悪意のない自殺幇助

毎月15000円の貯金をするのがこんなに大変だとは思わなかった。
いや、2ヶ月前まで毎月の貯金目標は45000だった。2年で108万。

私には夢がある。夢を叶える為にまずは上京したいというのがあるのだが、私の両親はそれを許さない。本来は新卒で上京したかったが、当時は一人暮らしをしていたので持金はほとんどなく、東京に面接を何社か受けに行くも、内定が決まる前に貯金が潰えた。なんならバイトも減らされ、一人暮らしに必要な資金すら稼げなくなった。

私は実家に戻り、100万貯金ができたら家から出ることにした。大学4年の時点で上京することの説得はできなかった。私の親は気に入らないことがあると怒鳴って、まくしたてて、思い通りに動かそうとする。子供みたいな人だ。そうなったら夜逃げだ、夜逃げ。それしかない。

ところで地元は好きですか?私は嫌いです。嫌いすぎて中学は登校を拒否っていたし、高校は片道1時間のとこに通っていました。大学は実家からだと片道2時間の所に途中からは下宿していました。

嫌いな理由は先述した家と、田舎特有の閉塞感です。好きなところがあるとしたら、夜中車を30分ほど走らせて山に登ると綺麗な星が見えるところです。しかし運が悪いと箱乗りヤンキーの集会に鉢会います、怖すぎるので逃げます。

さて、私の計画ではバイトを掛け持ちして月に手取り15万稼ぐ生活をし、毎月7万ずつ貯金するのが目標だった。(固定費の内約…家に入れる2万、ガソリン1万、車関係1万5千、携帯4千、医療費5千)

結果、私に掛け持ちは無謀だった。後々わかったのだが、そもそも私は週5で働くことすらまともにできなかった。去年の夏、私は精神に異常をきたし、ベッドの上から動けなくなった。完治するのに3ヶ月かかった。もちろんこの3ヶ月の収入は殆ど無い。私は両親に頭を下げ、家に入れる金額を1万に下げてもらった。

さて、掛け持ちができないのなら一つの職場でシフトを増やしてもらうしかない。丁度人手が足りなかった。私は一ヶ月で9万稼いだ。それが3ヶ月続いた。病んだ。私は週4勤務が限界だった。それでもなんとか車の維持費は間に合わせた。今思えば運が良かっただけだった。しかし私は月45000ずつ貯金できると思った。それが2ヶ月前の話。

今、私の手取りは4万だ。2年後にはここを出るつもりだったので車の維持費の積立はしていない。(そもそも引きこもりの私にとって、職場に行くためにだけ存在している車である)15000ずつなら貯金ができるかもしれないと思った。

しかし、来月からまた人が増える。3万入るかすらわからない。固定費の時点で赤字の可能性が出てきた。私は24になった。上京とは、なんなのだろう。夢とは、家とは、田舎とは、生活費とは、なんなのだろう。

大学時代の友人と少し話した。新卒2年目、手取り20万。生活費、奨学金諸々で自由に使えるのは10万弱ほどだろうか。彼は私を旅行に誘った。外は嫌だ。人も怖いし、いつ抑圧されていた物欲が爆発するか分からない。

金が無いと断ったら全ての費用を負担すると言った。旅行になんて行きたくない。金のある人間には分からないだろうが、貧乏人というのは旅行に行く金があるなら生活費の足しにしたいと考えるものだ。

イデオロギーの外側に出たいだけなのに結局、生きる続ける限り所得マウントから逃れられないとでもいうのか。本当に真っ当な人生を歩む人間と話していると気疲れする。その優しさなのか悪意なのかすらも分からない哀れみは私を苛立たせる。私は愛玩動物じゃねぇんだわ。

ところで、来月以降のシフトで3万入るか分からないとなった瞬間、いままであった趣味がすっと消えた。何を見てもあまりなにも感じないのだ。大学で、一人暮らししていたときもそうだった。毎月給料日前、通帳に1000円なくて下ろせない。この700円で、私はあと3日は食っていけるというのに、下ろせないから食えない。そういう生活だ。

話は逸れるが、私は一人暮らししていたとき、煙草を吸っていた。

煙草は嗜好品としては金がかかるが、ひと箱20本600円。1日2回、空腹を誤魔化す為に一本ずつ吸うなら、10日分。もちろん10日間連続煙草生活なんてやったらぶっ倒れるのだが、一ヶ月30日のうち10日間の食費が600円に抑えられるならかなり経済的とも言える。

もちろん今の私は食ってはいける。実家暮らしだからだ。嫌煙家の家族には煙草の素晴らしさを説いたとて何も伝わらないだろう。いや、もうそんな素晴らしさを説く気力すら私には残っていない。いつか私は夢に殺されると言ったが、私を殺すのは夢でもなんでもない。生活費とそれすら稼ぐことができない自分自身である。

くそったれ、どいつもこいつも甘い蜜ばっかり吸わせて、私から“生”を奪うのは辞めろ……。私が欲しいのは“死”からのプレッシャーである。それがあることで夢に駆り立てられるというのに、どいつもこいつも自分の夢を飼い慣らせないからって私を飼い慣らそうと躍起になっている。

吐きそうだ。私は私が経済的に自立していないが故に夢を追うという大義名分の元、クソみたいな茶番に乗るしかないのか?

最悪すぎる。夢が死のうとしている。それなのに私の創作物であり、夢の具現化のような月宮朧は朝っぱらから死にたくないとか抜かしてやがる。どうする?夢を守るために。私には夢を、月宮朧を守るために何ができる?

私は私自身を切り売りし、一度殺す必要があると思った。私が生きるために、金を稼ぐ為に一度死ねば、残るのは夢と月宮だけである。

そして、私は生きるために破滅への一歩を踏み出そうとしている。この先の事なんて誰が分かるか。知ったことか。私は、不本意だが死ぬのだ。社会の構造に殺されると言ってもいい。ぶつける怒りの先が分からない。ならば、どいつもこいつも、死にやがれ。はぁ、冗談だよ。後追いもやめてくれ、しなくていい。

私が憎むのは、生きるために金を稼がなくてはいけないということ。金を稼ぐために人は死ぬほどつまらなくなるということ。それを皆が当たり前に受け入れ、社会の構造としてまかり通っていること。その構造にはまらなければ人間扱いされないということである。

そして何が悔しいって、私が自暴自棄に死のうと思うのはいつだって私に“愛”とか抜かす奴の言動がきっかけだったりする。愛ってなんなんだよ。いい加減にしてくれ。それは執着って言うんだ。自称“愛”の人間達は私が望む死に方では死なせてくれない。自分の生の一部にしようとする。

最低。



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