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短期カウントダウン連載 2010年代にロックが大失速した最大の理由 すべては「大国の業界」の迷走で生まれたもの

どうも。

では、短期カウントダウン連載「2010年代にロックが大失速した理由」、今回はいよいよその「最大の理由」について語っていくことにしましょう。

まず、おさらいとして、「3番目に大きな理由」が「スターの長期不在とギター・サウンドの未発展」「2番目の大きな理由」が「90年代的ロック環境の悪い名残」、これを理由としてあげました。

そして、今回、「最大の理由」として、僕は迷わずこれを挙げます。

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USA!!!

というか、このアメリカの音楽業界のロックに対しての大いなる勘違い、これが生んだ悲劇だと思います。

・・・こう言われても、日本のリスナーの方にはピンとこないかもしれません。なぜなら、日本の場合、「アメリカでのロックの流行り」が決定的な力を持たないから。日本の場合だと、洋楽ロックの影響力はロッキンオン、もしくはそこ出身のジャーナリストに頼るでしょ?そうなると、どうしても情報がUK経由になる。それプラス、日本のラジオの場合、洋楽のロックってなかなかかけないから、ラジオ文化の中で聴くというのがバブルの時代以降、死んでますからね。

しかし、

世界の他の地域における「アメリカではやるロック」の影響力は未だに絶大です!

それは、他の国の場合、「ロック専門局」というのが当たり前のように存在するから。それが日本にはないでしょ?その場合、こういう局がオンエアの参考にするのがアメリカの局のスタイルなんですよ。UK型の国というのは、実はあんまりありません。ベルギーくらいかな。

それプラス、

どんなにイギリスとか日本で人気あろうと、アメリカで売れないバンドは今もってハクがつきません!

これも残念ながら紛れもない事実であり、これは実は日本においてもそうなんですよ。イギリスのバンドであっても、コールドプレイしかりMUSEしかり。アメリカでビッグになったバンドの方が、フジロックやサマソニみたいなビッグ・フェスでヘッドライナー取りやすいでしょ?イギリスだけのローカル人気だと、なかなかそうにはなりません。

そういうこともあるので、アメリカ市場って、世界的に見て、未だに影響力が絶大なんです。

が!

そのアメリカのロック業界が2010年代にとんでもない迷走を起こしてしまった!

それが大問題だったんですよね。

だって、2010年代のアメリカで最も人気のあったロックバンドって

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イマジン・ドラゴンズですよ!

それはもう、圧倒的です。シングル・ヒットの数とか、アルバムの売れ行きとかから見ても、世界的にこの年代でグンを抜いて売れてます。

いや、それだけじゃありません。もっと驚くべき事実を言いましょう。2010年代、アメリカのラジオのチャートで最も1位の曲を多く持つバンドって

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ケイジ・ジ・エレファントなんですよ!!

これ、驚きません?日本だと「誰だよ?」という感じで、他の国でもそこまで人気ある感じしません。いや、第一、彼ら自身がアメリカのチャートでそこまで売れているわけでもない。それにもかかわらず、アメリカのラジオ局が一方的に好んだのはこのバンドなんですよねえ。

別にイマジン・ドラゴンズにもケイジ・ジ・エレファントにも個人的に何の恨みもありませんよ。ケイジジはいいバンドだし、イマドラは・・・人間的にはすごくいい人たちですからね。ヴォーカルのダンは人権活動に関してかなり熱心な活動家だったりもするくらいですし。ただ、それでも、日本のフェス・ゴーワーの人たちの感覚からしてみたら、「それが今のアメリカなの???」と思わせる選択ではあるわけじゃないですか。このほかに人気といえば、うちの息子のトム(7歳)もすごく好きなトウェンティ・ワン・パイロッツとか、復活したパニック・アット・ザ・ディスコとか。やっぱり7歳のブラジル育ちの息子からしても、このブログで紹介する批評ウケのいいアーティストよりは圧倒的にこう言うアメリカのラジオ派のバンドの方が断然詳しいんですよ。だから、アメリカの流行って、「マニアよりもマス」にとって国際的に極めて重要なんですよ。そして、それこそが、現在の実際のロックのシーンの現状を間違って世に伝える元凶にもなったわけです。

では、なんでそんなことになってしまったのかを、今から話すことにしましょう。

そもそも、アメリカのロック業界のおおおきな間違いの元は二つあります。一つが「極端かつ不正確なマーケッティング」、そしてもう一つが「メジャー・レーベルへの利益」。このふたつです。

まず、マーケッティングの話ですが、アメリカって、妙に合理主義が行き過ぎてるところがあって、一旦「こう」と決めたら、その方針を商売上で無理に進めることがよくあります。「利用者にはこういう人が多い。だから、その人たちを集中的に攻める」みたいなね。それがロックにあてはめられてしまったのが90s後半からでした。

90s末から何が起こったか。この時にアメリカのロック局でかかるものが一斉にラウドロック一辺倒になったんですよ。いわゆるニュー・メタルとかポップパンクですね。あの偏りは今見ても本当に不自然でしたね。だって、それまでは、オルタナティヴ・ロック台頭の影響で、インディから、これまでの常識の概念覆す個性的ないいバンドがすごく出てきた時でせっかくシーンが面白くなり始めていたのに、急にその中のハードなサウンドのバンドばかりが優遇されるようになったんですよね。

それは、この頃のアメリカのラジオ局が、ロックを聴くデモグラフ(ターゲット層)を「激しい音楽を聴く男性」に定めてしまったからなんですよね。これは本当に参りましたね。だって、そのおかげで、いくらイギリスのシーンを中心にヨーロッパでストロークスとかホワイト・ストライプスとかがウケようが、リンキン・パークとかグリーン・デイよりは確実に曲なんてかけてもらえなかったから。これは本当にもどかしかったですよ。いや、リンキンとかならまだいいですよ。ロックンロール・リバイバル系のバンドなんて、ゴッドスマックとか、シャインダウンとか、今から考えたら「誰だよ」みたいなポスト・グランジのバンドよりもかからなかったですからね。だから、僕がHard To Explainで推してたバンドって、アメリカだと批評とか新聞評、ネット、CD販売店から広がった口コミに頼るしかなかったんですよね。

ただ、そんなアメリカのロックの売り方に限界が来たのが2008年くらいでした。一つは、ラウドロックのブームがエモ・ブームで頭打ちになってしまったこと。この前後に、アメリカのラジオ局がゴッソリと減ってるんですが、その多くが廃業後にスポーツ系ラジオ局になってるんですよね。ロック系のラジオ局がどういうマーケッティングをしてたのかはそれだけでもわかります。

それプラス、アメリカでのロックに対しての見方も変わっていました。一つはコーチェラをはじめとした欧州型のフェスのブームが到来したこと。もう一つは、myspaceやピッチフォークをはじめとしたインディ・カルチャーですね。ここで、ようやくアメリカのロック業界も「時代の流れについていかないと」と悟ったんでしょうね。だから、2009年くらいからかける曲、ガラッと変わりましたよ。キングス・オブ・レオンの「Use Somebody」とかMGMTの「Kids」とか、ヴァンパイア・ウィークエンドの「A Punk」とかね。「ああ、ここからようやく、アメリカのロックも変わってくれるのか」と思っていたのです

が!!

残念ながら、ここからがアメリカのラジオ局にとっての迷走の始まりとなってしまいました・・・

彼らが何を間違えたか。それは

どのアーティストを中心にプッシュして良いのかがわからなくなってしまった。この迷いがことのほか、デカかったんですよね。

「そんなのフェスに行って誰が人気なのか確かめたり、ピッチフォークで何が評判なのか確認すればいいじゃないか」って思うでしょ?残念ながら、その考え方がアメリカのロック業界にはなかったんですよ。

だから、押しアーティストが一定しなかったんですよ。2010年代初頭、明らかにロックに追い風吹いてたのに、この時にアメリカのラジオ局が作ったのって、一貫性のない一発ヒットだったんですよね。アーケイド・ファイアとかボニーヴェアとかフリート・フォクシーズなんてどうやってもラジオでかからなかった(ブラジルのロック局でもほとんど聞いたことない)し、もう少しラジオで聞きやすそうなザ・ナショナルとかスプーンでもそこのところは今ひとつ。フォスター・ザ・ピープルとか、ゴティエとかfunとかが得大ヒット出しても、その次の曲からは押す気が全然見えずに、その場限りで立ち消え。まあ、前回も書いたようにピッチフォークの推すバンドに華がないバンドが多かったとはいえ、もう少し何とかなったはずなんですよね。

そうなってしまった理由、それは

そういうアーティストを売ってもメジャー・レーベルの金にならないから

残念ながら、今、「かからない」といったアーティストは、ほとんどが90sや00sに台頭したタイプのインディ・レーベルです。ただ、アメリカのラジオ業界で力持っているのは圧倒的にメジャーなんですよね。そのパワーゲームでどうしても負けてしまう。さっきいった、00sにロックンロール・リバイバル系のバンドがどうしてもラウドロックに勝てなかったのも、それが理由だったと思います。

だから、アメリカのロック系のラジオ局は未だにメジャー・レーベルお抱えのアーティストばかり押します。そういうところから¥人気アーティストを作りたい。それが本音です。その最大の成功例こそイマジン・ドラゴンズなわけであって。一発屋たくさん作ってた時期も、そういうアーティスト、模索してたんでしょうね。

でも、2019年にもなるのに、アメリカのロック系のラジオ局、

まだ、誰を押したらいいのかで迷走している!

これね、本当に目を覆いたくなるばかりです。もうぶっちゃけ、今のシーンでの人気と、曲の聴きやすさから言えば

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THE 1975とかLordeとか、ビルボードの総合チャートで1位取るようなアーティストなんだから、「出す曲出す曲毎回1位」くらいの勢いで押せばいいじゃないですか。まあ、彼らは比較的かかっている方ではあるんですが、僕に言わせればまだまだですね。それこそ、ケイジ・ジ・エレファントの1位の曲数くらいヒットがあってもいいアーティストですからね。

他にも色々いますよ。フローレンスとかアラバマ・シェイクスとかだっていいし、テイム・インパーラでもいいしラナ・デル・レイだっていい。セイント・ヴィンセントでもHAIMでも、ファーザー・ジョン・ミスティでも、思いつく限りランダムに言ってますけど、選択肢、いくつでもあるはずなんですよ。実際、これ、イギリスのBBCあたりだと当たり前のようにかかりますよ。

ところが、それがアメリカだとできない。その理由は、特に今だとコレだと思いますね。

「でも、男性客が欲しいし・・・・」

つまり、今、ロックシーンで元気のある女性アーティストをかけたりするような感じだと、「ロックを本来一番聞いてくれる男性層に届かない」、そんな感じなんじゃないですか。

あと、

「インディ・レーベルの人気アーティスト押すと、キッズが聞いてくれなくなるんじゃないか」

とかね。これも、ポップパンクとかエモで人気得た時みたいな、低年齢の客が欲しいから、ありえる考え方でしょうね。

キッズが欲しいなら、今なら

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それこそビリー・アイリッシュばっかりかけりゃいいと思うんですけどね。彼女、曲によってはロック局でもかかるんですけど、彼女も徹底されてないですね。皮肉にも今だったら、彼女の曲ばかりのラジオのほうが、今のアメリカのロックのラジオ局聴くよりまだマシなレベルですよ。今のアメリカのロック系のラジオって、情けないことに、今さらEDMもどきの曲とか、それこそ「若いキッズ目当て」にかけたりしてる現状があるですよね。しかも、誰も知らないメジャー契約の人気のないアーティストの。

そんな迷走ばかりするから、アメリカでのロック系のラジオ局のシェアも減るし、影響力もなくなるんです。そして、それゆえに、

せっかく世の中には優れたアーティストもたくさんいるのに、「アメリカでの放送上のヒット曲」という歪められた情報の元で国際的に伝わらなくなってしまうんです!

もっとも今、アメリカのロックファンも、その「ヒットの元」のラジオなんて聞かなくなってしまってるでしょうけどね。

アメリカだって、今も聞こうと思えばいいラジオ、あるんですよ。それは

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この、シェリル・ウォーターズっていう、すごく癒される雰囲気もった中年女性の方が看板のKEXPという局とか。あと、「Tiny Desk Concert」っていうスタジオ・ライブやってる、あれ正式に放送局というのとはやや違う気もするんですけど、NPRとかね。

アメリカのロック系のラジオ局がみんな、KEXPとかNPRとか、BBCのBBC1の一部とかBBC6みたいになったら、ロックなんて余裕で生き残れるんだけどなあ。そういうのが、「一部のマニアだけのものになってしまっている」のが現在の問題点ですね。

とにかく、今、もっとも手っ取り早い解決法としては

「ロックはマッチョな男が聞く」なんて性差別的なデモグラフは今すぐやめるべきだ!

これは間違いないと思います。

これからのロックは、かなり女性に支えられる比重が増えるはずですので。やっぱり彼女たちの方が日常で言いたいことも多いし、勢い女性アーティストに多くいがちなダンスポップなどでは表現しきれない音楽的な欲求とかもあるはずでしょうから。前回も言ったように、ギターの売り上げも女性に支えてもらっている現状ですからね。

あと、前回も言ったように、ジャンルわけで音楽表現が削られるだけ削られたわけです。「表面的なジャンル外」からロックの匂いをかぎ分けて紹介するような感じも理想を言うなら必要だとも思います。

今日書いたことを覚えて、それが2029年にどうなっているか、見たいものです。
















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