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思い込みはコミュニケーションで解消する

人間関係の不信感はコミュニケーション不足からくる。そんなことは百も承知だけど、嫌いな人、合わない人とは付き合いたくないという声なき声が聞こえてきそうです。ですが必要であればプライドを捨ててでも、自分から近寄っていって情報を取らなければなりません。

論理の飛躍」という言葉があります。私はかつて、自分の経験や学習によって身につけた考え方に固執することがよくありました。「こういうときはこうだよね」など、自分の主張の正当性を相手に伝えようと必死。経験は経験として知悉していたとしても、それに確たる根拠が示されているわけではありません。過度な一般化による思い込みが強く働き、共同作業がうまくできませんでした。

ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの行動経済学者ダニエル・カーネマンは「ファスト&スロー」で2種類の脳の働きについて解説しています。「速い思考」と「遅い思考」を使い分ける私たち。パッとみて即座に判断する速い思考は「思考の近道」とも呼ばれ、脳のワーキングメモリを節約する働きがあります。一方、じっくりと集中して思考する遅い思考はカロリーを消費するので稼働時間は限られています。そして「思い込み」は往々にして速い思考をきっかけとして起こります。

私たち人間は「保留したい」生き物。夏休みの宿題を8月31日に一気にやった経験、皆さんにはないでしょうか。私はあります。とはいえ「やらなければ」という思いはあって、それでもプールや海、お祭りや花火といったイベントが目白押しで、ついつい流されてしまうのが人の心情です。このように2つの認知がお互いに矛盾しているとき、私たちはもやもやしてしまいます。

このもやもやした状態を「認知的不協和」と言います。そして認知的不協和に対して私たちの心はいつまでも耐えられないので、自分の行動や現状を正当化して、認知的不協和の解消を図るのが人間の性質です。つまり認知的不協和は、自分を正当化する方向に持っていくことで解消されるのです。

こうやってみていくと、いかに私たち人間がわがままで自己中心的かがわかります(もちろん全員がそうというわけではありません)ところが、知らず知らずのうちに自分を正当化してしまう心理をわかっていれば周囲に寄り添った行動ができるようになります。

自分を健全に疑うこと。情報や経験が偏っていないか。前提が抜けていないか。プレッシャーを必要以上に感じていないか。思い込みにはまっているときは、これらの問いを自らに投げかけてみる、もしくは相手に話しかける(ときに「がんばって」でも)と、思い込みの罠から抜け出すことができるでしょう。

久保大輔




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