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【New Event】 チェルフィッチュ × 金氏徹平 『消しゴム森』がArtStickerに加わりました。

2月7日から13日まで金沢21世紀美術館で開催するチェルフィッチュ × 金氏徹平 『消しゴム森』がArtStickerに加わりました!

消しゴム森

概要

『消しゴム山』(劇場版)と『消しゴム森』(美術館版)は、演劇作家・岡田利規が、2017年、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市を訪れ、津波被害を防ぐ高台の造成工事で変わってしまった風景を見たことに始まります。嵩上げのための土砂は周辺の山を削り取って賄われているため、かつてあった風景は驚異的な速度で変貌し、岡田は、もはや人間的な尺度を大きく逸脱するものだったと言います。度重なる環境の変化に向き合う人間中心主義に対しての疑いをもって、チェルフィッチュの新作の構想は全く新しい考え方に基づく「演劇」に発展していったのです。

そもそも、そうした自然の作り変えをする人間は環境の一部であるにもかかわらず、対立するかのような関係にあると考えていることこそ疑うべきなのでないか。これを演劇に援用すれば、観客は舞台上で展開される話や役者に向き合うというより、その場に存在する環境の一部でしかないのではないか。舞台美術と呼ばれるものでさえ、観客との関係においては上下左右のない、等価に存在しているのでないか。人間中心主義ではない、環境に対する演劇を構想し、そして、それを実験してみようということですから、『消しゴム森』はいろいろな意味で、いわゆる一般的な「演劇」とは大いに異なるのです。岡田利規のこうした投げかけに応えるのは、1997年から主宰するチェルフィッチュとセノグラフィーの金氏徹平です。金氏徹平は空間における物や人の存在と関係について、これまでも岡田と共に実験を繰り返してきています。

『消しゴム山』は、逃げ場のない舞台空間で流れる時間に従って進行していきましたが、金沢21世紀美術館のギャラリースペースでの公演『消しゴム森』では、観客が空間と時間を自由に選択することができます。どこから、どの順で、どこまで観ればいいのかと考えている「あなた」も『消しゴム森』の一部となるので、もはや観客とすらいうこともできないかもしれません。

『消しゴム山』と『消しゴム森』には岡田利規の「映像演劇」の手法も取り入れられています。「映像演劇」とは、舞台映像デザイナーの山田晋平とともに取り組み始めた新しい形式の演劇であり、演じている映像を観る人々が現実とフィクションの間で揺れ動く、曖昧さを創出するものです。 どうぞ、時間の許す限り『消しゴム森』の一部となって壮大な実験にお立ち会いいただき、「演劇」の定義を大幅に更新していくチェルフィッチュ、岡田利規、金氏徹平による新作をお楽しみください。

ー黒澤浩美(金沢21世紀美術館 チーフ・キュレーター)

『消しゴム森』でトライすること

岡田利規(作・演出)
ヒトが人間中心主義の外に出るためのパースペクティヴに少しでも感覚のレベルで触れ、接近するための手助けとなるものに、『消しゴム森』という展覧会/上演を、しつらえたい。
そのために『消しゴム森』を、モノとヒトとの、たとえば、ヒトに道具として用いられるモノ/道具としてのモノを用いるヒト、といった主従関係とは異なる関わりのありようを提示する場、モノとヒトとの関係がそのようなものへと変容していく様子を提示する場にしたい。
モノとヒトとの相違・境界をなめらかにし、溶かしさえしてくれる可能性のあるものとして、映像を取り込みたい。わたしたちが昨年から取り組む〈映像演劇〉と呼んでいる手法を、多用したい。
モノとヒトの関係のさまざまなヴァリエーションを持った複数の異なるパフォーマンスを、演劇というフォーマットを用いて生み出していきたい。つまり、ヒト(鑑賞者)に向けたヒト(俳優)による演劇、ヒト(鑑賞者)に向けたモノによる演劇、モノに向けたモノによる演劇、どこかに向けたモノによる演劇、など。

金氏徹平(セノグラフィー)
人間とモノと空間と時間との新しい関係性。生まれていない/存在していない人間が持っている思考。たくさんの時間とたくさんの人間の思惑によって出来上がった制度や空間をモノが占拠することによって、既存の境界線とは全く別のでたらめな境界線を引き台無しにする。タイムマシンの材料をホームセンターで見つける。など、ある意味で想像することも不可能かもしれないことを、演劇(あるいはチェルフィッチュ)もしくは劇場、彫刻(あるいは金氏)もしくは美術館の制度や空間や手法やコンセプトを駆使して実現しようというのが今回の僕にとっての試みです。
劇場版の『消しゴム山』は、存在しないもしくはかつて存在した山を遠くから眺めるようなものであるとすれば、美術館版の『消しゴム森』は自らその中に踏み入るものになると思います。森の中は危険がいっぱい。

プロフィール

岡田利規(おかだ・としき)

岡田利規_クレジット必要©宇壽山貴久子

©️宇壽山貴久子

973 年横浜生まれ、熊本在住。演劇作家/小説家/チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005 年『三月の5日間』で第49 回岸田國士戯曲賞を受賞。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005ー次代を担う振付家の発掘ー」最終選考会に出場。2007 年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表、翌年第2回大江健三郎賞受賞。2012 年より岸田國士戯曲賞の審査員を務める。2013 年には初の演劇論集『遡行 変形していくための演劇論』、2014 年には戯曲集『現在地』を河出書房新社より刊行。2016 年よりドイツ有数の公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品演出を4シーズンにわたって務める。2018 年8 月にはタイの小説家、ウティット・へーマムーンの原作を舞台化し、塚原悠也とコラボレーションした『プラータナー:憑依のポートレート』をバンコクにて発表、12 月にフェスティバル・ドートンヌ/ジャポニスム2018(パリ)、2019年に響きあうアジア2019(東京)にて上演。

チェルフィッチュ
岡田利規が全作品の脚本と演出を務める演劇カンパニーとして1997年に設立。独特な言葉と身体の関係性を用いた手法が評価され、現代を代表する演劇カンパニーとして国内外で高い注目を集める。その日常的所作を誇張しているような/していないようなだらだらとしてノイジーな身体性は時にダンス的とも評価された。2007年ヨーロッパ・パフォーミングアーツ界の最重要フェスティバルと称されるクンステン・フェスティバル・デザール2007(ブリュッセル/ベルギー)にて『三月の5日間』が初めての国外進出を果たして以降、アジア、欧州、北米にわたる計70都市で上演。2011年には『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』が、モントリオール(カナダ)の演劇批評家協会の批評家賞を受賞。

金氏徹平(かねうじ・てっぺい)

金氏徹平_クレジット必要©川島小鳥

撮影:川島小鳥

1978 年京都府生まれ、京都市在住。2001 年京都市立芸術大学在籍中、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)に交換留学。2003 年京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。現在、同大学彫刻専攻准教授。日常の事物を収集し、コラージュ的手法を用いて作品を制作。彫刻、絵画、映像、写真など表現形態は多岐にわたり、一貫して物質とイメージの関係を顕在化する造形システムの考案を探求。個展「金氏徹平のメルカトル・メンブレン」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2016)など国内外での展覧会のほか、舞台美術や装丁も多数。あうるすぽっとプロデュース『家電のように解り合えない』(2011)、KAAT キッズ・プログラム2015 おいしいおかしいおしばい『わかったさんのクッキー』(2015 -2016)での舞台美術を始め、自身の映像作品を舞台化した『tower (THEATER)』(KYOTO EXPERIMENT 2017)では演出を手掛ける。

出演者プロフィール

青柳いづみ(あおやぎ・いづみ)

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©️篠山紀信

2008年『三月の5日間』ザルツブルグ公演よりチェルフィッチュに参加。2007年よりマームとジプシーに参加、以降両劇団を平行し国内外で活動。近年の主な出演作にチェルフィッチュ『部屋に流れる時間の旅』、金氏徹平『tower (THEATER)』、藤田貴大演出『みえるわ』(小説家・川上美映子との共作)、『CITY』など。また、音楽家・青葉市子とのユニットやナレーション、文筆活動なども行う。筑摩書房より漫画家・今日マチ子との共著『いづみさん』が発売中。

安藤真理(あんどう・まり)

安藤真理_cropped

2006年伊丹アイホールにて岡田利規ワークショップ&パフォーマンス「奇妙さ」に参加。以降2008年『フリータイム』、2009年『記憶の部屋について』(金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」)、『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』、2011年『家電のように解りあえない』、2016年『部屋に流れる時間の旅』他に出演。

板橋優里(いたばし・ゆり)

板橋優里

宮城県生まれ。尚美学園大学に入学し演劇を始める。大学卒業後、小田尚稔の演劇、ウンゲツィーファ、アナログスイッチ等に出演。近年ではチェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーションに出演。

原田拓哉(はらだ・たくや)

原田拓也

1981年大阪府生まれ。京都嵯峨美術短期大学卒業。美術家。グループ展2007年『Uchu』(galleryDen58)、2008年『oneroom3』(元・立誠小学校)、2013年『What(n)ever』(コーポ北加賀屋)、2015年『DAYDREAMwithGRAVITY』(ホテルアンテルーム京都)。

矢澤誠(やざわ・まこと)

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1972年福島県生まれ。NODA・MAP、宇宙レコード、ニブロール、ミクニヤナイハラプロジェクト、カムカムミニキーナ、安藤洋子プロジェクト、遊園地再生事業団、カンパニーデラシネラ、オフブロードウェイミュージカル『リトルショップ・オブ・ホラーズ』などに出演。チェルフィッチュには『わたしたちは無傷な別人である』、『地面と床』、『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』に出演。

米川幸リオン(よねかわ・こう・りおん)

米川幸リオン_cropped

1993年三重県生まれ。父がイギリス、母が日本、のニッポン人。京都造形芸術大学映画学科俳優コースと映画美学校アクターズコースを卒業。主な出演作品は、チェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーション、小森はるか+瀬尾夏美『二重のまち/交代地のうたを編む』、ミヤギフトシ『感光』など。また、伯楽-hakuraku-のメンバーとして、岩手県住田町での自主映画の企画〜上映までも行っている。

関連プログラム

ポスト・パフォーマンス・トーク「篠原雅武 × 岡田利規 × 金氏徹平」
日時:2月7日(金) 17:15〜18:15(開場17:00)
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
参加費:無料
定員:先着50名 ※事前申込み不要

ポスト・パフォーマンス・トーク「宮沢章夫 × 岡田利規」
日時:2月8日(土) 17:15〜18:15(開場17:00)
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
参加費:無料
定員:先着70名 ※事前申込み不要

出演・スタッフクレジット

作・演出:岡田利規
セノグラフィー:金氏徹平
出演:青柳いづみ、安藤真理、板橋優里、
原田拓哉、矢澤誠、米川幸リオン
映像:山田晋平
照明:髙田政義(RYU)
音響プランナー:中原楽(ルフトツーク)
衣裳:藤谷香子(FAIFAI)
舞台監督:川上大二郎
演出助手:和田ながら
プロデューサー:黄木多美子(precog)
アソシエイト・プロデューサー:田中みゆき
制作アシスタント:遠藤七海(precog)
宣伝美術:れもんらいふ
宣伝写真:守屋友樹
グラフィック:金氏徹平
企画制作:株式会社 precog
ディレクター:中村茜
シニアプロデューサー:平岡久美
チーフアドミニストレーター:森田結香
ツアーマネージャー:水野恵美
海外営業:崎山貴文
教育普及コーディネーター:栗田結夏

基本情報

チェルフィッチュ × 金氏徹平 『消しゴム森』
会期:2020年2月7日〜2020年2月16日
会場:金沢21世紀美術館 展示室7〜12、14
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
電話:076-220-2800
開場時間:10:00〜17:00(※最終入場は閉場の30分前まで)
ライブパフォーマンス:11:00〜16:00
休演日:2月10日(月)
観覧料:
一般 2,300円 (2,000円) ペア(3,800円 ※前売り券のみ) 大学生・団体料金(20名以上)・65歳以上の方 2,100円(1,800円) 小中高生 1,100円(800円) 友の会 2,100 円(1,800円) ※( )内は前売り券の料金
URL:https://www.kanazawa21.jp
主催:金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)/独立行政法人日本芸術文化振興会
製作:一般社団法人チェルフィッチュ
共同製作:
〈消しゴム山〉 KYOTO EXPERIMENT、Wiener Festwochen、Festival d’Automne à Paris、Künstlerhaus Mousonturm Frankfurt
〈消しゴム森〉 金沢21世紀美術館
企画制作:株式会社 precog
協力:コネリングスタディ/山吹ファクトリー、急な坂スタジオ、京都市立芸術大学、京都芸術センター制作支援事業

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