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【怖】廃墟の病院パート1

あれは大学時代だった。当時の悪友達と4人で、廃墟になったいわく付きの病院へ行こうという話になった。その頃の私は怖いくせによく廃墟や心霊スポット、お墓などへ行っていたものだ。だから誘われた時も意外とワクワクしていた。メンバーは私以外は全員男子。昔から男っぽかった私は、何にも気にせず参加した。

友達の車に乗り、私たちは昼過ぎに集まり廃墟へ向かった。そこは思っていた以上に山奥だった。運転している友人は慣れた感じで田舎道を走っていく。私たちは同じような景色を見ながらはしゃいでいた。きっと誰もが恐怖よりもワクワクしていたのだと思う。

その病院が廃墟になった経緯を聞いた。病院長がお金を使いすぎて運営が滞り夜逃げしたのだそうだ。まあまあ大きい病院が夜中に逃げてそれで終わるのだろうか。他に理由はなかったのだろうか。私は疑問だったが、医療ミスや死人が出ているわけではないということだったので少しホッとした。そんな話を聞いているうちに私たちはその場所へ到着した。

時間は16:00過ぎだっただろうか。そこには2階建てのまあまあ大きめな病院が所々崩れた状態で建っていた。夏前だったので強い日の光が差し込み窓から中が見えた。田舎の病院のせいか、ヤンキーや若者が落書きをしていて、そこらじゅうがゴミや瓦礫だらけだった。周りには家もなく、あたりは静まりかえっていた。

「玄関が崩れているからこの辺から入ろうか」

友人の1人が言った。私たちは他にも同じように来た人たちが出入りした形跡のある、廊下の窓から入っていった…。

入ってみるとそこは別世界だった。空気が張り詰めていてビックリするほど寒かった。そして私は気配を感じた。それは1つではなくいくつもだった。物陰や隙間など、あらゆる場所から見られているような感覚だった。でもその当時は能力を隠していて、なるべく使わないようにしていたのでそれ以上は考えないようにした。私たちはとりあえず1階を探索しようと正面口へ行くことになった。

先頭は勇気のある友人だった。私は3番目。恐る恐るゆっくりと歩くと、次第に一列になっていた。パリッパリッとガラスを踏む音、外からの風の音、静かすぎて耳鳴りもしていて、それらの音だけが大音量に聞こえるようだった。それに加えて私の心臓の音が、ドクンドクンとだんだん大きくなっていくのが分かり、誰かの唾を飲み込む音や、荒い呼吸までもが気になってくるようだった。

間もなく正面口にまで到着しようとした時、私は一瞬嫌な予感がした。今進んではいけない、そこへ行ってはいけない、そんな気持ちが思わず口に出ていた。

「ちょっと持って!!」

すると先頭を歩いていた友人が、え、何?と言いながら立ち止まって振り返った。その瞬間、上からその友人の体スレスレにガラスの破片がドバドバと落ちてきたのだ。私たちは無言で天井を確認した。そして誰もが青ざめた。そこには電球も蛍光灯もついていなかった。私が声を出さなかったらその友人はガラスの下敷きになっていた。想像しただけで恐ろしかったが、私たちは誰もが無言で、そして助かったことにホッとしていた。

そのまま私たちは探索をやめなかった。あの時恐怖よりも好奇心が勝っていたからだ。まだ明るかったので安心していたのかもしれない。そして私たちは2階へと上がっていった…。

続く…

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