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プラス思考を止めると上手くいく

From 安永周平

先日、名著「アイデアのちから」を読み直していたら、面白いことが書いてありました。しかしまぁ、名著というのは読む度に自分に刺さる部分が変わるものですね。そして、前回読んだ時に大事だと思って線を引いたのに、改めて読むと全然できていなかったり。それに気付いて、ちょっと自己嫌悪に陥ったり…(汗)。まぁそんな私の失敗談はさておき、その面白い話とやらを紹介します。

実験:成功した自分をイメージする効果は?


巷にあふれる自己啓発本や心理学の本の多くは「成功した自分をイメージしなさい」なんて勧めているものが多いと思います。「未来から逆算して考えろ」なんて話もありますよね。こうした話は、誰しも1度くらいは聞いたことがあるでしょう。ところがどっこい、多くの人は成功した自分をイメージしても、思うような成功を掴んだり自分を変えたりすることができていません。よくある話ですが、事実としてポジティブ思考だけでうまくいく人は極僅かです。

それで、この原因を裏付ける面白い実験があります。カリフォルニア大学ロサンゼル校の学生グループに生活上の悩みを尋ねました。ここでいう悩みとは、学校の勉強や人間関係など”ストレスのもと”になっているけど、解決可能な問題のことです。学生たちは「実験の目的は悩みの解決をサポートすることだ」と言われ、問題解決に関する簡単な指導を受けました。たとえばこんな指導です。

「その悩みについて考え、情報を集め、自分にできることを検討し、措置を講じることが大切です。悩みを解決すればストレスが減り、対処できた自分に満足し、その体験を通じて成長できます。」

さて、このように言われた学生は、このあと3つのグループに分けられました。

グループ①:対照グループ


まず1つ目のグループは「対照グループ」です。理系出身の方は”対照実験”という言葉に馴染み深いかと思いますが、要は別のグループで行ったプラスαの要素が効果的かどうかを検討するために、比較用として敢えて何も手を加えない実験データを取るためのものです。このグループの学生は、上記の指導を受けただけで帰宅し、1週間後に再び来るように言われました。

グループ②:事象シミュレーショングループ


次に「事象シミュレーショングループ」です。この学生たちは実験室に残されて、悩みが生まれた経緯を頭の中で再現するように言われました。たとえばこんな具合です。

「問題がどのようにして生じたかを思い起こしてください。最初に起きたことを詳細に回想し、問題の発端を思い起こすのです……起きたことを順を追って思い出してください。自分のとった行動を思い起こしてください。自分の言ったこと、したことを思い出すのです。そのときの状況、周りにいた人々、自分のいた場所も思い起こしてください。」

事象シミュレーショングループの学生は、自分の悩みにつながった出来事を順番にたどらなくてはいけませんでした。これは、プログラマーがプログラムのミスを1から系統立てて修正していくように、因果関係の連鎖を見直すことが解決法の発見に役立つという前提に基づいています。

グループ③:結果シミュレーショングループ


最後は「結果シミュレーショングループ」で、悩みが理想的な結果に終わる様子を頭の中で想像するように言われました。こんな具合です。

「問題が解決に向かい、ストレスから解放されるところを想像してください……その時の開放感を想像しましょう。問題に対処したことで得られる満足感を思い描きましょう。悩みをうまく解決できた自分に自信を抱くところを思い描いてください。」

結果のシミュレーションでは、将来の理想的な結果だけを取り上げました。悩みを乗り越えたら、どうなるかということです。

Q: 最も悩みを解消できたグループは?


②と③のグループは、シミュレーションを終えてから帰宅しました。どちらのグループも、毎日5分ずつシミュレーションを繰り返し、1週間後にまた来るように言われました。ここで、あなたに問題です。問題解決において、どのグループが1番上手くいったと思いますか?

正解は②の「事象シミュレーショングループ」、つまり問題の経緯を再現したグループだったのです。彼らはほぼ全ての面で、①と③のグループをリードしていました。要は、将来の「成功した自分」をイメージするより、過去の出来事を再現する方が遥かに役立ったのです。しかも、実験直後から大きな差が出ました。②のグループの学生は、帰宅した夜の段階で既に他のグループよりも前向きな気分になっていたのです。

1週間後、その効果は続いていたか?


そして1週間後、実験室を再訪した事象シミュレーショングループの学生は、ますます優位に立っていました。そう、三日坊主で終わることもなく、問題解決のために具体的な行動を取ったり、他人にアドバイスやサポートを求めた学生の割合が他のグループより高く、何かを学び成長したとする割合も多かったのです。実際、こうしたシミュレーションをすると感情を処理しやすくなり、恐怖症を克服するための療法としても用いられています。

頭の中でのシミュレーションは、問題解決に役立ちます。日常的なプランニングにおいても、頭の中でシミュレーションを行えば、つい見落としがちな点に気づきやすくなります。営業先を訪問する自分を想像すれば、その道中にある銀行にも立ち寄れると気づくのです。過去の失敗を頭の中で繰り返すのは、一見ネガティブなように思えますが…実は問題解決においてはとても有効なプロセスです。

だとしたら、「今日から自分は変わる!」と言って理想の未来を想像するよりも、自分の過去の行動を今一度振り返ってみることで、頭の中でモヤモヤとしている問題を片付けることができるかもしれませんよ。

追伸:
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