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Charterに掲載される膨大な数のワード「supporter」が意味するもの


昨日取り上げた「ミッションステートメント」
あらためて定義のおさらいです。

エピック・コンテンツマーケティング
(ジョー・ピュリッジ)

その会社の存在意義だ。
つまり、その組織がその事業をおこなっている理由だ。

ファンベース(佐藤尚之)

まず一番最初にやるべきなのは、創業の志、
そしてミッションを共有し直すこと

楠木建さんも
著書「ストーリーとしての競争戦略」で触れています。

本当のところ、誰に何を売っているのかという問いに答えること

ということでまとめると
「ミッションステートメント」とは、

誰(顧客)に向けて価値を創造するのか、
という企業の事業方針を記したもの

とここで定義して使用していきます。


また以下捕捉。

キリンHD・磯崎社長

CSV(社会との共有価値創造)経営で社会が抱える課題を解決する

日清食品HD・安藤社長

気候変動と食料資源の持続性という問題を技術革新によって解決する

ブランズウィック・グループ
アラン・パーカー会長

企業は収益を上げながら社会問題を解決しなければならない

※すべて日経新聞(2019.10.29)より


捕捉含め、「ビジネスの本質」を
以下の通りまとめてみました。

「価値を創造する」ことであり、
「顧客の課題を解決する」こと


生み出した商品やサービスが、

現代社会および人々が抱える
悩み、心配事、課題を解決するものであれば、

必然的に(売らずとも)売れていく。

最も美しく、エレガントなビジネスとは、

「価値=ソリューション」

価値とソリューションが
カチッとハマれば、

売り込み、客引き、アポなし営業など、

土足でお客さんの家に入るような
忌避される行為は不要というわけです。


少し話が逸れましたが、
ミッションステートメントとは

誰(顧客)に向けて価値を創造するのか
(誰の課題を解決するのか)という企業の事業方針を記したもの

であるとして
話を進めていきつつ、

昨日のエントリーで示した、

Jリーグ各クラブのミッションステートメントが『個人顧客に対する価値提供』を唱えているのに対し、プレミアリーグ各クラブのそれは、個人顧客を考慮する度合いが低いのではないか

という見立てを
検証していこうと思います。


ところでそもそも、という話、

上述したような「ミッションステートメント」が
サッカークラブに存在しているのか?

ということで、
各クラブの公式サイトを徘徊してみました。

するとどうやら、

Charter
といのがプレミア各クラブの、

クラブ理念」なるものが
J各クラブのミッションステートメントに該当しそう。

また、

各クラブのウェブサイトから
ひとつひとつミッションステートメントを抽出し、

ワードを数えて、頻出順にまとめるのは
ちょっと現実的ではなかったので、

KH Coder

というツールを使ってみました。

恣意的になりがちな手作業を排除、
客観性と蓋然性を確保して

使用されている言語の多寡を分析しました。


ちなみに、
ミッションステートメントの研究は、

ミッションマネジメントの文脈で
企業やNPO法人を対象に行われていますが、

サッカークラブにおけるミッションステートメント
に焦点をあてた研究論文は今のところ、

私が調べた限りにおいては
なさそうです。

当然、日英比較も
今のところ見つかっていません。


で、
いきなり結論めいたことを言ってしまうと、

プレミア各クラブのCharterでは、

supporter

というワードが多用されているのに対して、

J各クラブの7割が、
そのクラブ理念内において

サポーターもしくはサポーターに準ずる
「個人」を表すワードを

全く、あるいはほとんど
使用していないことが判明しました。


上述した

Jリーグ各クラブのミッションステートメントが『個人顧客に対する価値提供』を唱えているのに対し、プレミアリーグ各クラブのそれは、個人顧客を考慮する度合いが低いのではないか

という見立てに
いくつもの疑問符がつきそうなファクトです。


以下(明日以降細かく見ていきますが)
プレミアクラブのCharterを抜粋してみました。

ウエストハム

スタジアムだけではなく日常生活においても新しい価値(最高のサポーター体験)を共創します

ワトフォード

ワトフォードは家族クラブであり、地域社会における中心的存在です。(中略)そして顧客サービスを卓越させることをビジネスの中核に据え、このビジョンを共有し、スタジアムに訪れるすべてのサポーターに最高級のスポーツ体験を提供します

マンチェスターシティ

クラブは、我々のフットボールに対する情熱を未来につなげるために、サポーターとともに活動していく。また、サポーターの声に傾聴することが進化するための唯一の方法であり、何が重要で、何が良くて、何を改善すべきなのか。課題を知るために、サポーターのポジティブ、もしくはネガティブなフィードバックをシェアできる場所を創造します


ちなみにCharterとは
「憲章」という意味。

約束事とか覚悟
といった意味が包含されています。

公式ウェブサイトにおいて、

サポーターが抱いているであろう課題
に対するソリューションが提案されています。

スタジアムにおける
一体感、非日常空間での感情の開放
といった、

潜在的に存在しながらも言語化されず、
したがって顕在化しにくかった

本質的な価値。

そんなCharterの言語に触れたサポータが
心震える充足感に満たされないわけがありません。


少なくとも年間100億円
という巨額な放映権料が保証されており、

サポーターへのマーケティングコストは
削減されても経営へのインパクトは少ない、

と考えられなくはありませんが、

サポーターと真摯に向き合い、

彼らとの関係性向上を図らんとする
明確な意志がひしひしと伝わってきます。


もちろん、
言行不一致は信頼を棄損するだけ。

ことほど左様に、
クラブの厳然たる覚悟が示されているわけですから

日々の行動も
それに準じているに違いありません。

社会の公共財としての自覚
があればこその、

真正面からの
サポーターとの固い「約束」

しびれるような言語に
感動すら覚えました。


小林一三 日本が生んだ偉大なる経営イノベータ(鹿島茂)

真のビジネスマンにとって、大きな喜びを感じるのは、社会分析から演繹したビジネスモデルが予想通りに大衆に受け入れられ、大衆のために努力したことが報われたと感じる瞬間なのである。


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