見出し画像

愚かな経費削減が利益を減らす

From 安永周平

経営者であれば誰もが無駄なコストは削減したいと思うもの。キレイごとを抜きにして会社の利益を増やすには、売上を伸ばすか経費を減らすしかないのだから。売上を伸ばすのはもちろんだが、これは相手がいることだ。目先の売上を伸ばしたくとも、自分たちの都合をお客様に押し付けては上手くいかない。会社としての姿勢も問われてしまう。一方で経費の削減は自分たちの努力次第で完結する。だから”とりあえず”で決めてしまうこともあるだろう。

「経費削減額 < かかった人件費」という愚策


ただ、経費削減の努力にも労力と時間がかかっていることを忘れてはいけない。経費削減のためにかかった時間的なコストが、経費削減の効果を上回っていては本末転倒だ。たとえば社長が「コピー用紙は裏紙を使え」「メモ用紙も裏紙を切って使え」「席を10分以上離れる時はPCをシャットダウンしろ」「ポストイットも半分に切って使え」なんて命令すれば、結構な時間がかかる割に大した経費削減にならない。おそらくこの作業にかかる人件費の方が高いだろう。

こうした作業は「意味のない経費削減努力」に他ならないため、むしろ生産性は下がり、社員のやる気もなくなる。塵も積もれば山となる…と言うが、その経費削減努力は本当に積もったら山(トータルで利益を増やす金額)になるのかどうかを見極めなければいけない。先に挙げたような経費削減策しか思いつかないなら「やっぱり売上を伸ばす方がはやい」という結論になるかもしれない。その選択も含めて、どこにテコ入れすれば利益が増えるのか?を考える必要がある。

「パレートの法則」は戦略で活きる


こんな時に思い出したいのはパレートの法則(2:8の法則)だ。ビジネスの世界では有名な法則だが、たとえば「売上の80%は20%の顧客から上がっている」「経費の80%は20%の社員が使っている」という具合だ。つまり、わずか20%の要因が全体の80%に影響を与えているというもの。あなたの会社でも、20%の顧客からの売上が全体の80%を占めている…といったことはないだろうか? おそらくそれに近しい状況は起こっているはずで、そのデータは会社の戦略を決める上でとても重要だ。

恥ずかしながら、私は以前この法則を知ってはいたものの、どう使えばいいかを知らなかった。「20:80…あぁ確かに。世の中ってそういうもんだよね」くらいで知ってるだけで満足していた。バカ野郎だった。これほど実務に使える法則もあまりないのに。特に限られたリソースをどこに投下するかの「戦略」を決める際に、こんなに大事な法則はない。

顧客別:売上ランキングを見る


たとえば、新しいサービスを案内する際にお客様に順番に電話をかけていくとしよう。顧客リストを見て…

A:そのまま上から順番に電話をかけていく
B:購入金額の大きい順にデータを並べ替え、上位から順にかけていく

どっちが早く成果が上がるかは明らかだ。上位20%の顧客から80%の売上が生まれるなら、その上位20%の顧客から始めるのは当然だ。Excelで購入金額の大きい順に顧客を並べ替えれば、電話をかける優先順位が明らかになる。次にそれぞれの顧客が売上の「全体構成比」で何%を占めているかを出してみる。さらには「上位3社までで全体の50%を占めている」のように累計構成比を出すのも有効だ。もしそうなら、その上位3社は会社にとって極めて重要な顧客だろう。

重要度を分類するために、顧客をいくつかのグループに分けるのもいい。たとえば、累計構成比80%までの顧客をAグループ、それ以降の顧客をBグループとして分類する。そして、それぞれの「件数」と「合計金額」を出す。これもExcelの関数を使えばすぐにできる。その結果、Aグループは件数で全体の26%だが売りげに締める構成比は80%だとしよう。一方でBのグループは、件数では74%もあるが売上構成比では20%に過ぎないとわかる。

重要顧客がデータで明らかになる


こうなると、会社をあげて取るべき行動は明確だ。Aグループの顧客を死守する必要がある。Bグループの顧客を無視していいわけではないが、優先順位としてAグループを重視するのが効果的な戦略だ。新しいサービス案内なら、Aグループ限定で案内した優遇キャンペーンの情報を、Bグループにも「年間取引高が◯円以上のお客様にはこうした形でご案内させていただいております」と伝えることで、さらなる売上アップに繋がるかもしれない。

こうした戦略をつくるための分析は、実はExcelだけでできてしまう。DXだのAIだの騒がれて久しい世の中だが、中小企業にとってはそこに多額の予算をつぎ込むよりもExcelを活用するだけで望む効果が得られてしまうケースも多い。最近、私もそれを痛感しているのでExcelやGoogleスプレッドシートの機能を色々と活用している。恥ずかしながら少し前まで知らなかった「ピボットテーブル」などの機能を使えば、社内で戦略立案に効果的なデータが取れることが増えてきた。

必ず使うExcelをもっと活用しよう


会社では必ずといっていいほどExcelを使ってる。そしてWEB広告なんかではよく「Excelだけでは限界」みたいにディスられてる。でも、Excelを効果的に使えている会社って少ないと思う。もちろん限界はあるけど…たぶん活用の仕方を知れば考え方変わると思う。それを知らずに、いいように乗せられてシステム構築に膨大なお金突っ込む(さらに作ったのに使えない…)のはホント馬鹿らしい。意外と盲点のExcel、慣れて触れるようになってくると業務改善進む。ぜひこの機会に見直してみるのはどうだろう?

追伸:
ちなみに、単にExcelに詳しくなるだけじゃダメで「成果につながるExcel仕事」が必要。私はこの本を読んでExcelへの認識が変わった。DXという言葉に踊らされる前に、まずコレ読むといいんじゃないかな

詳細はコチラ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?