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がんばらないで勝つ方法を、がんばって考える


マーケティング会議。議題は「強み」でした。自社の商品、サービスはなぜ売れるのか?

お客さんの頭のなかには、たくさんの選択肢があります。ランチにいくとき、ラーメンにしようか、定食屋にしようか、コンビニにしようか、複数ある候補から一つを選んで消費するわけですが、選ばれたお店にはそれなりに「理由」があります。

「おなかいっぱい食べたい」「ダイエット中だから…」「移動しながら軽く」 そんなニーズを満たすのは、ラーメン屋の「替え玉無料」だったり、定食屋の「バランスのいい食事」だったり、コンビニの「おにぎりやサンドイッチ」だったりするわけです。それぞれの強みが、お客さんのニーズに合致したとき、商品が売れます。

自社の強み。意外とあいまいだったりしますが、お客さんの声を頼りに気づかされます。「おなかいっぱい食べたい」「ダイエット中だから…」「移動しながら軽く」はお客さんの話し言葉、もしくは心境。発する人は学生、OL、サラリーマンがイメージできます。強み、ニーズ、ターゲットが美しい流れを描いたとき、強力な戦略として機能しはじめます。

お客さんのニーズを無視して、俺たちの強みはこれ!勝手に決めつけてピントが外れてしまうことはけっこう起こります。学生であってもボディビル部に所属していればラーメン屋は回避されて、定食屋が選ばれるかもしれません。ニーズは同じ人でも時間や日によっても変わりえますし、強みが弱みになる場合もありますよね。

素材を安く仕入れることができるから売値を下げられるし、バラスのいい食事が提供できるのも、栄養士の資格をもつ調理人がいるからこそ。携帯食というコスト高な商品を、できるだけ安く棚に並べられるのも、コンビニの規模の経済がなせる業です。強みを生み出す「独自資源(アセット)」のおかげ。アセットが強みという差別化を実現しています。

アセットは、競合相手が自社の強みをマネできない理由。某バーガーショップが安い商品を販売できるのは、米国やオーストラリアといった広大な敷地で牛を飼育したり、大量に速く安全に素材を運搬する物流システムがあればこそです。競合相手の価格競争をものともせず躍進を遂げました(現在は、安売りから脱却していますが)

つまり、アセット次第では「戦わずして勝つ」ことが可能ということ。がっぷり四つで正攻法で責めるのではなく、猫ダマしや張り手、八艘(はっそう)飛びなんて決まり手もあります。小兵力士が、奇襲作戦で巨大な相手を見事に倒すことができるのは、「素早さ」という強みと、「小さい」という独自資源によるもの。大きい力士にはマネできません。

兵とは軌道なり。
戦争とは、敵を欺くこと。きれいごとでは勝てません。
算多きは勝ち、算少なきは勝たず。
戦争は勝つ計算が立つまでやってはいけません。
是の故に百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。
戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。

戦わないで敵に勝つのが最高の勝ち方。
真っ向勝負が正義ではありません。
故に兵頓(やぶ)れずして、
利全くすべし。此れ謀攻の法なり。

戦争は知恵と謀略で行う。
彼を知り己を知れば、
百戦して殆(あや)うからず。

敵を知り、己を知れば必ず勝つ。

孫子の兵法の出版は、紀元前5世紀。太古の昔から、戦いに勝つ要諦が受け継がれてきました。そもそも戦う必要はない。戦うのは最終手段。戦わなければいけないときは、徹底的に調べ、相手と己を知って備えるべき。

マーケティング会議ではいつも、「いかにして戦いを避けるか」「いかにして楽に戦うか」を念頭に発言したり、資料を提出したりしています。真面目に正々堂々と。そんな考えが高潔なのはよくわかりますが、生きるか死ぬかの戦いできれいごとはあまり役に立ちません。勝てば官軍です。できるだけがんばらないで勝てる方法を、がんばって考える。これが真理だと思います。

久保大輔




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