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世界はつながっているー 弱い立場に追いやられている人たちほど、社会や経済の仕組みを知り、仲間と手を合わせて立ち向かい、そのシステムを越えるものをつくる必要がある ①

「貧困に陥った人たちや社会で弱い立場にいる人たちはその人のせい」或いは「お金持ちでいわゆる大企業で働いている人は、その人が優秀で頑張ったから」というネオリベラルのイデオロギーの嘘を見抜く + その仕組の背景を知る→ そのシステムを壊し、より良いものをみんなでデザインすることができる

最近、ギリシャ人経済学者でアクティヴィストであるYanis Varoufakis(ヤニス・ヴァルファキス)さんのドキュメンタリー映画、「In The Eye Of The Storm」が公開されました。日本語訳は現在のところないようですが、ヤニスさんも英語が流暢ではありますが、母国語でないので、逆に英語が母国語でない人にも聞き取りやすいと思います。
どんなに翻訳機能が向上しても、ちょっとしたジョークだったり、日本語にはない概念が英語或いは西洋文化にはたくさんあるため、英語(オリジナル言語)で理解するのが一番だと思います。

ヤニスさんは、この中で、Marquis de Condorcet(コンドルセ侯ー18世紀の数学者・哲学者・政治家)のことばを引用していました。

権力と抑圧の秘密は、抑圧者のよろい・甲冑の中にあるのではなく、抑圧された人々の心の中にある

どんなに強圧な政権や政府であっても、武力や暴力を通して、人々を常に力づくで抑圧・強制できるわけではありません。

この少数の人々で成り立っている政権や政府が、圧倒的に大多数の人々を抑圧し搾取し続けられるシステムを保ち続けられるのかというと、理由は以下です。

(大多数の人々が)権威にconsent(コンセント/同意・承諾・承認)することが、その権威が(長期間に渡って)続くことを可能にしている。

では、この同意を取り付けるために、何が起こっているのでしょう?

これらの政権や政府は、ideology(アイデオロジー/イデオロギー・信念や価値観の形態)を狡猾に利用しています。

イデオロギーは、現在の(経済等の基幹となる)システムは、大多数の人々を搾取し、抑圧し、社会のごく少数の人々のためだけに役立つためにあるのにも関わらず、大多数の人々がこのシステムは、自然な仕組なのだと思い込ませることに使われています。

自然だと思い込まされているので、その仕組みの存在にすら疑問をもたない可能性もあります。

当たり前と思っていることほど、批判的な目や興味をもってその真実を探ることは大切です。
その際に、さまざまな専門家、歴史家等の意見を参考にしながらも、自分で元になる情報を調べ、かつそれらの専門家の背景も調べ、彼ら/彼女らが、大企業(例/石油企業や製薬企業等)から資金を受けていて、スポンサーのために偏ったリサーチ等を行っていないかを確かめることが必要です。
日本語だと偏った情報や、誤った翻訳も多いので、英語で読むことも大切です。
日本語に訳されている記事を読むと、内容がねじれていて、ひどいときは、著者の意図と正反対になっているものもかなり見ました。
記事を書いた人の他の著書や、インタビューや対談のヴィデオ等をいくつか観るのも、きちんと理解することにつながります。
これらの人々が、なぜ、自分のリサーチや意見を発表しているのかという意図をしっかりと理解する必要があります。
誰かの意見をそのまま鵜呑みにするのは、危険です。
特に、よく知られている人や権威があるとされている人の意見こそ、注意を払う必要があります。
面倒に思うかもしれませんが、慣れれば筋肉トレーニングのように自分の筋肉となり、習慣となります。
あくまでも、自分の意見を、自分で形作ることが大切です。
同じ情報に接しても、自分の知識や経験等が違えば、どれだけその情報の深みや広さをつかめるか、というところに違いも生じるでしょう。
これは、社会で弱い立場に追いやれている人々(子供、若い人々、女性、移民、マジョリティーとは違う心身的な特徴をもっている人々等)にこそ、必要なスキルです。
また、弱い立場に追いやられていることで、たまたま強い立場に生まれおちてほかの見方を想像しにくい人々より、もっと深く優しい視点で多角的にものごとを見られる可能性もあります。

近年は、ヨーロッパでさえ聞くようになった、「貧困に陥ったひとは、その人のせい」「お金持ちでいわゆる大企業で働いている人は、その人が優秀で頑張ったから」というプロパガンダは、Neoliberarlism(ネオリベラリズム)のイデオロギーからきています。
ヤヌスさんだけでなく、ジャーナリストのGeorge Monbiot(ジョージ・モンビオット)さん、アカデミックでもあるNaomi Klien (ネオミ・クライン)さんも、ネオリベラリズムは、大多数の人々を搾取し、世界中で少数の人々だけ(何もしなくても)富を蓄積する詐欺のような仕組であることを看破しています。
この仕組は、大多数の人々を貧しくし、環境破壊を引き起こし、多くの人々にとって社会を悪くする(=プロフィットが食品安全よりも優先されたり、住む場所や水等の誰にでも必要なものがモノポリー企業に握られて、人々の生きる安全が脅かされる等)ものであることは、論理からも確実で、かつ2008年の経済危機からも証明されているにも関わらず、ゾンビのように生き残っています。

極端な例だと、イギリスで一番在任期間の短かったLizz Truss(リズ・トラス)元首相は、このネオリベラリズムの信奉者で、このイデオロギーを経済政策に取り入れたところ、あっという間に経済危機が起こり、結局は、50日の在任機関で辞職に追い込まれました。
この経済政策は発表した時点で大騒ぎになり、数日で撤回となったものの、その数日で、家のローン等が30パーセント以上あがった人々もいて、普通の人々の生活に大きな影を落としました。
それでも、リズ元首相は、いまだに、自分の経済政策は素晴らしいもので、それを証明する十分な時間が与えられなかったことが問題だとし、いまだに、多くのシンク・タンクからも多大な資金を得て、ネオリベラリズムを広める政治活動を続けています。
ちなみに、あるタブロイド紙で、リズ首相の在任期間はそう長くないと見込んで、レタス(←普通は食品保存期間が短い)とリズ首相の在任期間がどちらか長いかをライブ中継し(レタスにおかっぱのウィッグをつけて、リズ首相に似ていた。。)、リズ首相は、レタスがしおれるより先に退任となったことで、レタスよりもShelf life(シェルフ・ライフ/保存期間)の短かった首相、また在任期間が短すぎて、首相官邸に届くはずだったファニチャーをキャンセルせざるを得なくなったりと、冗談のようなエピソードもたくさんありました。
でも、上記のように、この仕組がゾンビのように生き残っているのは、ネオリベラリズムを続けて、世界の人々や資源を搾取し続けたいオリガーク(例/アメリカの石油企等を大きく保持するコークさん等のモノポリー状態にしている人々)たちが、数十年にわたって多数の国々にシンク・タンクを設立・資金供給し、この仕組を巧みにさまざまな国々に行きわたらせていることにあります。

ヤニスさんも言っていますが、普通に考えれば、「よく働く人が富を得る」のであれば、多くのアフリカ大陸の女性たち(働き者で知恵を最大限に使うことで知られている人々)は、全員億万長者になっているはずですが、そうなってはいません
日本であれば、子供の面倒をほぼ一人で見ながら、いくつも仕事をかけもちして働いているシングル・マザーの人々は、誰よりもお金持ちになっているはずですが、そうはなってはいません。
なぜなら、このネオリベラリズムの仕組は、世界中のほとんどの人々を搾取される層(労働者階級だけで、実際に富やものを生み出しているにも関わらず、その恩恵はほとんど受けない)へと追い込み、一部の人々のみがそれを搾取しているからです。

もちろん、この仕組がすぐに変わるわけではなく、弱い立場にいれば、どうにか食べていくだけで精一杯でほかのことを考える余裕がない、ということもあると思いますが、仕組をよく理解すれば、弱い立場や貧しい立場の人々には非はなく、この歪んだシステムをみんなで力を合わせ壊し、もっと社会みんな、特に立場が弱くなりがちな人々にとってよい仕組(=誰でも突然弱い立場に追い込まれこともあるー人口構成が変わりマジョリティーからマイノリティーとなったり、事故や病気で心身の健康を損ない今までと同じ働きや生活ができなくなる等)の社会を作れば、誰もが安心して暮らせ、誰もが得意なことを伸ばして社会へ貢献し、誰もがのびのびと生きていくことが可能となります。

次回は、ネオリベラリズムにも関わる、資本主義の歴史・仕組と、デモクラシーの関係性について。真の合意についても、別の回で。

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