うつろな世界に君だけ
青春時代に気に入って聞いていたアーティストがいる。そして、その曲たちの世界観や歌詞に影響を受けて人生の分岐を選択することだってある。
タイトルの“うつろな世界に君だけ”は私が青春時代に聴いていたJanne Da Arcというバンドのマリアの爪痕という曲のワンフレーズだ。
Janne Da Arcが2007年に活動を休止してから数年後、私はリアルタイムでは追えなかったものの、なんとか課金したくてファンクラブ“マドモアゼルなあなたたち”に入会し、会報が届くのを楽しみにしていた。
結局バンドは2019年に解散し、マドモアゼルも解体されてしまったが、それでもJanne Da Arcが私に与えた影響は大きかった。
出会いは中学2年の時。私は一年の夏からずっと登校を拒否っていたのでその時にはもう既に立派な引きこもりであった。インターネットではボーカロイドが流行り、私もボカロ廃としてうだうだ生きていた(ボカロ廃じゃなかったらあえてVY2を購入して曲を作らない)。
そんな中、耽美主義のオタク達がJanne Da ArcのDry?とROMANCE(正しくはEは反転)を勧めてきた。当時はYouTubeにPVが無断アップロードされていて、私はそれを見た。
滅茶苦茶にかっこよくて衝撃を受けた。PVも、音楽も、歌詞も、なんかエロい。私はどハマリして、延々と聴いた。そのうち2曲では耐えられなくなって、ベストアルバムSINGLESとSINGLES2を買った。
REDZONE、Lunatic Gate、餓えた太陽……なんというか私が気に入るのは当時の自分としては只事ではない、恋愛なのかそうでないのかもよく分からない曲ばかりだった。
知らない世界だから憧れた。それが破滅的な恋愛の第一歩である。
余談だが、私は幼少から周りの女の子たちが与えられたような少女漫画を買い与えられなかった。だから、はじめから少女漫画的な純粋さは持ち合わせていなかったし、私は親へのあてつけに一番分厚くて厳ついからと言う理由で少年ガンガンを小遣いで購入してしまった。
恋する女像は少年ガンガンで連載されていたブラッディクロスと、絶園のテンペストで学んだ。ちなみに2作品とも、出てくる女はツンデレかヤンデレだ。あとめっちゃ気が強い。怖い。
私は高校に入り、ツンツンしながら、Janne Da Arcのsisterというバリバリのヤンデレ曲を教科書に、恋愛を開始した。
うまく行くほうがおかしいのだが、入学から一ヶ月後、私はDry?やらREDZONEやらツメタイカゲロウ、Vanityに共感するまで堕ちた。好意を抱く相手ににセフレとして扱われた挙げ句捨てられるのは右も左も分からない生娘には酷ってもんよ。私は“くりかえす悲しみのメビウス”に突入した。
さて、高校時代に春が来るたびに桜を聴いて泣いていた私は、大学に入るとROMANCEやMore deep、餓えた太陽を好んで聞いた。
荒んでいた訳でも遊んでいた訳でもない。とにかく周りが当たり前に行っている恋愛という様式が完全に分からなくなったのだ。もともと知識としても無い。
餓えた太陽の“今更愛なんて欲しくないから”のフレーズだけがなんとなく頭を回り続ける。女は寂しさから抱かれるなんていうが、失うものがはじめから何もないなら寂しさすら感じない。
私の大学生活は若干潔癖気味に、誰かにちょっかいをかけてはのらりくらりと躱していくことでなんとか退屈せずに済んだ。
しかし最後の半年、吉川晃司のアクセルとRomancerを聞いていたら衝動的な破滅願望に駆られ、それを叶えてくれる人間まで見つかったので卒業まで甘えることにした。
その過程で、私は今までなんとなく流しで聴いていたROMANCEやMore deep、餓えた太陽を完全に理解し、なんなら-R-TYPE「瞳の色」の“君”になりたくて、それを演じることに楽しさを見出した。
大学も卒業すると恋愛や男女に関する全てがめんどくさくなった。結局全て私の中では茶番だった。
春。何年かぶりにふと、桜を聴いた。
青春が、このフレーズだけで全て蘇る。
私の胸に消えない傷痕を付けたのは紛れもなくJanne Da Arcだった。夜を迎える度蘇る……なんてことは流石にないが。
そんな愛おしいJanne Da Arcが5/9で結成26周年だった。おめでとう。ありがとう。
これからも悩める夜をJanne Da Arcの音楽と共に楽しんでいけたら、と思う。
追伸。
ちなみに一番好きなジャケはダイアモンドヴァージンです。REDZONEとLunaticGateのジャケもめっちゃすきです。大学時代、全ジャケを切り貼りして架空の復活ライブのポスターをIllustratorの授業の課題で作ったの思い出しました、たのしかった。
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