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変わりつつある「商売の常識」

昭和の時代は「いいモノを作れば」売れました。「3種の神器」という名キャッチコピーに人が群がり、一生懸命働いて競うように買い求めました。今のように「何でもある」時代ではなく、ネットもないので情報収集もままなりません。人々の課題を解決する画期的な発明は現代のようにすぐに陳腐化せず、しばらくの間、人や組織に富が集中することになります。

平成に入り、インターネットが世に出回るようになると少しずつ「私好み」の商品やサービスも登場するようになりました。「作れば売れる」時代は過ぎて、「人の趣向に合わせて開発」しなければ売りづらくなりました。「マーケティング」が重宝され、マーケティングのスキルや知識を持つ人が台頭し始めた時代です。

ここ数年は、商品やサービスが優れていて、自分向けにカスタマイズされているのが当然、デフォルトであり、その上で「何があるのか」が期待されています。昨年からプラスチックの袋が有料化されましたが、先駆けていたのは「パタゴニア」というブランド。美しい世界を次世代に、というビジョンを掲げる同社では昔からプラスチックバッグを提供していません。そもそも置いていないので買うこともできず、購入した商品を持ち帰るためにはエコバック的な袋を必ず持参しなければなりません。

消費者の心理は、パタゴニアで買い物をすることが「環境に良いこと」をしているという気持ちで占拠されます。自尊心が高まり、世間的にもポジティブなステイタス感抱くことになります。それがパタゴニアを選ぶ理由。優れた商品が、マーケティングによってカスタマイズされ、さらに「いいこと」をしている実感がもたらされる。売り手の理念、ビジョンが問われる時代になりました。

さらに今、そしてこれからは「関わる」時代。売り手と一緒に商品やサービスを作ることが「消費者にとって重要な価値」と見なされるようになります。ハイクオリティなアウトプットを購入するのはもちろん、そして作り手の意志、ビジョン、世界観が感じられるのも当たり前。そこに共感する人が作り手とともに共創できる環境が求められるようになりました。

1人のファンがいれば、1人の購入者になる。10人になれば10人の、100人になれば100人分の商品が売れる。生産者と消費者の垣根、境界線が極めてあいまいになり、一緒に作ったアウトプットをまず買い求めるのは、制作プロセスに参加した消費者です。いかにファンを増やせるか。そしてファンを制作に巻き込ませるか。問われているのは、共創の概念。ここまでくるとただモノを作って売る、というかつての商習慣がいかに閉鎖的か、という感覚を強くさせられます。消費者が関わるわけなので、イカサマや不正が起きにくい環境、システムにもなり、倫理的な商売の展開によって私たちが受ける便益も大きくなるのは間違いありません。

なかなか読み進められませんが、「プロセスエコノミー」にはどうやらそんなことが書かれているのです。続きが楽しみ。少しずつ丁寧に読み込んでいこうと思います。

久保大輔




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