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「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を見る前に知っておきたいこと

どうも。

では、今日は3週間続いた特集のシメですね。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の公開前までに知っておきたいこと。これについて語っていきたいと思います。

①シャロン・テイトって、どんな人?

まず、この映画で描かれる、マーゴット・ロビーが演じたシャロン・テイトという人なんですが、どういう人なのでしょう。

この人の最大の代表作と言えば、これです。

この「哀愁の花びら」って邦題なんですね、1967年にこの「Valley Of The Dolls」という映画の大ヒット(この年の興行で年間トップ10入ってます)で知られた人です。これは、この当時に大ヒットした、この当時で言うYA小説みたいな作品で主演した、3人のヒロインの一人だったんですが、あまりにも安っぽいメロドラマ調と、申し訳ないですが、ひどい演技力ゆえに「伝説のダメ映画」みたいな形で語りつがれています。僕も見たことありますけど、なんかですね、日本の70、80年代のアイドル歌手の主演ドラマ見ているような気分になります(笑)。

なので役者としては売り出し中の段階でして、今回の映画の劇中に出てくる別の映画はかなりのB級だったりもするんですが、そのように、女優としては、「映画史」に残る感じでは決してありません。ただ、その美貌が60s後半のファッションとしてアイコニックな感じがすることと、このチャールズ・マンソン事件に象徴される60s末の狂気の象徴の被害者としてですね。

②ロマン・ポランスキーって、どんな人?

その妻シャロン・テイトを殺害されてしまったのは映画監督のロマン・ポランスキー。当時まだ35歳くらいでしたが、この当時、非常に勢いのある監督でした。

ホラ_映画史上でも、「最も怖い映画」として今日でも上げられる名作「ローズマリーの赤ちゃん」を発表したのが、この事件の前年の1968年だったんですね。それもあって、シャロン惨殺のイメージが増長されてしまったところがあります。

加えて、ポランスキー自身が1978年に少女への淫行事件で、アメリカに入国できない状態で今日に至っています。その後も名作、いっぱい生んでいる監督ではあるんですが、このスキャンダルもこの事件のイメージを更に悪くしていますね。

③歌手デビューしようとしていたチャールズ・マンソン

一方、シャロンの殺害を、実際には自分を教祖と崇める弟子たちに命じたグル、チャールズ・マンソンなんですが、彼はその一方で歌手デビューをしようとして、この上の写真の左に写っているビーチボーイズのドラマー、デニス・ウイルソンの口利きで業界にコネを持とうとしていました。

そして紹介されたか、されそうになったのがテリー・メルチャーという、この当時、ザ・バーズをはじめとしたフォーク・ロックのアーティストのプロデュースで有名だった人です。彼は、この写真でもわかるように、この当時のアメリカの人気女優だったドリス・デイの息子でもあります。ドリスはこないだここでも追悼特集書きましたよね。更に言えば、ポランスキーとシャロン・テイトが69年2月に引っ越してきたハリウッドの邸宅はメルチャーの家でもありました。

④ポール・リヴィア&ザ・レイダーズ

そして、今回の映画で印象的に流れるのが、ポール・リヴィア&ザ・レイダーズというバンド。彼らはビートルズをはじめとしたブリティッシュ・ビートのようなギター・バンドのサウンドをアメリカ人で展開したバンドです。歴史てもはやほとんど語られていませんが、全米トップ10シングルも結構多い人たちで

この「Kicks」という曲は、かのGSのザ・タイガースの初期レパートリーとして有名な曲でもありました。

今回、彼らの曲が使われているのは、彼らがマンソンと接触を持っていたことが知られているからです。

⑤ブルース・リーの不遇時代

あと、この映画、今回ブルース・リーが登場するのですが、この年は彼の不遇期です。

1966年にこうしてアメリカのテレビ・シリーズ「グリーン・ホーネット」のカトー役に選ばれて香港からアメリカに進出して成功していたかのように見えていたブルースでしたが打ち切り後は仕事に恵まれません。そんな彼は香港に帰国して

1971年にこの「ドラゴン危機一発」の大ヒットで、少なくともアジア圏ではスーパースターになります。世界的にまでに至ったのは1973年の「燃えよドラゴン」ですが、いずれにせよ本当の全盛期は70年代だったわけです。

で、なぜ今回、ブルース・リーが絡んでいるのかというと

なんと、シャロン・テイトにアクション指導していたことがあるからなんですね。さっきの映画の次くらいの彼女の出演作なんですが、実はこれも今回、劇中で使われています。

⑥1969年の西部劇

今度は角度を変えて、レオナルド・ディカプリオが演じたリック・ダルトンに関してですね。この時代、西部劇が落ち目ながらも、なんだかんだで強かった、という時代なんですが、実はレオが劇中で出演数テレビの西部劇、実在するんです!

この「Lancer」というCBSの西部劇のシリーズなんですけどね。カッコいい1969年ですが、こういう古臭いものが誰でも見ているテレビ番組にあった時代です。

あと、この当時、クリント・イーストウッドがイタリア製のウェスタン、「マカロニ・ウェスタン」の主演で大スターになっていたんですが、かなりヴァイオレンスの要素が強いマカロニ・ウェスタンは、古株のウェスタンのファンからは邪道扱いされていました。そのことは今回、リック・ダルトンのセリフでも出てきます。

⑥なぜバディ・コメディなのか?

これは既に2回言ってることですが、今回の映画、なぜレオとピットの2人によるコメディなのか。これこそ、1969年の映画のオマージュそのものです。

「明日に向かって撃て」「真夜中のカーボーイ」、そしてコメディとは言えませんが「イージーライダー」、いずれも2人の男の物語です。

この辺の事情がわかってないとですね、実際に出回った「タランティーノは女性差別をしている」と、今回の映画でシャロン・テイトの出演時間が少ないことを盾に取った馬鹿馬鹿しいコラムなどが出回ることになります。

だから、映画史の理解って絶対必要なんです!だいたい、「ジャッキー・ブラウン」と「キル・ビル」みたいな、ものすごく強い女性を主人公にした監督ですよ。おかしな理屈です。あと、映画のレヴューでも、「シャロン・テイト事件はあくまで素材」と言いましたよね。その感覚がわかっていないと、このように的外れになります。

⑦リックとクリフのモデルも実在!?

あとですね、今回のレオとピットが演じた2人。これにもモデルがいるとされています。それが

70年代に「トランザム」シリーズの大ヒットで、この時代ハリウッドの最高級スターにもなったアクション・スター、バート・レイノルズと、彼のスタントマンを長きにわたって務めたハル・ニーダムだと言われています。

バート・レイノルズも50、60年代はテレビで成功を掴みかけるも不遇の時代を過ごし、70年代にやっと花開いたスター。その陰にはそれを支えていた忠実なスタントマンがいた。そこのところに目をつけるのがまたタランティーノらしいとことです。

あと、まだ細かいところはあるんですけど、ここまで理解して見に行くと、だいぶ作品理解の役には立つかと思います。


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