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「居場所」がある安心感を届けたい


街の電気屋さん。若い世代にはあまりなじみがないかもしれません。電化製品は大型量販店、もしくはネットで購入する時代。くるしい経営を強いられていると思いきや、静かな進化を遂げる電気屋さんの潜在能力に、メーカー各社が注目しています。

キーワードは「交流の場
電気屋さんにはなぜかカフェカウンターが。おいしいコーヒーを淹れて、ドーナツが楽しめます。「数百円単位をかさねて信頼関係をつくる」という店主。次第に客数が増え、1台11万円もする焙煎機が売れるようになりました。

便利な世の中。商品の質は均質化して、差別化がむずかしくなり、価格が下がり続けます。そんななか、商品ではなく人と人との交流が信頼を生み、高値で商品を売り続ける人も一方で増えている。

商品の背後にある人やストーリー。安くて品ぞろえ豊富で便利だけど、どこへいっても代わり映えのしない大型量販店に比べて、安くないし品数も少ないんだけど、店主との会話、思い、履歴を含めたオリジナリティを感じる街の電気屋さんは、頼りないけど安心感があるのかもしれない。温かみを感じられるのかもしれません。

居場所」という概念に最近、心惹かれます。前職はサッカークラブ勤務。ファンにとって試合のあるスタジアムは「居場所」でした。出勤して仕事して、帰宅してご飯食べて寝る。殺風景な日常は退屈で、人間関係というめんどくささもあってストレスを感じる。週一回だけ「ちょっとだけホッとできる」場所。それがファンにとってのスタジアムです。

3月に入って立て続けに「子どもの貧困」に関する書籍を読み漁り、没頭しています。「昔のほうが貧しかった」という頑固おやじの声なき声が聞こえてきそうですが、現代の日本という先進国に暮らす子どもたちを冷静に、その違いをみれば「ほかの子どもはできるのに自分はできない」という、誰かと比較した相対的な貧困であることに気づくはずです。

みな同じように貧しかった時代では目立たなかったことも、おしゃれや大学に進学するという「人並み」のことをできない辛さ、取り残された感が現代の貧困の特徴。

はずかしさ、怒り、無力さや孤立感、その責を内面化して「どうせ俺なんて」と、自己肯定感を傷つけている子どもたちには「駆け込み寺」が必要だと思う。

ホッとできる場所、感情を開放できる居場所。
サッカークラブにとってのスタジアムがその機能を果たすように、スポーツイベントも同じように、子どもたちのSOSをくみとって優しく抱きしめてあげられるようなコンテンツを提供するべき。

スポーツを純粋に楽しむイベントはあってしかるべき。でも、意欲、活力、自信をあたえて、未来の社会を担う子どもたちに希望を与えるようなイベントもあっていいと思う。お金がなくても誰でも参加できて、年齢や性別、国籍をごちゃまぜに。親も一緒にたのしい時間を過ごせるようなイベントをつくりたい。

吉本興業という大きな会社には、魅力的なプロパティがたくさん。芸人やイベントといったアセットをいかに、社会の課題解決に向けられるか

お笑いという強みは、多くの人々を幸せにできます。貧しくて、社会的弱者とよばれる人たちも同様に。これからの時代では少し、人々の課題に向き合って、街の電気屋さんのような身近さをもって笑いを届けることができるようになれば最高だなと感じています。

久保大輔




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