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ゲイの生き辛さを知ればボヘミアンラプソディがもっと心に沁みるようになる話④

□さらっとインデックス

- 母への謝罪、そして皆との別れ

これまでの解説はこちらから!


母への謝罪、そして皆との別れ


Mama, Didn't mean to make you cry
母さん、悲しませるつもりなんてなかったんだ
If I'm not back again this time tomorrow
もし明日のこの時間、俺が戻ってこなくても
Carry on, carry on 
母さんには前に進んで欲しい。
as if nothing really matters
まるで何事も無かったかのように


フレディが生きていた時代は、同性愛に対して理解のない冷酷な時代だ。当事者でさえ胸を張って同性愛を肯定し生きることができない時代である。そういう時代であったからこそ、息子が同性愛者であるという事実を打ち明けることは、肉親をひどく悲しませ、絶縁されるほど怒らせてしまうだろうとフレディは危惧したに違いない。そうならば、事実を伝えずにただ消えてしまった方が母のためだと考えたのである。そこには明確な罪の意識が存在している。それ故、彼は「didn't mean to make you cry (=母さんを傷つけるつもりは無かったんだ)」と許しを乞うかのように歌うのだ。何も言わず、自分一人で同性愛者としての罪を抱えて消えてしまったとしても、母さんには今までのように元気に生きて欲しいとフレディは吐露するのである。


too late, my time has come
もう後戻りはできない。もう見切りをつける時間だ
Sends shivers down my spine
身体中が震えて
Body's aching all the time
ずっと身体が痛むんだ
Goodbye, everybody. I've got to go
みんな、さようなら。もう行かなきゃ。
Gotta leave you all behind and face the truth
一人でその真実に向き合わないといけないんだ


フレディは男性同性愛者であることをやめることはできなかった。この同性愛という罪を誰かに告白し、受け入れてもらうことも難しい時代だ。それ故、誰かに受け入れてもらおうと己を欺き続けるよりも現在の人間関係に見切りをつけ、人知れず去ってしまう方が良いとフレディは考えたのだ。それは非常に孤独なことであり、身体が震えてしまうほど恐ろしく、胸が裂けそうになるくらい辛い状況だろう。それでも男性同性愛者という事実と向き合いながら生きていくと決心したのだ。


Mama, I don't want to die
母さん、俺だって死にたくはない
I sometimes wish I'd never been born at all
ふと生まれてこなければ良かったのにと思うことがあるんだ


ここでの「死ぬ(= die)」とは社会が求める「一人前の男」としての失敗と肉親や親しかった人々との別れを意味している。フレディ自身も端から他者の期待に応えるように生きることを諦めていたわけではないだろう。性的指向を問わず多くの人々が親の期待や周囲の期待に応えようと努力しそして失敗したように、フレディも幾度となく「普通」になろうと努め、そして他者のために己を欺くことの限界に気づいたのだと思う。本当は「死ぬ」ことは嫌なのだ。可能であれば他者の期待に応え、彼らの喜ぶ顔が見たいと思っていたに違いない。それをまっとうできなかったからこそ、罪の意識を抱え、不出来な自分さえ生まれていなければ良かったと願うのである。


そして曲調は変わり、フレディは自身の闇を覗き込むようになる。次回はこちらから!

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