世界はつながっているー 弱い立場に追いやられている人たちほど、社会や経済の仕組みを知り、仲間と手を合わせて立ち向かい、そのシステムを越えるものをつくる必要がある ②
資本主義はどこから始まったのか?ー 資本主義の起源からして、Boom (ブーム/一時的に活気づく)→Bust (バスト/破綻する)→ Quit(クイット/やめる・立ち退く)
...その後には、公害や環境破壊を残す。それを引き起こした資本家や企業は全く責任を取らない。被害を受け、その影響を受け続けるのは、弱い立場にある普通の人々。
イギリス人ジャーナリストで環境活動家でもあるGeorge Monbiot(ジョージ・モンビオット)さんは、最新の著作「The Invisible Doctrine」で、資本主義と、植民地主義・産業革命・帝国主義・奴隷貿易が切っても切り離せないことを分かりやすく解説しています。
ちなみに、資本主義は、定義が一つではないものの、大まかには、封建制度(王や一部の貴族がすべての土地や富を所有し、政治的にも経済的にも一極管理)のあとに現れた経済システム・経済体制で、生産手段を資本として私有する資本家(例/家具をつくる工場や機材を所有している資本家)が、労働力以外に何ももっていない人々(封建制度のときには小作人として農業をやっていた人々の多くは、産業革命とともに農地から追い出され、労働力を売ることでしか生き残れなくなった)から労働力を買い、商品・製品を生産して売り、利益を得る仕組です。
その利益は、新たに商品・製品を生み出すことに使われたり(新しい機器の導入等)、不測事態に備えて取り分けておく等、さまざまなのですが、現在はこの利益の不当な蓄積・集積が社会のためにならない(社会にも労働者にも還元されない)形になっていることも指摘されています。
資本家の目的は、利益を個人的に追い求めることで、売り買いは、市場メカニズムによって運営されます。
資本主義にもさまざまな形態があり、中国の現在の経済モデルは、「State Capitalism(国家の行う資本主義)」だと考えられています。
今回は、この「資本」がそもそもどこからやってきたのか、というお話しなので、現在の資本主義に起こっていることは、また別の回で説明します。
ネオ・リベラリズムは、経済モデル・イデオロギーで、自由市場(ここでいう「自由」ということばの意味は、ネオリベラリズムのコンテクストでは、資本家たちが、一般の市民や消費者の健康や安全を守る規則や環境を守る規則、税金を払う義務からの自由ということで、一般的な「自由」の概念とは全く違う)と、資本主義のなかでも、経済・個人や社会への政府の介入を最低限にするという形態とを強調したものだと考えられています。
これも、解釈は一つではありません。
また、別の回で詳しい説明をします。
ただ、封建時代も資本主義も、実際に働いて社会に価値があるものを生み出している労働者が搾取され、抑圧されているのは明らかだと思います。
封建時代に、実際にその土地で長時間働き、誰にとっても必要な作物を作っていたのは農民たちですが、彼らの作物の多くは、たまたま、特定の階級に生まれただけで、社会に価値のあるものを何もうみだしていない領主や貴族にほとんどを奪われていました。
封建時代の、領主が農夫たちから作物を奪い取るのは「搾取・盗みである」ということは目に見えて誰にとっても分かりやすいものの、資本主義となると、それが見えにくくなります。
でも、仕組は同じです。
資本をもたない労働者たちには、真の選択はありません。
資本家(工場主等)にパン数斤のために一日20時間働くという契約だったとき、どこに行ってもその条件しか得られないとすると、労働者には、それを受け入れるしかありません。
なぜなら、労働者は何も資本を持っていないからです。
資本をもっていないのは、労働者階級のせいではありません。
数百年にわたる仕組で、ある階級に生まれた人々にのみ富が蓄積されるようにできていいるからです。
資本家は、努力をして資本を手に入れたのではなく、元領主や貴族のように資本をどこからか奪い取った人々の子孫であっただけです。
多くの資本は、暴力や大量殺人で奪い取った植民地の土地や鉱物という資源の搾取、原住民の奴隷化という形での労働力の搾取等から生み出されています。
資本主義は、現在のポルトガル自治州である、ポルトガルとアフリカ大陸の間にある小さな島、Madeira(マデイラ)から始まったとみられています。
大航海時代(15世紀中ごろ~)の先駆けに、自国の資源が限られていた西ヨーロッパ諸国は、世界中の資源を奪うためにあちこちに人々を派遣します。
ポルトガルが、アフリカ大陸あたりを狙っているときに、偶然、このマデイラという島を発見し、当時は現地人がいない孤島だったので、ポルトガル領地とし、黒死病で多くを失ったポルトガル本国の農夫や漁師たちもよりよい生活を求めてこの島に移住しました。
穀類を育ててはいたものの、結局それでは立ちいかなくなり、ポルトガル本国にも大きな利益をもたらす砂糖の生産を始めます。
砂糖の生産には、火を使う工程が不可欠ですが、そのために多くの木を伐採することが必要でした。
また、生産規模が大きくなると、現地の人だけでは足らず、ほかの地域(アフリカ大陸)から人々をさらってきて、奴隷としてただ働きをさせます。これが、記録上では、奴隷貿易の始まりだったようです。
でも、あまりに早いペースで木を伐採したために、この木を得るために、どんどん遠くまで、より多くの奴隷を行かせる必要があり、砂糖を作る工程は遅くなり、ブラジルやカリビアンで行っていた砂糖生産との競争性が著しくさがり、ここで砂糖を作るプロフィットを考えると意味を成さなくなりました。
この後に残ったのは、木は刈り取られ、環境破壊された島です。
奴隷たちは、ほかのもっと利益をもたらす地域(ブラジルやカリビアン地域)へと強制的に連れていかれます。
長い間の伝承としては、ある日森で自然火災が起こり、この島の木は一本残らず焼き払われた、だそうですが、実際は、資本主義によって人為的な自然破壊が起こりました。
このパターンは、多くの西ヨーロッパの他の国々が真似をしました。
マデイラはたまたま誰も住んでいない孤島だったものの、ほかのアフリカ大陸やアジア地域に、西ヨーロッパ諸国が、圧倒的な武力をもって侵入し、現地の人々の土地や作物・鉱物、家や水といったすべての資源を奪い、現地の人々を大量に殺したり、奴隷にしたりしました。
イギリスのように、インドを植民地とし、そのインドの人々を、他のアフリカ地域の植民地へ、ミドル・マネージメントとして送り込んだという少し込み入ったパターンもあります。
これは、小さなイギリスの国と人口に対して、非常に大きなアフリカ大陸やアジア大陸の植民地を自分たちだけで管理できなかったからです。
ここでは、Divide and Rule(ディヴァイド・アンド・ルール/植民地の現地人の人々を分離させ(対立させて)統治する)という狡猾なやり方で、圧倒的に大多数の原住民の人々の抵抗を抑える、という役目も果たしていました。
イギリスだけでなく、フランスやドイツ、ポルトガルも、植民地国の原住民の抵抗があったときには、現在では虐殺や大量殺人にあたることを大規模に何度も行っていたことは、歴史でも明らかになっています。
これらの他の人々から力づくで奪った「資本(=キャピタル)」は、西ヨーロッパの自国のIndustrial Revolution(インダストリアル・レヴォリューション/産業革命)へと投入し、自国を豊かにする一方、西ヨーロッパの小さな国々よって植民地化された地球上の約8割以上の国々の人々は搾取され、貧しくさせました。
さまざまな計算があるものの、現在のイギリスがもっている圧倒的に大きい富は、アイルランド、アメリカ、アフリカ、インド、オーストラリアといった地球上の多くを植民地にしてそこから資源を奪ったことにより築き上げた富で、現在の貨幣価値で考えると、7千兆円程度になるという試算もあります。
この植民地化には、もう一つの側面があり、産業革命で製品をつくる効率は格段にあがったものの、自国の労働者を搾取し続け、彼らの購買能力が追いつかず、余剰生産した製品を売りつける(たとえその地域の人々が望まなくても)ための市場を常に探していた(← 資本主義は、常にGrow(育つ・拡大する)しないと成り立たないから)という面もあります。
例えば、産業革命時代のイギリスでは、植民地であるインドの綿を格段に安い値段で輸入し、イギリス北部のマンチェスターで綿を織り、イギリス国内だけでは消費しきれないので、インドへ大量に売りつけ、インドでの綿織物産業を崩壊させ、人々をさらに貧しくさせたという歴史も典型的です。
植民地化にも、いくつかパターンはあります。
アフリカやインドのように西ヨーロッパ諸国が、現地の人々を奴隷化したケースもあれば、アメリカ・オーストラリア・カナダ・ニュージーランドのように、西ヨーロッパ諸国からの移民が、原住民を虐殺したり、病気をもちこんだことで原住民が多く死に、これらの西ヨーロッパ移民がその地域のマジョリティーとなり、原住民を抑圧したケースもあり、前者はColonialism(コロニアリズム/植民地主義)、後者は、Settler Colomialism(セトラー・コロニアリズム/入植植民地主義)と呼ばれています。
日本でいえば、アイヌ民族への抑圧は、日本の主要民族・主要民族から構成された中央政府からのセトラー・コロニアリズムの典型的な例だといえるでしょう。
パレスチナ人が数世紀にわたって住んでいた歴史的パレスチナ地域に、ヨーロッパで迫害されたユダヤ人がやってきて、原住民(パレスチナ人)の土地や家屋を奪い、狭い地域に閉じ込めて支配しているのも、セトラー・コロニアリズムと呼ばれています。
帝国主義で植民地主義を拡大したのは、植民地化された地域の人口や面積と比べると、本当に点にしか見えないぐらいに小さい人口や面積の「西ヨーロッパ諸国+日本」のみなのは、興味深いことでもあります。
この資本主義の始まりをみていて、現在にもつながるパターンが見えないでしょうか?
地球温暖化についても、化石燃料を燃やすことから引き起こされることも、その結果も数十年前に分かっていたにも関わらず、モノポリー化している大企業のプロフィットのために、資源を搾取し続け、地球を破壊し続けています。
化石燃料の最後を搾り取ろうとしている現在では、深海地域での鉱物や石油の開拓をしていたり、宇宙への開拓等、とにかくあるものは破壊し続け、破壊し尽くした後は、次のフロンティア―(未開拓分野)へとGrowth(グロゥス/成長・発展)やプロフィットを求めて飛びつく、というのは、15世紀のマデイラでのパターンから変わっていません。
その後に残るのは、自然破壊・公害・地球温暖化といった、地球上の大部分の人々に多大な悪い影響を与えるものです。
モノポリー化している大企業は、政治にも深く影響を与えていて、自然破壊や公害の責任は取らなくていいよう、政策を変えるようプレッシャーをかけ続け、成功しています。
実際に人々や社会のためになるものを生み出しているわけではないファイナンス業界が極端に大きくなり、普通の人々が預けているお金を、普通の人々のことを考えず、ギャンブラーのように危険な行動で扱って失敗したり、ファイナンスを複雑にして未来のお金を使って(=借金)で経済をまわすようなことを行って経済危機を何度も引き起こしても、ファイナンス業界の企業やそれを引き起こしたトップクラスの人々は、全く責任も取りません。
ファイナンス業界が破綻しそうになると、政府の決定は、その危機を引き起こした人々を国民の税金で救い、何もこれに寄与もしていなければ恩恵も受けていない普通の人々(=多くは税金を払っている人々)が職を失ったり、家を失ったりするのを助けません。
ファイナンス業界の政府に与える影響が非常に強いことと、資本主義、特にネオリベラリズムがこの現象と深く結びついています。
これについては、また別の回で説明します。
ジョージさんも、多くのジャーナリストや経済の専門家の中にも、この「資本主義」というシステムの限界を見ていて、これを壊して、別のシステムをつくる必要があるとしています。
ジョージさんも、多くの専門家も、これは可能であるとみています。
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