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鬼滅好きな娘にジョジョを激推しした話

「『人間賛歌は勇気の賛歌ッ!!』ってジョジョでも言うてるしな。」
っちゅう話を小6の娘に言うたんですよ。

彼女の答えは
「えー、ジョジョ読んでないからわからん…」

そうだよね。でもお父さん、ジョジョについては知っておいた方がいいと思うんです。
なのでここから、ジャンプバトル漫画史から見たジョジョの意義を交えつつ解説しました…というのがこのnoteです。
この時点で大半の女性読者を失った気がしますが、できれば女性にこそ読み続けてほしい。
そういう思いを込めて書きますね。

・・・・・・・

父「ジョジョはもう40年近く連載継続してる漫画だから説明すると長くなるけど、できるだけ簡潔に説明するね。」

娘「う、うん」

父「ジョジョは今、第8部まで連載していて、それぞれ主人公も時代も違う。でも通底するテーマは一つなんだ。
それが、人間賛歌、勇気の讃歌という言葉だ。人間は素晴らしいものであり、その素晴らしさの源泉は勇気にあるということ。それが物語に込められてる。

物語の起点となる第一部の舞台は19世紀イギリス。
蒸気機関車はあるけど自動車はまだなくて馬車が走ってる。
鬼滅の刃の舞台の大正時代をイメージしたらいいよ。
そんな時代にあるイギリス貴族の家に貧民出身の少年が養子として引き取られることになる。この少年がィオといって悪の側の主人公。この貴族の実の息子が正義の側の主人公、ジョナサン・ジョースター。略してジョジョって呼ばれてるんだ。
この2人の戦いー善と悪との果てしないせめぎ合いが描かれていく。

物語の途中でディオは未知の古代文明のテクノロジーで、人の命を奪って自らのパワーに変えることができるようになる。でもその代償として日の光のもとでは生きられなくなるんだ。
一方でジョジョは、誰にでもできて誰でもがやっていること、つまり呼吸のトレーニングによって自分自身を強くし、ディオや彼が放つ刺客にも打ち勝てるようになる。

ジョジョが得る力-波紋法っていうんだけど-これが呼吸をベースにしたものであることは大事なポイントだ。誰でも知らず知らずにやっていて誰もが見過ごしてることを地道にトレーニングする。そうすればあらゆる災厄や悪意に立ち向かい得る。そんな強さを人間は元々秘めてるってことが言いたいんだとお父さんは思う。」

娘「呼吸が強さの源って鬼滅の刃と同じだね。」

父「そうなんだよ。時代背景も同じ。国は違うけどね。ディオ様は吸血鬼で無惨様は鬼だけど、ほぼ同じだし、血を吸った人間を化け物に変えて手下にしてしまうのも同じ。あと、読者がディオ様をついつい『様』付けで呼んじゃうのも無惨様と同じ感じだね。」

娘「じゃあ吾峠先生はジョジョ好きなのかな?」

父「わからないけど相当影響あるんじゃないかなあ。」

娘「それで、その後どうなるの?」

父「ジョジョは自らの命を投げ打ってディオを撃退することに成功する。第二部は彼の孫が主人公なんだ。」

娘「なんて名前?」

父「ジョセフ・ジョースター。二代目ジョジョだね。彼の敵はディオが用いた古代のテクノロジーを作った超人たち。超知能と超能力を持つ神のような存在で「柱の一族」と呼ばれている。」

娘「柱!また鬼滅っぽい!」

父「柱の一族は柱の中に埋まって眠るような姿で発見されたからそう呼ばれてるだけで鬼滅で出てくる柱とはちょっとちがうけどね。
第二部はこの超知能と超戦闘力をもつ超人たちと二代目ジョジョの知恵と勇気の戦いが描かれる。人間の知恵や勇気に限界はないんだ、どれだけ障壁が高くても諦めるな、屈するな。そういうメッセージが込められているのが第二部。」

娘「めっちゃ読みたくなる!」

父「3部以降は、物語のテイストがガラッと変わる。人間の精神エネルギーが形と機能を伴って具現化した超能力ースタンドという概念が登場するから。
スタンドは人間の形をとる時もあるし、その他、様々なものや生き物の形を持って発現して、おのおの能力も異なる。
すごく速く動けたり、すごく小さくなれたり、夢の中に入り込んだり、ありとあらゆる能力がある。
これがジャンプだけでなく日本のバトル漫画史を塗り替える革命だったんだよ。」

娘「どういうこと?」

父「それまでは単純な強さくらべだったからあまり強くなると自らのパワーで地球自体を破壊してしまったりしてたんだ。これを『強さのインフレーション問題』と言ったんだ。」

娘「ドラゴンボールのスカウターで測るような感じの力の強さだけだったってこと?」

父「そうそう。それまで強さには一つの物差ししかなかったんだ。でもスタンドができてから、人というものは強いとか弱いとかはそんな単純な物差しでは測れないんだってことになった。

すごく強いと思えるスタンドでも敵との相性が悪かったりタイミングが悪かったりするとコロッと負けてしまう。
一見どんなに頼りなく見える人にもチャンスはあるし、工夫次第で活躍できる。
逆にどんなに凄い強さを持っていても慢心したり人に嫌われたりすることばかりしていると足下をすくわれてしまう
。歴史上初めて、強さのインフレーション問題を克服した漫画、それがジョジョなんだよ。」

娘「スタンドってそんなにすごい発明だったの?」

父「そうだね。スタンド以後と以前では日本漫画のバトルのスタイルが大きく変わったんだ。それ以後はワンピースの悪魔の実の能力も、ハンターハンターの念能力も、血鬼術もスタンドの影響を受けてると思う。敵の特殊な能力の解析と弱点の看破がバトルにおける勝利の決め手となり、よりスリリングな展開が可能になったんだ」

娘「バトルは好きじゃないんだけど…」

父「(しまった、そっちじゃなかったか}…ともかく、ジョジョはそこから全てのストーリーを通じて訴えているのがこういうことだとお父さんは思う。

人間は生きている限り、色々な人と出会う。中には仲間もいるし、分かり合えない人もいる。
そうした人々全てに自分の人生があり、自分の考えがある。

人間一人一人がそれぞれに一生懸命生きていれば当然衝突することもあるし、敗北感を味わって打ちのめされることもある。

でもどんなことがあっても、自ら立ち上がる勇気を無くしてはいけない。

失敗しても、その原因を探して打開しようと抗うこと、そのために知恵を絞り尽くすこと、いじけたり拗ねたりせず、誰かを責めたりもせず、自らの勇気を信じて歩みを止めないこと。

そういうことができる人は誰もがヒーローであり、自分の人生の主人公なんだ。

人間は誰もがヒーローになれる可能性をもった素晴らしい存在であり、その源は勇気なんだ、
と。」

娘「聞けば聞くほど鬼滅の煉獄さんが言いそうな言葉だね」

父「それはお父さんが煉獄さん好きなのもあると思うけどw
でもテーマは同じなんだよね。鬼滅もいいけどジョジョもいいからよかったら読んでみて!」

娘「わかった〜」

という話をした2022年です。
ジョジョの魅力、伝わりましたでしょうか。

ここからは娘には話していないことなのですが、僕はこう思うんです。

教育とは、特にこどもが小さい時に教えるべきことは、決まった答えがある問題の解き方ばかりではない…と。

もっと当たり前だけど誰も教えてくれないことがたくさんある。

例えば、
「人間は素晴らしいものなんだ」とか

「生きていれば誰かと衝突したり打ちのめされたりすることはあるものだし、人生ってそういうものなんだ」とか

「誰かと比べて自分が劣ってるように見えることがあってもそんなのは大した問題じゃないんだよ」とか

「人生はままならないものだからこそ勇気が大事なんだ」とか

「勇気にも色々な形がある。歩み続ける勇気、踏みとどまる勇気、一旦休む勇気、そのどれもが尊いんだ」とか

答えのない問いの渦の中にその身を投じていくのが人生だけど、それは楽しいことでもあるんだ

勇気と面白がる気持ちを持って歩み出せば怖がらなくてもいいんだよ

本当に伝えたいそういうことは経験の浅いこどもに言葉でいくら言っても響かないじゃないですか。
だから物語で伝えるしかないんですよね。
今はそのことに気づかなくても、その物語を心に宿して大人になれば必要な時に気づきとなって芽吹くもの。

そう考えてこの話をしてみたんですよね。

いつか娘が大きくなった時、

「お父さんの言ってたあの話ってこういうことだったのかな?」

そう思ってくれたらうれしいな。

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