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オンライン・ストアをやるなら。

 オンライン・ストアをやるなら,そこで中古本を売るなら,まずその本の紹介は必須なのかもしれないけれど,今はそれをあえてやっていないんです。まあ,ラインナップの中に未読のものもあるから,というのもあるのかもしれませんけど。
 内容がわからないからか,もっともとをたどって誰にも認知されていないとか,そもそも魅力的なラインナップではない,というのもあるのかもしれませんが,正直売上は今のところあまり芳しくないですね。
 でも学生時代にディスク・ガイドで育ってきて,いつか聴きたいと思いながら手帳に作品名をメモしたり,なんとなくレコード・ショップで手にとった作品のジャケットが素敵だったから思わず買ってしまう「ジャケ買い」のような,知らないけれど惹かれて買うみたいな文化が,ある時期に間違いなくあったじゃないですか。
 ディスク・ガイドだって,もとは他人のお薦めかもしれないけれど,たくさんの作品の中からジャケットやコメントをふくめて,これだというのを選抜しているのだろうし,自分の直感を信じて買うという経験を,どこかで愛しているんでしょうね。
 もちろんそこに失敗がないわけではありません。すごく都会感のあるジャケットで,間違いなく素敵なシティ・ポップだろうと思って買ったら,めちゃくちゃ大味なダンス・ミュージックだったり。でもそれも思い入れ,とまではいかなくても,ささやかな思い出にはなりますよね。
 本だってそう。カヴァー・デザインやタイトルで,何かしら惹かれるものってあると思う。そして本の場合は,内容なんか知らなくたって,手にとって,あるいはオンライン・ストアならパッと開かれたページがあれば,文字の配列や,余白の感じや,漢字と平仮名の使い分けなんかで,自分が求めているものかそうでないものか,なんとなくわかるんです。
 全部知ったうえで買うのは,ハズレがないけど,つまらない。どこかワクワクした気持ちの中で,自分の知らないもの,自分をここではないどこかに連れていってくれるもの,そういったものに出会いたいし,出会ってほしいですね。


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