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コストをカットするか?販売価格を上げるか?

記憶が定かではありませんが、著名な方がこんなことをおっしゃっていました。

原価が700円の商品を1000円で販売すると、利益は300円。経費削減をして原価を400円にすると利益は倍になります。一方、原価はそのままで、販売価格を1300円にしても、利益は倍増します。

経費を削減するか、販売価格を上げるか、という議論。いずれも利益は2倍になります。

日本人の給料が30年間上がっていない。そんなニュースを目にしました。平均賃金は、G7でイタリアと最下位を争い、2015年には韓国に抜かれて差が開く一方。ワンコインでランチが食べられるのは、うれしい反面、賃金を抑えるからこそ実現できる価格だということも一面の事実です。

日本の企業でしか働いたことがありませんし、転職したのは4回だけなのでサンプル的には少なすぎますが、一貫して感じたのは、徹底した経費削減志向。いかにコストをカットできるかが評価の対象になる会社もありました。そして販売価格を下げて(ときに無料招待など)売上を確保するという戦略?を叩き込まれてきました。

ですが経費を抑えるためには、どこかで「見えないコスト」がかかっていることは、冷静に考えれば容易に気がつきます。たとえば顧客管理システムを導入するにあたって、「イニシャルコストゼロ!ランニングコストゼロ!」という謳い文句に惹かれてしまいますが、実際には「時間」や「労力」というコスト(代償)を支払うことになります。

システムは、顧客をデータで管理して、定期的なコンタクトを取って再購買を促すなど、売上を確保するために導入したりします。ですが、安価な(タダの)システムでは、顧客データは取れるものの、セグメント(性別、年代、居住区)は手作業で行わなければならないなど、社員の時間と労力を奪ってしまいます

分析やセグメントを自動化して、浮いた時間でアイデアや企画を考えるなど、社員の生産性を上げるためには、月額などで一定のコストを支払うシステムの導入が必須。コストが明確に「見える」か、時間や労力といった「見えない」コストを払うか?いずれを選択するかの意思決定を迫られます。

そして私が所属していた企業はすべからく、後者を選んでPLを整えていました。企業の成績として利益が出たとしても、アウトプットの質が向上したり、社員の給料が上がったりはありません。冒頭に示した利益倍増の考え方においても、コストカットが最優先。それで利益を確保できれば業績的にはOKだからです。

その繰り返しが、日本人の給料があがらない要因のひとつだとしたらどうでしょうか?この価値観がずっと続けば、世界から取り残されてしまう気がしてなりません。海外旅行しても何も買えなくなるのでは?と、お金の「価値観格差」はどこかで遮断すべきではないかとちょっと心配になりました。

結構な長時間、私たちは日々働いています。個人的には好きなことをやらせてもらっているので苦にはなりませんが、そういう人ばかりではないと思います。限られた時間をいかに生産的に使って、人生を豊かなものにしていくか?経費を削減するばかりではなく、いかにコストを有効に使って価値あるサービスを創造できるか。今の、そしてこれからの日本人に求められる考え方ではないかと思いました。

久保大輔




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