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中東諸国でのインフォーマルな首脳会合の活発化

1月18日、UAEのムハンマド大統領の招待にて、オマーンのハイサム国王、バーレーンのハマド国王、カタールのタミーム首長、ヨルダンのアブドゥッラー国王、エジプトのシーシー大統領による首脳会合が開催された。会合の議題は「地域の繁栄と安定」であり、国際情勢や地域情勢、兄弟国間の協力の強化について協議されたと発表されている

同会合は公式の枠組みに基づくものではなく、会合開催の事前の通知はなかった。各国首脳も短期の滞在に留まった模様であり、リラックスした雰囲気の中、首脳同士の話し合いが行われた模様である(上写真)。

会合で協議された内容の詳細は不明であるが、以下の点は注目に値する。

まず、カタールのタミーム首長が、2017年6月の断交以来、初めてUAEを訪問した。両国は2021年1月のウラー宣言を持って国交を回復しており、2022年12月にムハンマド大統領がカタールを初訪問していた。今回のタミーム首長のUAE訪問によって、両国関係が正常化に向かっていることが改めて確認された。

また、これまで国際的な首脳会合への参加を見合わせてきたオマーンのハイサム国王が今回の会合に出席したことは、一つのサプライズであった。オマーンでは前国王の時代から国際的な首脳会合にも代理を派遣することが慣習化しており、ハイサム国王もGCCやアラブ連盟の首脳会合への出席を見合わせていた。このようなインフォーマルな会合の場にフットワーク軽く参加することは過去に例がなく、オマーン外交の新たなかたちとして期待ができる。

一方、上記と対照的に、サウジアラビアとクウェートは今回も不在だった。サウジもクウェートも国家元首が健康不安を抱えており元から出席の可能性は無かったが、実権を握る皇太子を含め、両国は昨年から断続的に発生しているマルチのインフォーマルな首脳会合のいずれにも出席していない(下表参照)。

出所:筆者作成

中東諸国はトップダウンで物事が決まる国が多く、ハイレベル会合は外交の場として極めて重要となる。このようなインフォーマルな首脳会合は、形骸化していると指摘されることも多いアラブ連盟首脳会合やGCC首脳会合と比べて、少数の首脳間での意思疎通の場として重宝されていくだろう。

これらのインフォーマルな会議外交を主導しているのはUAEとエジプトであり、両国の外交プレゼンスは以前にも増して高まっている。更にネゲブ・フォーラムやI2U2といった新たな枠組みが域内で立ち上がる中、これらの新常態に付いていけない国が存在感を弱めていく可能性もある。

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