彼らに良いことをしたのかもしれない。

あとあと調べてみたら、後あたり一帯は、戦争中に怪我をした人たちの一時的な簡易病院のようなものがあったらしい。そこで沢山の方々が亡くなったのだ。多すぎて名前さえも把握されなかったのではないだろうか。日本も大昔から沢山の戦争があった。内戦も、国との戦いも沢山あった。そこでは必ず犠牲者がいる。有名な人は名が残るが、そうでない人たちはちっぽけな存在のように亡くなっているのだ。彼らは無縁仏となって彷徨っていたりもする。彼らの気持ちになるとなぜ廃墟や事故現場へ面白がって行けるのか心苦しい。

どれだけ美男美女でも、死んで出てきたら悲鳴を上げられる。彼らの声を聞いて欲しいとは言わない。大体の人は怖いだろう。でも彼らもさっきまで人間だったのだ。死んだら終わりなのだ。だからこそ今を生きて、未練のないように毎日を充実することが大切なのだ。

次の日の朝、友人と大浴場へ行った。そこで私は昨日の夜の話をしてみた。友人は
「やっぱりそうだよね?!あの部屋へ入った瞬間からなんか変だよなぁって思ってたんだよね。でもユミーが何にも言わないから気のせいかなって。ただ夜中うなされて体が動かなかったんだよね。」
君は金縛りにあっていたからね。そういえば放っておいてごめんよ。私は心の中でつぶやいた。

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