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「そもそも何をしたいのか」を言語化する


昨日は、

ミッションステートメントが
企業にとってどんな役割を果たすのか

について考察し、

プレミアとJの各クラブの
ミッションステートメントに何が書かれているのか、

をまとめてみました。


プレミアリーグの盛隆に
いまだ終わりが見えません。

各クラブに流入する放映権料は、
世界中のスタープレーヤーを獲得する原資になり、

スタジアムには
多くのお客さんが集まって、

チケットが手に入らない人は
自宅、もしくはパブで有料放送を見る。

そんな限定性や希少性が
さらなる課金収入を増大させ、

放映権料の増額、
そしてクラブが潤うというサイクルが回っています。


この現象を、
「今」という短期視点でとらえると、

質の高い選手と環境
を買う資金、お金さえたくさんあれば

集客や売上アップが実現できそう。
実際に成果を上げているJクラブも存在する。


しかしながら
長期視点でプレミアを分析すると、

「サポーターとの向き合い」

が現在のプレミアの盛隆の出発点
にあると考えられなくはない。

サポーターと向き合い、
時間を味方につけて少しずつ信頼を獲得し、

信頼がお金に換金された状態、
それが満員のスタジアムです。

いつも満員、ということは、
いつもスタジアムに行けない人が多数存在する、
ということでもありますので、

電波を通して有料で視聴させるビジネス
が成立。

イングランドだけではなく
世界中から視聴者が殺到し、

資金がクラブに還元される
という流れです。


莫大な資金があり、
選手を買ってスタジアムをきれいにしたから満員になるのではなく、

サポーターから信頼を得る努力を
長期間続けるから

結果として、

お金と選手と満員のスタジアム
を手に入れることができるのです。


大富豪がクラブを買収、
という事例もあるにはありますが、

ここ十数年の話。

創立100年以上の歴史を誇る各クラブが、
その大半の期間に費やしてきた地道な努力は

あまり注目されていません。

30年にも満たないJクラブが
巨大資本をバックに

プレミアと同じような成果が出せるかどうか。
体力がどこまで続くのか。

そんな視点で
今後の動向を見守りたいと思ってます。


ちなみに

ミッションステートメント
について書かれた文献を2本、

あらたに見つけましたので
掲載しておきます。


1本5000円のレンコンがバカ売れする理由

(野口憲一)

自分たちの信じる価値をどのように社会に認めてもらうかというところに本質がある

THE VISION あの企業が世界で成長を遂げる理由
(江上隆夫)

世界中に向かってどのような価値を自らが推奨する価値として提供するのか。その価値の方向性や在り方と、企業としての覚悟がつづられています。


サッカークラブの価値って何なんでしょうか?
何を売っているのでしょうか?

というかそもそも、
なぜ社会に存在しているのでしょうか?

そう問いただされて、
よどみなく情熱的に語ることができるかどうか。

できるのであれば
言語化して発信すべきではないでしょうか?


サポーターのみならず、
地域社会にとって、

サッカークラブを応援する意義。

それは、
クラブ自身が覚悟とともに信じて疑わない、
クラブから生み出される「価値」に他ならない。

意義と価値がイコールで結ばれてはじめて、

「社会に認めてもらう」

ことができるんだと思います。


元NFLジャパン社長の町田光さんは、

企業とは社会に対して価値を提供し、人々に受け入れられて、初めて発展することができる社会的な存在

と前置きしたうえで、

顧客を定義するという意識が存在しないのが日本のプロスポーツ経営

として、

日本プロスポーツの売上が欧米と比べて
極めて小規模にとどまっている現状とその原因を追究しています。(スポーツ・ファン・マネジメント


顧客を定義することで、
その顧客が評価する価値が明らかになります。

それが言語化されずして
経営はできないはず。

ミッションステートメントには
既述してきたとおり、

課題解決(提供価値)が言語化されている。

サポーターの課題解決(提供価値)を
言語化し、公開して、

サポーターと共有を図ることにおいて、
プレミアとJに明らかな差が存在していました。


大挙して集まるサポーターが、
サッカーという競技の魅力と

あいまって醸し出される
スタジアムの一体感、非日常感。

そこに企業や放送会社は魅了され、
莫大な放映権料が

リーグを通して各クラブに還元され、
ハイレベルな選手や監督を集める原資になる。

この好循環を可能にする大元が、

「誰を顧客にするのか」

という大原則を丁寧に言語化している

「ミッションステートメント」

であると考えます。


そういえばここまで書いて思い出しましたが、

スペインの強豪クラブ、レアル・マドリードにも
明確なミッションステートメントが存在しているようです。

すばらしい文献がありましたので
紹介しておきます。


THE REAL MADRID WAY レアル・マドリードの流儀
(スティーヴン・G・マンディス)

ミッション&バリューステートメント(使命と価値観についての声明)
我々は次の本質的価値を強調し、ミッションを達成することを目標とするー互いを尊重する。あらゆる行動において、卓越性、革新、品位、良質の実現を目指す
ミッション&バリューステートメントの言葉を超えて(すべては言葉からはじまるのだが)、それを強調し、徹底するのが文化

「すべては言葉からはじまる」

しびれるような一文に
心が躍りました。


さらにこの文献もおもしろかった。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」(山口周)

「論理的な確度」という問題については割り切った上で、「そもそも何をしたいのか?」「この世界をどのように変えたいのか?」というミッションやパッションに基づいて意思決定することが必要になり、そのためには経営者の「直感」や「感性」、言いかえれば「美意識」に基づいた大きな意思決定が必要になります。


論理的、理性的に経営していると、

「他人と同じ正解を出す」、
つまり正解のコモディティ化や差別化の消失

という問題を招く。

VUCA(※)に生きる我々は、
全体を直覚的に捉える感性と、

「真・善・美」

が感じられる打ち手を
内省的に創出する構想力や創造力

が求められます。

※VUCAとは、

Volatility=不安定、
Uncertainty=不確実、
Complexity=複雑、
Ambiguity=曖昧

という、
今日の世界の状況を示す4つの単語。


サッカークラブの経営者には、

遊び心満載の、「そもそも何をしたいのか」
という燃えたぎるような情熱を持っていてほしい。

そしてそれを私たち一般市民に
熱っぽく訴えてほしい。訴え続けてほしい。

心震えるようなミッションに
出会ってみたいです。




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