見出し画像

癒しの旅

姉の手配により、母と増富ラジウム温泉に癒しの旅へ。

東京から特急列車で2時間、さらにバスで1時間の山梨県の山奥にその温泉はある。バスの乗客は私と母のみ。バスの車中からは、刈り取りシーズン真っ盛りの黄金色の段々畑が広がる。


バスを降りて、小さい橋を渡ったところにその温泉宿はある。ひっそりと静かな入り口、古めかしい大きな時計が受付の横に置いてある。受付には誰もいなかったが、呼び鈴を押すと奥から人が出てきた。チェックインをし、温泉の説明を受ける。


ラジウムとは放射線という意味だが、強力な放射線は危険でも、微量の放射線であれば体内細胞が刺激され、自然治癒力が活性化し、免疫機能が向上する。これにより、抗酸化酸素が徐々に発生して活性酸素を除去し、がん予防など病気に対する強い身体づくりの能力を高めてくれる。これを放射線ホルミシス効果(ラドン効果)という。


またラジウム温泉は、吸うことによっても血流とともに全身に運ばれ、細胞に刺激を与える。ここには、ラジウム蒸気吸入室もあり、温泉を飲む小さなコップも用意してある。


早速、ラジウム温泉のお風呂に向かう。浴室には、ラジウム浴槽(約30℃)と上がり湯の浴槽(約41℃)があり、この温度差約10℃の浴槽に交互に入ることで、血管の収縮と拡張が繰り返され、新陳代謝を高めることができる。


30℃のラジウム浴槽は体温よりもずっと低いので、10分入ることを勧められるが、身体が冷えてしまい耐えられない。また、私は体温を下げることが、癌の増殖に繋がることが気になり、頻繁に上がり湯と交互で入ったが、他の人は病気を治したい一心で、ラジウム浴槽で静かにひたすらじっとしていた。


なぜ、ラジウム泉がぬる湯かというと、地下水が上昇する際に、花崗岩層でラジウムと融合し、地上に出たのがラジウム泉で、そのラジウムから放出されたのがラドンで、ラドンは地下水の温度が低いほど容易に溶け込むことできるためだ。


温泉の後は、食堂で夕食だ。夕食は、動物性たんぱく質を控えた、地元の無農薬野菜中心とした食事だった。普通の温泉旅館とは違って、お酒を飲んでる人など一人もいないし、楽しそうな会話をしている人もいない。皆、静かにささっと食事を済ませ、食堂から出ていく。館内はとても静かで、娯楽はない。寝る前に温泉に入り、22:00を過ぎると消灯となった。


翌朝も温泉に入り、朝食を食べて、チェックアウトした。バスを待つ間、ラウンジでコーヒーを飲みながら、ラジウム温泉に関する本や体験談を読んだ。世界には、いくつかのラジウム温泉があり、有名なのはオーストリア、ザルツブルクにあるハイルシュトレンだ。私は、昔ザルツブルクに旅行に行ったことがあったが、世界有数のラジウム温泉があることは知らなかった。その本の体験談では、車椅子の末期ガン患者が、ハイルシュトレンで3週間の療養をしたところ、帰りは車椅子なしで歩けるようになったという。日本のラジウム温泉は、鳥取県の三朝温泉、秋田県の玉川温泉、そして今回訪れた山梨県の増富温泉がある。


1泊で私の癌が癒やされたかどうかは分からないが、母の骨折後の手首の痺れが癒やされた。母とは今回の旅行でいろいろな話ができた。母に私が癒されたら神を信じるか聞いたところ、あなたの癒しを信じると言われた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?