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THEDDO.イベントレポート②


概要

「空き家から、地域課題を解決する」を掲げて始まったTHEDDO./スッド。初めてのイベントとして2024 年1月13日(土)〜14日(日)の2日間にわたり、セルフビルド専門家の岩下大悟さん(山村テラス/長野県)と、THEDDO.のクリエイティブを担当したクリエイティブ・ディレクターの田中淳一さん(株式会社POPS/東京都)をお招きして、講演会と実際の空き家改修に着手するクラフトワークショップを行いました。

家と暮らしの記憶を再編集する

「栗のや」の有木さんと

今回ゲストが宿泊したのは、鹿児島市出身で大隅半島に移住した有木円美さんが古民家を改修・運営する「いなかを楽しむ宿 栗のや、」。
古民家改修の大先輩・有木さんも2日間参加してくださいました。

まず空き家周辺の地域環境や歴史風土・成り立ちを理解するため、周辺のツアーから開始。初代・神武天皇の両親が眠る、国内でも有数の洞窟型の御陵がある「吾平山陵」へ参拝します。

県内出身者や移住者でもなかなか知らなかったり、参拝する機会の少ない吾平山陵。参加者のひとりである地元新聞社の記者さんが主導となり、この場所に流れる長い時間や歴史風土について説明してくださいました。

今回参加者と向かったのは、築120年の空き家。
所有者からこの家の成り立ちや背景を聞いたあと、セルフビルド専門家の岩下さんのお話を聞きながら、空き家の現状と喫緊の課題、修復すべき優先順位についてお伺いしました。

空き家は屋根の雨漏りや湿度との闘いで、いかにそこから基礎の腐敗を食い止めるかが勝負。現状この空き家の場合は、屋根の谷間になっている部分からの雨漏りと侵食が進みつつあるようで、まずは今後どのような時間軸で建物を維持・改修していくかと照らし合わせながら、屋根の雨漏り対策が急務であること。そして時代とともに増築してきた建物を元の大きさまで減築し、維持・改修しやすいサイズ感に戻すこともアドバイスいただきました。

ものの10分で空き家の現状課題を炙り出す岩下さん
そこかしこに暮らしの軌跡が残る

知恵と風土が詰まった家

そしてまずは家の元々の躯体やあるべき姿を確認するため、畳を剥がして床板を確認してみることに。畳をどかしてみると、100年以上前に手づくりされた、建築当時の床板と基礎が現れます。

畳の下はすぐに基礎
100年経っても美しい木材

この地域の基礎は「大床(うどこ)造り」と呼ばれる伝統的な造りで建てられており、少し高床になっているところも高温多湿な大隅半島の地域ならでは。使用している木材も広葉樹が多いなど、この地域独自の建てられ方であると参加してくれた地元の大工さんが教えてくれました。
普段、長野県で活動する岩下さんも、これまで見たことがなく珍しい素材での建てられ方に興味津々。

地元大工・地元建築士・長野セルフビルドの三者で弾む会話

みんなで家を片付けて床板を剥がしてみる、たったこれだけのことでもそこには多くの先人たちの知恵と地域ならではの気候風土、歴史が詰まっていて、参加者の方々も目を輝かせていました。

元のかたちを取り戻した家

家の歴史は人の歴史

そして何よりも、この家にこんなにたくさんの人が集まり、そこかしこから笑い声が聞こえてくるのはいつぶりだろう。参加者の方も「家が喜んでいるね」と言ってくれました。

そしてその賑やかな笑い声を聞きつけて、近所のおばあちゃんも参加してくれました。「いよいよ取り壊されるんだと思って、急いで駆けつけた」とのことで、取り壊さずみんなで直していくことを伝えると、

「実はもうこの家が取り壊されてしまうんじゃないかと毎日通るたびに気になって寂しく思っていた。でもこうやって今日みたいに若い人たちがたくさん通ってくれたら、嬉しくてまた元気が出るし、ご先祖さまも喜ぶね。」

と言ってくれて、スッドのメンバーは感涙。
地域の人たちにとっても、空き家がひとつあることの心理的影響はあるのではないかと、半分仮説でここまで進んできたけれど、やはり間違っていなかったのだと励まされました。

参加者の皆さんと

またもうひとつスッドが励まされたのは、この人数で片付けると、これまで半日や数日かかっていた作業がたった数時間で終わってしまうこと。
やはり家の歴史は人の歴史で、今回のイベントを皮切りに、こういった片付けや改修なども必要な時に手伝える人が手伝い合いながら進めていけることが何よりも重要だと改めて気付かされました。

ここが始まりで、まだまだやることも課題も山積みですが、またこのような機会を作りながら楽しくやっていけたらと思います。

ゲストと参加者の皆さん、ありがとうございました!

(写真 深澤慎平)

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