【24卒】 7大商社 徹底比較 (決定版)
絶対に、総合商社の内定を獲得したい学生、必見です!
はじめに
なぜ、「7大商社比較」が必須なのか?
総合商社は、新卒採用において過去から人気の高い業界の一つです。24卒においても、好調な決算、高い社会貢献性や成長性、良い待遇などを理由に非常に高い人気を維持しています。
しかし、「総合商社」は「グローバル」「大きなプロジェクト」といったイメージはあるものの、どのような使命を担い、どのような機能やアセット(ヒト・モノ・カネ)を持ち、どのようなビジネスモデル(収益を上げる仕組み)で、どのような社会課題をどのように解決し、どのように収益を上げているか、非常にわかりづらい業界です。取扱商品・サービスは多岐にわたり、さまざまなステークホルダー(利害関係者)と共に、グローバルにビジネスを展開しているため、つかみどころのない業態であると言えます。
ましてや「7大商社」の特徴や違いは? と聞かれても、「財閥系」or「非財閥系」、「組織型」or「個人型」、「資源に強い」or「非資源に強い」、ぐらいは分かったとしても、それぞれの会社の細かい特徴まではつかみにくいものです。そのため、志望理由を言う時には、どうしても「人」という視点に頼りがちになってしまいます。
でも、面接では「なぜうちを志望しているの?」と聞かれます。どうしたらよいか途方に暮れている人も多いと思います。
商社の業界研究については、一生懸命考えている人が多いように感じます。複雑でつかみどころのない業界ではあるものの、自分なりに商社業界とはどのような業界なのか、なぜ商社を志望しているかを語れる人はそこそこいるように感じます。
一方、7大商社の企業研究や比較については、十分に行なっていない人や行えていない人が多いように感じます。理由は、「企業研究の重要性を理解していない」「どのように企業研究を行えば良いか分からない」「時間が足りずそこまでたどり着けていない」「先輩の ”結局は人” というアドバイスを鵜呑みにしている」といったことが挙げられます。
結局、「社員訪問を通じてこのような人たちと一緒に働きたいから」という抽象的な理由を志望理由にしている人が、たくさんいるように感じます。結果、面接官の心に刺さらず、面接官から「またか」と思われ、不合格になっているケースが散見されます。安易に「人」を理由にしているため、熱意の面でもロジックの面でも、その会社で働きたいという想いが伝わってきません。
逆に言うと、十分な企業研究を通じて7社の違いを深く明確に理解し、その上で志望動機やビジネス構想を考えていけば、ライバルとの差別化が図れ、商社内定の確率がグッと高まっていきます。十分な企業研究を通じて深くその会社を理解していけば、だんだんと愛着や想いが湧いてきます。それに自分自身の原体験をからませ、「どうしてもこの会社で働きたい」「この会社でなければダメなんだ」といった想いや理由を、一貫性を持って熱く語っていければ、面接官の心に刺さります。
したがって、7大商社の特徴や違いを多角的に理解していくことは、商社内定の「王道」であると言えます。ただ、7大商社比較は簡単ではありません。7社比較が浅い多くの就活生にとって「人」でしか差別化できないかもしれませんが、しっかりと対策した就活生にとっては、7社は全く違う会社であることが見えてきます。
三菱商事は、総合力を発揮し、国の発展や産業の変革に大きく貢献する商社です。伊藤忠は、三方よしの精神をベースとし商人としての使命を持ち、生活消費分野に強みを持つ商社です。三井物産は、高い志を持つ強い個が、グローバルに活躍し、「つくる」を実現する商社です。住友商事は、住友の事業精神を継承し、目先の利益よりもサステナビリティを大事にする商社です。丸紅は、「正・新・和」の精神に基づき、商社の枠組みを超えて、自ら先頭に立つという気概を持った商社です。豊田通商は、トヨタのDNAを引き継ぎ、「豊田通商らしさ」を追求する商社です。双日は、社員一人ひとりの発想を尊重し、若手に裁量権の大きい商社です。
のちほど詳しく説明していきますが、この記事では、まず第一部で、各商社の本質的な違いをそれぞれ4つのキーワードを用いて説明し、全体像を掴んでいただきます。次に第二部で、「企業文化」や「人」などの10つの多面的な視点から、各商社を横並びで比較し、その違いを具体的に理解していただきます。最後に第三部では、23卒商社内定者が、社員訪問やセミナー、面接などを通じて得た一次情報をもとに、リアルな各商社の違いを感じていただきます。
他の就活サイトは、表面的な説明に留まっていることが多いです。この記事を通じて、多面的かつ深く7社の違いを理解し、それを企業の志望理由やビジネス構想につなげていき、「どうしてもこの会社で働きたい」「この会社でなければダメなんだ」という熱い想いを、自分の言葉で伝え、商社から内定を勝ち取ってもらいたいと強く願っています。
もう少し具体的に、この記事のコンセプトについて説明していきます。
7社の特徴を理解するための機会やコンテンツには、以下のようなものがあります。
会社説明会や社員訪問、インターンシップなどの機会を通じて(対面かオンラインかは問わず)、「一次情報」を入手することは非常に大事なことです。特に社員訪問は、社員から本音を聞き出す絶好の機会ですので、早めにスタートすることをお勧めします。
コンテンツについては、「採用ホームページ」に加え、「企業ホームページ」にも有益な情報がたくさん掲載されています。そちらもご覧ください。また、投資家向けの「統合報告書」や「中期経営戦略/計画」には、経営方針、決算、人材戦略、マテリアリティ、セグメント情報など、重要な情報が網羅的に記載されています。こちらもぜひお読みください。最近は動画での配信も増えています。
ただ、これらの情報は、就活生にとって以下のような欠点があります。
重要であるにも関わらず、学生のみなさんにはややハードルが高いかもしれません。
そこで今回、7大商社について、私なりにわかりやすく網羅的に解説することにしました。7大商社を比較するにあたり、まず、【第一部(総括)】として、各社の特徴を表す厳選されたキーワードを4つずつ列挙し、全体像をつかんでいただきます。
その上で、【第二部(基礎編)】と【第三部(実践編)】に分けて、各社の特徴を詳細に説明していきます。
【第二部(基礎編)】では、以下10つの観点から分析しました。各社を多角的な視点で分析することにより、その会社の特徴を浮き彫りにし、各社の違いを明確にしていきます。
最後に、【第三部(実践編)】として、23卒商社内定者の就活を通じて得た「一次情報」に基づき、実践に役立つ情報を以下5つの視点で整理しました。
7社は同じ「総合商社」業界に属しており、共通事項はたくさんありますが、深く掘り下げていくと、各社の特徴が浮かび上がってきます。
この記事に書かれていることが全てではないということは認識してもらいたいですが、第二部(基礎編)の10つの観点からの分析は、かなりの部分を網羅しています。また、第三部(実践編)は、就活生の生の声を集めましたので、よりリアルに各社を理解できます。
ここに書かれていることを頭に入れた上で、社員訪問や企業セミナーなどに参加すれば、商社業界全体のみならず各社についての理解が一層深まり、志望理由を考える参考となると確信しています。
また、「統合報告書」や「中期経営戦略」なども合わせ熟読してみると、理解はさらに深まっていくでしょう。
【三菱商事】 中期経営戦略2024 統合報告書2022
【伊藤忠商事】 中期経営計画2023 統合レポート2022
【三井物産】 中期経営計画2023 統合報告書2022
【住友商事】 中期経営計画2023 統合報告書2022
【丸紅】 中期経営戦略2024 統合報告書2022
【豊田通商】 中期経営計画 統合レポート2022
【双日】 中期経営計画2023 統合報告書2022
それではさっそくですが、第一部(総括)から始めていきます。第一部(総括)は、各社の特徴を4つのキーワードで表しました。まずは各社の特徴を大枠で捉え、全体像を把握して下さい。
第一部(総括)
1-1. 「キーワード」から「特徴」を学ぶ
三菱商事
キーワード:「三綱領」「国・産業」「総合力」「EX・DX」
「三綱領」
「三綱領」の精神は、三菱商事の社員に深く根付いています。「三綱領」は、「所記奉公」「処事光明」「立業貿易」から構成されており、それぞれ、「社会貢献」「フェアプレー」「グローバル」と表すことができます。三菱商事の社員は、一段高い視座を持って社会全体を良くしていきたいと考えている人が多く、公明正大で品格があり、紳士的な人が多い印象です。社内では役職や年齢に関係なく、「さん付け」で呼び合っており、お互いを尊重し合う組織風土が感じられます。また、全世界に111つの海外拠点を有していますが、三菱商事のいち駐在員としてではなく、日本を代表するという意識を持ち、業務以外にも日本代表として駐在国や駐在地に積極的に貢献しているように感じます。
「国・産業」
1870年創業の三菱商事は、三菱財閥の一角として、三菱財閥のメーカーの原料輸入・製品輸出を担ってきました。そのため、当時から政府や海外との強いコネクションを持っており、現在も商社の中で、それが一番強い会社であると言えます。三菱商事は、日本のみならず世界中の国・地域の発展や、産業全体の変革に大きく貢献しています。そのためか、三菱商事は商社の中で、一番「戦略的」な会社であると感じます。会社として戦略を練り上げ、それを組織・個人に落とし込み、それぞれが連携を取りながら着実に戦略を実行しているイメージがあります。三菱商事が社員に求める能力・資質として、社会課題の解決に向けた「高い志」、時代を先取りして新たな価値を導出する「構想力」を掲げています。そのことからも三菱商事は戦略的な会社であると言えます。
「総合力」
総合商社はどの会社も「総合力」を有していますが、三菱商事が一番「総合力」が強い会社であると言えます。三菱商事が持つ「総合力」とは、本店・国内外拠点・事業会社などの「グローバルネットワーク」、幅広い産業分野における「顧客・パートナー」、豊富な「資金力」、多彩・多才な「人材」、金属資源・LNGなどの高い競争力とプレゼンスを有する「事業資産」、「インテリジェンスと産業知見」等を指します。また、三菱商事のグループ会社数は、商社最大の約1700社であり、産業接地面は一番広いと言えます。さらに、中期経営戦略2024では、「つなげ・つながることで三菱商事グループならではの総合力を最大化」を目指すとしており、三菱商事の「総合力」はますます強くなっていくでしょう。
その強い「総合力」を発揮して、より大きいことを成し遂げるのが三菱商事です。
「EX・DX」
EX(エネルギー・トランスフォーメーション)とDX(デジタル・トランスフォーメーション)を一体推進し、エネルギーの低・脱炭素化とデジタル技術の活用による変革により、未来創造(特に、地域創生)するという戦略を明確に打ち出しています。もともと三菱商事は、エネルギー・資源分野に強みを持っていますが、エネルギー・資源の安定供給と社会・経済活動の低・脱炭素化の両立を目指しています。また、DXによって、産業・企業・コミュニティをつなぎ、社会全体の生産性向上を図り、持続可能な価値創造を目指しています。そのEXとDXを掛け合わせ、新産業創出や地域創生などの未来創造を果たしていくという戦略です。エネルギー・資源とデジタルに強みを持ち、高度な総合力を有する三菱商事ならではの夢のある戦略だと感じます。
伊藤忠商事
キーワード:「三方よし」「商人」「非資源分野・生活」「働き方改革」
「三方よし」
伊藤忠は、近江商人の経営哲学である「三方よし」、すなわち「売り手よし・買い手よし・世間よし」を企業理念とし、社員の心の中に深く浸透しています。「売り手良し」「買い手よし」に加え、「社員よし」「株主よし」も実践していますが、昨今は「社会よし」「環境よし」も強く意識しています。伊藤忠は、利益はもちろん、環境に、社会に、社員や株主のすべてにどれだけの価値を生み出していけるかに注力しています。
「商人」
伊藤忠は、1858年に近江商人の伊藤忠兵衛がおこなった麻布の持ち下りをルーツとしています。創業時から受け継がれている「商人魂」を今でも大切にしています。「商人魂」とは、「信用・信頼」「個の力」「倹約」「積極・機敏・合理」「自由闊達と謙虚さ」です。「商人」の会社ということから、お客さまから信頼を勝ち取り、お客さまに好かれることが大事ですので、採用においては「人物本位」の選考をおこなっています。
伊藤忠は、単年度の目標達成を大事にしている会社です。その根底には、中長期的な経営戦略を実現できると信じてもらうには、各年度における目標の着実な達成や経営戦略の連続性が重要であると考えているからです。コミットメントを重視し、目先のことを一つひとつ着実に実行していく社風があります。
「非資源分野・生活」
繊維が祖業であり、重厚長大を支える国や企業とのパイプが、財閥系大手商社と比べて乏しかった伊藤忠の強みは、衣食住を中心とする「非資源分野」です。もともと強みを持つ「非資源分野」において、「マーケットイン」による事業変革に取り組んでいます。具体的には、消費者接点から得られるデータに基づき、多様化する消費者のニーズを的確に捉え、川下を起点としバリューチェーンを変革し、そのニーズにあった商品・サービスを提供しています。その例がファミリーマートです。
また、コーポレートブランディング「暮らす、愛する、商いする。」でも、一般的な人たちの生活にフォーカスしています。伊藤忠は一般の人たちに寄り添った商社であると言えます。
また、伊藤忠はビジネス以外にも積極的に消費者との接点を持とうとしています。具体的な取り組みとして、世の中のあらゆるSDGsに関する取り組みの発信拠点『ITOCHU SDGs STUDIO』、季刊誌『星の商人』、朝日新聞や大学生と共創する『ミライテラス』などが挙げられます。
「働き方改革」
もともと伊藤忠は、自らの足で商いを開拓してきたDNAを持ち、商いの規模が小さく顧客数が多い非資源分野に軸足を置き、「個の力」を養ってきました。伊藤忠の社員は「野武士」と表現されることが多いです。現在伊藤忠は、5大商社の中で一番「単体人員数」が少なく、少数精鋭の会社と言われています。そのため、社員一人ひとりが効率的に働き、「労働生産性」を高めていく必要があります。そこで伊藤忠は他商社に先駆けて、2013年より「働き方改革」を推進しました。朝型勤務制度や110運動、脱スーツデー、がんとの両立支援など様々な施策を次々に打ち出し、世間でも話題になりました。現在は、「働き方改革第2ステージ」を始動し、特に若手や女性社員の価値観の多様化に対応した施策を導入しています。
三井物産
キーワード:「志」「人の三井」「つくる」「グローバル」
「志」
三井物産は、社員一人ひとりの「志」が価値創造の源泉になっている会社であると言えます。社会のために、誰かのために、という熱い想いを持って、どんな困難があっても最後まで成し遂げるという強い意志を持つ社員が多い印象です。コーポレートブランディングである『その志で世界を動かせ。』に登場する8人の社員からもそのことを強く感じます。三井物産を志望する人の志望理由は、自分自身の「志」を実現するのにベストなフィールドが三井物産だから、とする人が多いように思います。
「人の三井」
三井物産は、採用を含む「人材育成」を最重要に考えている会社と言えます。ここ数年、新卒採用において、自分史やケース面接の導入、インターンシップの必須化など、求めている人材を時間や労力を厭わず貪欲に採用しようとしている姿勢からもそのことが言えます。三井物産は、自立したプロフェッショナルが、お互いの個性を認め合い、協働し、新たな価値を創造し続けています。2020年に大手町にできた立派な本社オフィスでは、社内外の知見・アイデア・専門性が交わり、知的化学反応が起きるような仕掛けをたくさん設けています。ちなみに、三井物産の英語の名称は、「Mitsui & Co.」ですが、「三井物産と仲間たち」という意味で、社名からも上記のことが言えます。
「つくる」
三井物産が創業以来培ってきたDNAに「挑戦と創造」があります。経営理念(MVV)の最上位概念であるMissionは、「世界中の未来をつくる - 大切な地球と人びとの、豊かで夢あふれる明日を実現します」ですが、そこに「つくる」という言葉が使われています。三菱商事や伊藤忠商事など、商社は社名に「商事」がつく会社が多いです。「商事」とは、モノを輸出・輸入したり、販売したりする会社のことを指し、トレーディングと同義です。一方、三井物産だけが「物産」を使っています。それは、三井物産の本業、すなわち存在意義は、新しい事業を創り、産業を興し、人を育て、新しいビジネスを生み出すことにあると考えているからです。また、持続可能な社会の実現のための経営課題である「マテリアリティ」として、「安定供給の基盤をつくる」など5項目を掲げていますが、すべてが「・・・をつくる」としています。
「グローバル」
商社の中で、世界中を飛び回っているイメージが一番強いのが三井物産だと私は感じます。いち早く総合商社化し、いち早く海外拠点を持ったことが影響していると思います。高い志を持つ個が世界中で奮闘しているイメージが強いです。他商社に比べ、海外留学生の採用が多く、また入社後活躍している割合が高いように思います。また、事業についても海外で展開しているものが多い印象です。2000年代後半から2010年代にかけて、金属資源(鉄鉱石・原料炭・銅など)やエネルギー(石油・LNGなど)に注力してきました。資源・エネルギーに偏重していると言われてきましたが、現在は、資源・エネルギーの強みを維持しつつ、社会課題の変化に合わせて、ヘルスケア・ニュートリション、再エネ、デジタルエコノミー、次世代モビリティなどに注力し、事業ポートフォリオの変革を進めています。
住友商事
キーワード:「住友の事業精神」「サステナビリティ」「Diversity & Inclusion」「社会変革」
「住友の事業精神」
「住友の事業精神」は430年にも亘り受け継がれてきたものです。「信用・確実」「浮利を追わず」「自利利他公私一如」「進取の精神」の4つですが、住友商事の社員にこの精神が深く根付いています。信用を大事にし、社会貢献性の高いビジネスを堅実に進めていく一方、デジタルやテクノロジーを活用して社会変革を目指すなど、新しいことにも挑戦していく姿勢が感じれます。
「サステナビリティ」
どの商社も「持続可能な社会の実現」と「企業の持続的成長」の両立に取り組む「サステナビリティ経営」に力を入れています。中でも、住友商事は「サステナビリティ」を経営のど真ん中に据えて、商社の中で一番長期的な視点で経営やビジネスをおこなっている会社であると言えます。常に、判断基準が目先の利益ではなく、長期的な社会への貢献と長期的な利益にあると感じます。2019年の創立100周年の際に発表した「次の100年へ Enriching lives and the world」は、サステナビリティを強く意識した内容となっています。
「Diversity & Inclusion」
2020年に「グローバル人材マネジメントポリシー」を制定しました。その中で、「Diversity & Inclusion(D&I)」を「価値創造・イノベーション・競争力の源泉」と位置づけ、D&Iを妨げるあらゆるバリアを撤廃し、知のミックスを活かして、ビジョンの実現を追求するとしています。Diversityを「属性」の多様性だとすると、Inclusionは多様性を意識することなく、様々な人たちが自然体で最大限力を発揮し、活躍している状態だと言えます。商社の中で、住友商事がInclusionに一番近い環境にあると感じます。
「社会変革」
2021年に脱炭素・次世代エネルギー分野での次世代事業開発を目的として、組織横断的な組織である「エネルギーイノベーション・イニシアティブ(EII)」が新設されました。また、「量子コンピュータ(QX)」や「ローカル5G」といった最先端テクノロジーを、あらゆる産業において社会実装し、社会全体の変革を目指す取り組みに注力しています。商社はもともと「タテ(商品・サービス別組織)」が強く、VUCAの時代(先行きが不透明で、将来の予測が難しい時代)においては、タテ割り組織を打破し、ヨコの連携を強化していくことが課題と言われています。住友商事は、三菱商事と並び、社会変革を目指し、ヨコの連携に積極的な会社であると言えます。
丸紅
キーワード:「正・新・和」「Global crossvalue platform」「女性活躍推進」「グリーンのトップランナー」
「正・新・和」
丸紅初代社長 市川忍氏の訓示が起源の社是「正・新・和」は、丸紅という会社や丸紅の社員を的確に表すものであると感じます(正:公正にして明朗なること、新:進取積極的に創意工夫を図ること、和:互いに人格を尊重し協力すること)。
例えば、女性採用比率を50%を目指すのは「正」を、商社の枠組みを超えたGlobal crossvalue platform やコーポレートプランニングにおけるOne Pieceとのコラボは「新」を、チームワークの良さやアットホームな社風は「和」を表していると考えます。
「Global crossvalue platform」
創業160年の節目の2018年に、丸紅グループの在り姿として「Global crossvalue platform」を定めました。商社は幅広い事業を行なっていますが、タテ割りの発想(商品・サービス分野)に縛られてきました。
丸紅は、このビジネスモデルを一新し、事業間、社内外、国境、あらゆる障害を突き破って、タテの進化とヨコの拡張、価値と価値の新たな変化を生み出すことを目指しています。つまり、「商社の枠組みを超える価値創造グループ」を目指すものです。また、「とがった丸」というメッセージを発信していますが、実際には、とがった丸など存在しません。そんな既成概念を覆し、世界が見たことのない答え、○を見せようじゃないか。というところに丸紅らしさを感じます。
「女性活躍推進」
丸紅は、新卒採用において「オープン採用」「キャリア・ビジョン採用(CV採用)」「No1 採用」の3つの選考方法を用意しています。これらを同時に運営していくのは、とても時間や労力が掛かりますが、それだけ学生の強みや特徴を最大限評価しようとする姿勢を持った会社と言えます。面接の回数も4回と、他社よりも1回多いことからも、じっくりとその人を見極めていく、そして、学生にも丸紅という会社を理解してもらうということを重視していると言えます。
2022度には「女性活躍推進2.0」を制定し、新卒・キャリアをあわせた採用全体の女性比率を、自然比率の50%程度とする目標を掲げています。このことは就活に大きなインパクトを与えています。
「グリーンのトップランナー」
丸紅は、中期経営計画「GC2024」の基本方針の一つとして「グリーンのトップランナーへ」を掲げ、「グリーン事業の強化」と「全事業のグリーン化推進」を目指しています。グリーン事業とは、脱炭素・循環経済等、地球環境に対しポジティブな影響を与えるサステナブルな事業を指します。「グリーン事業の強化」は、丸紅が長年培ってきた森林・植林事業や再生可能エネルギー事業など。「全事業のグリーン化」は、カーボンフリー商材・サービスの展開、廃棄物のリサイクル環境配慮型素材への転換などです。
グリーン事業は新しい事業領域で、ロールモデルも前例もない中でソリューションが求められています。丸紅からは、自分たちが作ったすべてをロールモデルにしていく。そのために丸紅が先頭に立つ。といった気概を感じます。
豊田通商
キーワード:「トヨタ & M&A」「Be the right one」「現地・現物・現実」「アフリカ」
「トヨタ & M&A」
豊田通商は、トヨタグループの総合商社としての道を歩んできました。トヨタ車の販売金融からスタートしましたが、その後、完成車の輸出、さらにトヨタのグローバル化に伴い、海外進出を加速させていきました。2000年代に入り、加商株式会社、株式会社トーメン、アフリカに強みを持つフランスの商社CFAO社をM&Aし、総合商社化を図り、事業領域を拡大していきました。M&Aの際には、相手企業の特徴や企業文化を尊重し、多様性として取り入れることで、自らの強みに昇華させてきました。このように、トヨタグループとしての強みとM&Aを通じて培ってきた多様性の両方を備えているのが豊田通商の強みです。
「Be the right one」
豊田通商は、「豊通らしさ」をとても大事にする会社です。「豊田通商グループは総合商社というよりも専門商社の集団」という考えがベースにあります。ここで言う「専門商社」とは、他にはない 「ならでは」の専門的知見やネットワークを持ってお客さまに価値を提供する企業のことです。「タグ」と言い換えています。「何々と言えば豊田通商」とお客さまに言われるような「タグ」を増やしていき、それらの「タグ」が有機的に結び付く本当の総合商社になりたいと考えています。 これが他の商社にはない「豊通らしさ」であると言えます。
「現地・現物・現実」
豊田通商グループの役職員が共有すべき価値観・行動原則である「豊田通商グループウェイ」は、3つの要素、すなわち「商魂」「現地・現物・現実」「チームパワー」から成り立っています。中でも「現地・現物・現実」が、トヨタグループとしてのDNAを表しています。「現地・現物・現実」とは、事業の最前線である現場に寄り添い、知恵を絞り汗をかきながら、縁の下の力持ちとしてサプライチェーンを強くしていくという、トヨタグループの一員として大切にしている価値観です。商社はトレーディングから事業投資・事業経営にビジネスモデルを進化させ、Hands-On(経営人材を送り込み、経営に深く関与すること)で投資先を経営しています。その場合、戦略立案、管理・監督、重大な課題の解決を担うことがほとんどですが、現場に入り込み一緒になってオペレーションの課題を解決しようとしているのは豊田通商だけだと思います。
「アフリカ」
豊田通商(旧トーメン)のアフリカでのビジネスのスタートは、1920年代のウガンダでの綿花取引です。豊田通商は、1960年代になると英語圏であるアフリカ東・南部において、トヨタ自動車の完成車・中古車の現地販売や販売金融などの自動車事業のバリューチェーンを拡大していきました。また、発電所の建設や肥料の生産・販売など自動車事業以外にも事業を広げています。フランス語圏であるアフリカ中・西部に多くの拠点を持ち、B to Cビジネスに強みを持つCFAO社を2016年に買収しました。アフリカ東・南部に多くの拠点を持ち、B to Bビジネスに強みを持つ豊田通商とCFAO社の相乗効果は抜群で、ONE TEAMとなってアフリカ全土でビジネスを展開しています。現在特に注力している分野は、「モビリティ」「ヘルスケア」「消費財」「電力・インフラ・テクノロジー」です。豊田通商は、本社の組織として「アフリカ本部」という、総合商社で唯一の海外(ヨコ)の本部レベルの組織を設けており、自他ともに認めるアフリカ最強商社です。
双日
キーワード:「古くて新しい」「事業・人材を創造」「発想」「若手」
「古くて新しい」
双日は、2004年にニチメンと日商岩井が合併して誕生した新しい商社ですが、元をたどると古い歴史を持っています。ニチメンは1892年創業。日商岩井は1968年に岩井産業と日商が合併し誕生しましたが、それぞれの創業は1862年と1874年。各社が創業から100年以上の歳月の中で培ってきた事業創造のDNAは、現在の双日にも受け継がれています。一方で、若い会社ということもあり新しい発想も大事にしています。
「事業・人材を創造」
2030年に向け、双日の目指す姿は「事業や人材を創造し続ける総合商社」であり、マーケットニーズや社会課題に応える価値(事業・人材)創造を通じ、企業価値の向上を目指しています。そもそも総合商社としての使命を「必要なモノ・サービスを必要なところに提供する」ことと定義しています。一つひとつの事業創造を通じて、顧客やパートナーとの接点が生まれ、深まり、その次の事業へと繋がる。そして、その過程で獲得した新しい機能や人材の成長によって、新たなビジネスチャンスを捉えていく。双日は、そのように成長して続けてきました。
また双日は、事業を創造するためには、必ずしも双日の社員でなくても良いという柔軟な考えを持っています。例えば、双日OBのネットワークである「双日アルムナイ」、35歳以上の社員のやりたいことの支援する「双日プロフェッショナルシェア」、独立・起業を企図する社員を支援する「独立・起業支援制度」などのユニークな制度を設け、緩やかな双日グループを形成し、それらと連携して事業を創造しています。
「発想」
双日は、「発想」で新たな価値を創造し、それをビジネスとして「実現」する会社であることを表すため「Hassojitz(ハッソウジツ)」という造語を大々的にアピールしています。
2019年に、社長の発案で新規事業創出プロジェクトとして「Hassojitzプロジェクト」がスタートし、毎年開催しています。挑戦や発想を実現につなげる双日らしい価値創造の仕組みの一つで、社員一人ひとりの「発想」を起点とするビジネスアイデアが競われます。実際に新会社が設立され、4年目の社員が社長に就任したりしています。社員の挑戦を応援する風通しの良い企業風土のもと、組織を超えた共創の取り組みが進んでいます。双日の「発想」は、「戦術的」なもので、新しい視点を手段として直にビジネスにつなげていくイメージです。一方、物産の「志」は、「戦略的」のもので、社員一人ひとりが高い志を持ち、自分の信念を貫く家庭で生まれた付加価値をビジネスにしていきながら、その大きな志の実現を目指していくイメージです。
「若手」
双日は、2004年の合併の影響もあり、30代後半から40代の人員が不足しています。双日はもともと若手にチャンスを与える会社ですが、この人口プラミッドの歪みにより、本来、30代後半が担う役割を30代前半が、30代前半が担う役割を20代後半が担うというように、若手により裁量権のある仕事が回ってくる環境にあります。
加えて、指導員制度やメンター制度、Hassojitzプロジェクトなどの育成の仕組みも整えています。若いうちから裁量のある仕事を任されたいと考えている人にとって望ましい環境かもしれません。
第二部(基礎編)
2−1.「歴史・企業理念」から「企業文化」を学ぶ
「歴史」や「企業理念」をあなどることなかれ!
企業選びをする際、会社の「雰囲気」や、そこで働く「人」を重視している就活生は多いと思います。どのような雰囲気の中で、どのような人たちと一緒に働くかはとても重要な要素です。では、会社の「雰囲気」や、そこで働く「人」は、どのようにして生まれてくるのでしょうか?
それらは、さまざまな要因が複雑にからみ合い生まれるものですが、その軸となるのが、「歴史」と「企業理念」であると私は考えます。
一般的に企業の寿命は「30年」と言われています。変化のスピードが早い現代ではもっと短いかもしれません。
一方、世の中には、「100年企業」という言葉があり、それらは「老舗企業」と呼ばれていますが、商社の歴史は総じて長いと言えます。その長い歴史を通じて、また、長い間大切にしてきた企業理念を通じて、社風や人が少しずつ形作っていったことでしょう。それでは各社の「創業年」を見てみましょう。
創業年が一番古い伊藤忠商事と丸紅は、1858年の創業ですので、2022年に創業164年を迎えました。
双日は、日商岩井とニチメンが合併し、2004年に誕生しましたが、もとをたどれば、日商岩井の前身の日商が1874年、岩井産業が1862年、ニチメンの前身の日綿実業が1892年の創業ですので、長い歴史を持つ会社であると言えます。
商社業界においても淘汰された会社は数多くありますが、この7大商社は長らく存続し続けています。それはなぜでしょうか? 理由は3つあると考えます。
つまり、「企業理念」を大切にしてきたからこそ、長い間、企業として存続・発展することが可能となり、そのことが「企業文化(会社の雰囲気や、そこで働く人)」を醸成していったと言えます。
現在は、多様性の時代と言われていますが、「企業理念」という土台が会社の雰囲気や、そこで働く人を生み出し、その土台の上に多様性が広がっているということだと思います。
それでは、各社の歴史と企業理念について細かく解説していきます。
なお、歴史については、企業文化に影響を与えていると思われる部分を中心に記載しました。各社の歴史は各社のホームページに掲載していますので、一度読んでみてください。
三菱商事
三菱財閥の「商事会社」として発展し、リーディングカンパニーへ成長
三菱の起源は1870年。土佐藩出身の岩崎彌太郎が海運事業を興したことに始まります。2020年は、岩崎彌太郎が海運事業を起こしてから150年という節目の年となりました。
創業当時の特徴は以下3つであり、これらが三菱商事の土台を作ったと考えられます。
このように、三菱商事は、三菱財閥の一角として貿易業務を担い、当時から政府や海外との強いコネクションを持っていたわけです。
その後、三菱商事は日本の生産品の輸出や、海外からの生産品・資源の輸入、最新の工業技術の日本への導入などを通じて、先行する三井物産を追いかけ、第二次大戦前には「総合商社」の業態へと進化を遂げていきました。
第二次世界大戦後の1947年、GHQの財閥解体によって解散、1954年に再興を果たし、現在の三菱商事が発足しました。
三菱商事は、三菱財閥のメーカーへの「原料輸入」の機能を担っていたことから、伝統的に資源ビジネスに強みを持っています。また、三菱財閥の中核会社ということで、各国政府とのコネクションも強く、大型プロジェクトを担う機会も多いのです。
三菱商事らしさは「三綱領」から生まれる
三菱には、150年の歴史の中で引き継がれてきた経営の根本理念があります。それが「三綱領」です。1920年の三菱第四代社長岩崎小彌太の訓諭をもとに、1934年に旧三菱商事の行動指針として制定されたものです。旧三菱商事は1947年に解散しましたが、現三菱商事においてもこの三綱領の精神は役職員一人一人の心の中に根づいており、三菱商事がビジネスを展開する上で、また地球環境や社会への責任を果たす上での拠り所となっています。
一言でいうと、「所期奉公=社会貢献」「処事光明=フェアプレー」「立業貿易=グローバル」と言えるでしょう。英語表記の方がわかりやすいかもしれません。
実際に、三菱商事の社員に対する私の印象も、公明正大(私心をさしはさまず、公正に事を行うこと)で品格があり、紳士的な人が多い印象です。
この「三綱領」の精神が社員に十分に浸透しているように感じられます。
伊藤忠商事
近江からの麻布の「持ち下り」がルーツ。個の力を尊重する商人文化を醸成
伊藤忠商事と丸紅のルーツである伊藤忠兵衛が、近江から麻布(まふ)の「持ち下り(出張卸売販売)」をはじめたのは1858年。貿易については、1885年に雑貨輸出を試みたが発展せず、その後、1904年に輸出部を設置し、朝鮮、中国などへ直輸出を行うようになりました。1918年に、呉服反物・洋反物・京呉服を取り扱う「伊藤忠商店」と、綿糸布取引と一般輸出入を営む「伊藤忠商事」に分かれ、前者が1921年に「丸紅商店」と改称されました。
創業時から受け継がれる「商人魂」
①信用・信頼
近江は、大阪や江戸といった商いの中心地から離れた地にあります。大阪商人や江戸商人は、店を構えることさえできれば、顧客が店にやってきますが、近江商人は、天秤棒を担ぎ遠隔地に赴いて商いを行わなければなりませんでした。サンプルを見せながら商談を行い、現物は後日、遠方から送り届け、そこではじめて代金を受け取りました。そのため何よりも「信用」や「信頼」を重んじてきました。
伊藤忠は現在「コミットメント経営」を重視しています。不確実・不透明さの増す時代において、中長期的な経営戦略の実現性に対する信頼度の向上を図るには、まずは単年度の目標を必ず達成し、「有言実行」を着実に積み重ねていき、ステークホルダーの信用・信頼を勝ち得ることが必要であるという考え方です。
また、近江商人は自分の足で歩いて各地の需要や地域による価格差などの情報を仕入れ、全国的規模の商品流通をおこなっていました。このような伝統から「現場」を大切にする風土が生まれたと考えられます。
②個の力
店舗で商売を行う大阪や江戸の商人とは異なり、近江商人は自らの足で商売を開拓する必要がありました。そのため、開拓者精神と個の裁量で商いを切り拓き、判断する「個の力」を養っていきました。その後も、伊藤忠の得意とする小規模で顧客数が多い衣食住の分野での商いを積み重ね「個の力」により一層磨きをかけていきました。
③倹約
1872年に定めた「店法(たなほう)」には、「質素倹約を重んじ、勤勉であるべき」と記されています。これは、持ち下りの商いは薄利多売であったことに加え、祖業である繊維では、重厚長大型のビジネスとは対照的に銭単位で利益を積み上げていく必要があったためです。そして現在も、伊藤忠グループ全体で継続的に取り組んでいる「か・け・ふ」の一つである「削る」や、最小限の投資によって最大の効果を狙う経営姿勢として受け継がれ、約9割を誇る黒字会社比率 や連結純利益の持続的な拡大、業界トップクラスの資本効率に繋がっています。
④「積極・機敏・合理」
初代伊藤忠兵衛は、極めて先進的な考え方を持った経営者でした。たとえば、会議制度、洋式帳簿の導入、学卒者の採用、運送保険の利用など先駆的な経営手法を導入していきました。 常識に囚われることなく、また流行に流されることもなく、商人としての嗅覚を頼りに本質を洞察し、合理的であると判断した際には積極的に導入する「積極・機敏・合理」の経営哲学も、時代を超えて受け継がれています。2013年頃には 資源バブルの終焉を予想し、いち早く強みを持つ「非資源分野」の強化に取り組んだのはその一例です。 また、健康経営をはじめとする人材戦略、コーポレート・ガバナンスにおける指名・報酬制度の設計、あるべき論の長期経営計画は策定しないこと等、「企業価値を持続的に向上させていく上で合理的かどうか」を基準とし、導入の是非を判断しています。
⑤自由闊達と謙虚さ
初代忠兵衛は、月に6回、1の日と6の日に「すき焼パーティ」開催していました。パーティの場では役職を超えて自由に議論を戦わせていたようです。また、相撲見物、夏の涼み船、お祭り見学などのレクリエーションを頻繁に開催していました。このように、伊藤忠には「自由闊達」な伝統があり、また、学閥も他社に比べ少ないと言われています。
また、他国で商いをする近江商人は常によそものでした。他国で経済活動を継続的に許されるためには、常に謙虚な姿勢を持ち地域社会への貢献にも努める必要がありました。このようにして、伊藤忠パーソンは、商人としての謙虚さを大切にしていると言えます。
企業理念を「三方よし」に 28年ぶり改訂
伊藤忠は、2020年4月1日に伊藤忠グループの企業理念を「三方よし」に改訂しました。
以前の企業理念は、1992年に策定した「Committed to the Global Good (豊さを担う責任)」ですので、28年ぶりの改訂となります。
近江商人の経営哲学である「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」を理念とすることで商売の原点に立ち返り、世界で広がる「SDGs(持続可能な開発目標)」にも沿うものだとしています。
現在、第4次産業革命とも言われる「デジタル化」への対応や、新型コロナウイルスとの共生が求められる中、伊藤忠グループは厳しい経営環境を迎えています。これを乗り越えていくためには、「伊藤忠らしさ」 として、誰もが共感できる価値観を打ち出し、当社グループ全体の結束力を更に高める必要があると判断し、このタイミングで企業理念の改訂となりました。
今まで、「Committed to the Global Good (豊さを担う責任)」が企業理念でしたが、社員の根底には「三方よし」の精神が浸透していましたので、今回の改訂は自然な流れであり、社員にとって違和感のないもです。
滋賀大学宇佐美名誉教授によれば、「『売り手によし、買い手によし、世間によし』を示す『三方よし』という表現は、近江商人の経営理念を表現するために後世に作られたものであるが、そのルーツは初代伊藤忠兵衛が近江商人の先達に対する尊敬の思いを込めて発した『商売は菩薩の業(行)、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの』という言葉にあると考えられる。」とのことです。自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う「三方よし」の精神は、現代のCSR(Corporate Social Responsibility)につながるものとして、伊藤忠の経営理念の根幹となっています。
鈴木善久 前社長COOは、2020年の年頭あいさつで「三方よし」について以下のように語っています。「三方よし」の精神で、伊藤忠の成長を加速していくと共に、社会課題や環境課題を解決し、持続可能な社会の実現を目指していく覚悟が感じられます。少し長いですが読んでください。
「ひとりの商人、無数の使命」
企業理念の改訂に合わせて、コーポレートメッセージであった「ひとりの商人、無数の使命」が「グループ企業行動指針」として位置付けられました。「ひとりの商人、無数の使命」は、「求められるものを、求める人に、求められる形で」お届けするために、社員一人ひとりが自らの商いにおける行動を自発的に考えることにより、「個の力」等を発揮できるという「伊藤忠らしさ」を表した言葉です。
伊藤忠の社員に感じるのは、「自由闊達な精神」「風通しの良さ」「困難に挑み続ける野武士集団(最近はスマートさも備えているように思います)」「個の力」「いかなる環境にも適応し、危機を乗り越えていく現場力」「最後までやり抜くプロ意識」などです。これらは、麻布の「持ち下り」を起源としていることや、初代忠兵衛の経営の影響が色濃く出ているものと思います。
三井物産
挑戦と創造、世界をまたにかけて活躍する商社パーソンのイメージ
旧三井物産は1876年に創業しました。益田孝が、新政府から貿易事業に取り組んでほしいとの要請を受け、直貿易の拡大を目指し設立したものです。創業期の旧三井物産は、外貨獲得の政治目的に沿った直輸出商社といえますが、当初は国内取引と直輸入業務の比重が大きかったようです。政府御用商売が多く、政府から委託された商品の取り扱いが中心でした。旧三井物産は、いち早く海外ネットワークの構築をスタートさせ、グローバルにビジネスを展開しはじめます。1877年上海、1878年パリ、1880年ロンドンに支店を設置し、1893年にはボンベイに出張所を設置しました。日本の綿糸紡績業は1800年代後半に急速な発展を遂げましたが、旧三井物産は、その発展を「オーガーナイザー」として支えてきました。英国製の紡績機械の輸入を手掛け、中国やインドから綿花を輸入しました。このようなさまざまな事業の成功により、旧三井物産が取り扱う輸出や輸入のボリュームは、当時の日本全体の5分の1から4分の1となりました。日本の近代工業への転換の一翼を担ったのが旧三井物産であったと言えます。1893年に合名会社に改組した頃には「総合商社」としての形態を整えていたと言われており、旧三井物産は「元祖総合商社」であると言えます。(総合商社=取り扱い商品の多様性、海外ネットワーク、事業規模、学卒者の採用、リスク管理、投資といった観点で)。私の中では、三井物産パーソンは、「世界をまたにかけて活躍する商社パーソン」のイメージに一番近いように感じます。
三井物産の価値観 ー初代社長 益田孝が遺した価値観ー
1876年創立の旧三井物産は、第二次世界大戦後間もなく財閥解体により解散しました。その後、「挑戦と創造」「自由闊達」「人材主義」といった価値観を共有した元社員たちにより、現在の三井物産は1959年に立ち上がりました。旧三井物産の初代社長・益田孝が遺した価値観や仕事の姿勢は、三井物産の事業や仕事の進め方、ものの考え方の基本に受け継がれています。
経営理念(MVV:Mission、Vision、Values)を改定
三井物産は2004年、それまで暗黙知として共有してきた価値観・理念を体系化・明文化しました。2020年にはさらに、「三井物産の経営理念(MVV:Mission、Vision、Values)」を改定しました。
2004年に体系化・明文化した理由は、経営理念の共有は、三井物産がグローバルな事業活動を通じて世の中に本当に価値のある仕事を創造していく上で、今までにも増して重要になっていくと考えたからです。当時の経営理念の内容は以下のとおりです。
三井物産は、2020年5月1日に経営理念を改定しました。三井物産のプレスリリースによると改定の狙いは以下のとおりです。
新しい三井物産の経営理念(MVV:Mission, Vision, Values)は以下のとおりです。
経営理念の新旧対照表は以下のとおりです。
なお、安永竜夫元社長は『統合報告書 2019』『統合報告書 2020』の中で、社名についてこう語っています。
三井物産は、三菱商事と並び、「グローバル」という意識が強い会社であると言えます。堀健一社長は、「統合報告書2022」の中で、Visionである「360° business innovators」の360°が意味することの一つは「地球規模で考えること」であると述べて上で、次のように語っています。
住友商事
住友商事の原点は400年前
17世紀、住友政友が京都に書林(書店)と薬舗(薬局)を開設し、住友の歴史は始まりました。のちほど詳しく説明しますが、政友は商人の心得を説いた「文殊院旨意書(もんじゅいんしいがき)」を残し、その教えは400年にわたり「住友の事業精神」の基礎として住友グループにて継承されています。その後、住友の事業は銅鉱山・精錬業とその関連事業を中心に成長・発展していきました。
住友商事のルーツは、1919年に設立された大阪北港株式会社とされています。大阪北港地帯の造成と隣接地域の開発などをおこない、不動産経営をおこなう会社であり、貿易や商取引をおこなう、いわゆる「商社」の業態とは異なっていました。住友財閥は、資源開発・製造業などの分野を中心とすべきで、人材面・企業体力面から商事活動進出の機が熟していないとの慎重な経営判断から、第一次大戦時の「商社」の設立を見送っています。このような慎重な経営判断は、「住友らしさ」を表しているように思います。
第二次世界大戦後、財閥解体を迫られることは確実と考えた住友本社は、財閥解体に伴う住友系の従業員の雇用の確保、海外引き揚げ者とその家族の援護などの理由から、または、住友以外の商品を取り扱うことで、情報収集の観点から住友グループ全体の利益拡大につながるとの理由から、1945年に「住友土地工務」は「日本建設産業」へと改称し、商事活動を開始しました。後発組であるが故に、経営基盤の確立に取り組み、与信管理制度の厳格な運用など堅実経営を実践するとともに、1950年、ボンベイ(現・ムンバイ)に初の駐在員を派遣、1952年にはニューヨークに米国法人を設立して海外への布石を打ちました。1952年に社名を「住友商事株式会社」と改め、現在に至っています。
住友の事業精神
「住友商事グループの経営理念・行動指針」の原点は、創業以来約400年にわたり脈々と受け継がれてきた「住友の事業精神」にあります。「住友の事業精神」とは、住友家初代の住友政友(1585-1652)が商売上の心得を簡潔に説いた「文殊院旨意書(もんじゅいんしいがき)」を基に、何代にもわたって磨き続けてきたもので、その要諦は「営業の要旨」として引き継がれています。それにしても、創業以来約400年にも亘り、磨き続けられ、受け継がれてきたとは大変な驚きです。これが「住友らしさ」ではないかと思います。
住友商事グループの根底には、いつの時代でも、目の前の変化に惑わされることなく、「信用・確実」「浮利(ふり)を追わず」「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)」に重きを置きつつ、「進取(しんしゅ)の精神」をもって変化を先取りしていくという、400年にわたり脈々と受け継がれてきた「住友の事業精神」が流れています。
住友商事グループの「経営理念・行動指針」は以下のとおりですが、「住友の事業精神」を現代風に焼き直しています。このように、企業の軸となる理念や精神が、太ければ太いほど、強みとなっていきます。
『統合報告書 2022』の中で中村邦治会長は、時代は急速に変化していると述べた上で、次のように語っています。
創立100 周年コーポレートメッセージ 「Enriching lives and the world」
2019年は、住友商事のルーツである「大阪北港株式会社」が1919年に設立されてから100年という記念すべき年でした。この創立100周年を記念して策定したコーポレートメッセージ「Enriching lives and the world」は、健全な事業活動を通じて、世界を、社会を、人々の暮らしを、より豊かにしていくという、これまでも、そして、これからも変わらない住友商事の誓いです。詳しくは、『2−2. 「コーポレートブランディング」から「企業イメージ」を学ぶ』で説明します。
丸紅
社是「正・新・和」を揺るぎない道標として時代の変化を先取り
伊藤忠商事と丸紅のルーツである伊藤忠兵衛が、近江から麻布(まふ)の「持ち下り(出張卸売販売)」をはじめたのは1858年のこと。伊藤忠商事が、伊藤忠兵衛の影響を大きく受けている一方、丸紅は、丸紅商店専務の古川哲次郎と、丸紅株式会社初代社長の市川忍の影響を受けているように思います。
丸紅商店専務 古川 鉄治郎(1878年~1940年)
古川鉄治郎の経営哲学は、近江商人の『三方よし』(売り手によし、買い手によし、世間によし)の精神と『陰徳善事』の実践にあります。『陰徳善事』というのは、人に知られないように善行を施すことです。
丸紅株式会社初代社長(在任期間:1949〜1964年) 市川 忍(1897年~1973年)「丸紅」の発展の基礎を築く
初代社長 市川忍の精神は社是として、丸紅の中で今も生き続けており、今日の経営理念の基礎となっています。
経営理念
社是
柿木真澄社長は、『統合報告書2022』の中で社是に関し次のように語っています。
丸紅スピリット
丸紅は、グループの目指す企業風土を個人の行動に落とし込んだ「丸紅スピリット」を2013年に定めました。「挑」=「挑戦者たれ」の精神が、のちほど説明するイノベーション(新しい取り組み)へと駆り立てているのではないかと考えます。社員の雰囲気としては、「和」=「親和協力せよ」にあるとおり、親しみやすく、協力的な社員が多い印象があります。「丸紅スピリット」が策定された後の2014年度の入社式で、当時の國分文也社長は、以下の社長訓示を述べました。
とがった丸になれ、丸紅。
丸紅は、メッセージとして「とがった丸になれ、丸紅。」を発信しています。丸紅からは、「このままではいけない」という危機感を強く感じ、自己変革意欲の高い会社だと感じます。
豊田通商
トヨタグループの総合商社としての道を歩む
トヨタ車の販売金融を行う「トヨタ金融株式会社」は1936年に創立されました。戦後の財閥解体により解散した後、1948年にその商事部門を継承して設立された「日新通商株式会社」が、豊田通商のルーツです。豊田通商は、トヨタグループの総合商社として完成車の輸出などを通して成長していきました。1980年代に入り、トヨタグループ各社が、国内からの輸出のみならず、世界各国で海外生産を開始しました。これに伴い豊田通商も、海外に販売拠点を相次いで設立するなど、トヨタのグローバル化に伴い、海外進出を加速させていきました。
M&Aにより事業領域を拡大
自動車分野に強みを持つ豊田通商ですが、M&Aを通じて事業領域を拡大していきます。
2000年には、「加商株式会社」を合併し、輸入を強化しました。
2006年には、「株式会社トーメン」を合併し、インフラ分野や化学品分野、食料分野など、自動車以外の分野へと本格的に進出し、バリューチェーンの大幅な拡大を進めました。
2012年には、アフリカに強みを持つフランスの商社「CFAO社」へ過去最大規模となる投資を行い、2016年に完全子会社化しました。これによりアフリカ全土に拠点を持つことになりました。
このように、豊田通商は、M&Aを通じて「総合商社」へと進化を遂げています。
豊田通商の総合商社化の歴史は以下の通りです。
豊田通商の理念体系
豊田通商の理念体系は、全体的によく整理されていると思いますし、一つひとつを見ていくと、豊田通商らしく共感できるものばかりです。ただ、理念体系がやや複雑すぎる印象です。
全体図
企業理念
行動指針
豊田通商 グループウェイ
「現地・現物・現実」とは、事業の最前線である現場に寄り添い、知恵を絞り汗をかきながら、縁の下の力持ちとして「サプライチェーンを守り抜く」という、トヨタグループの一員として大切にしている基本的な考え方です。
「現地・現物・現実」に加えて、諦めずビジネスにチャレンジし続ける姿勢を指す「商魂」や、プロとしての専門性と誇りを身に付けた一人ひとりの「強い個」が自らの役割を果たすことで「強い組織」となり発揮される「チームパワー」が、豊田通商のDNAとして脈々と受け継がれています。
双日
設立は2004年だが、元をたどると古い歴史を持つ商社
双日は、ニチメン株式会社と日商岩井株式会社が、2003年4月に持ち株会社を設立し、翌2004年4月に合併して誕生した会社です。
7大商社の中でもっとも新しい会社ですが、合併前のそれぞれの会社は長い歴史を持っています。
このように双日は、開国、明治・大正期の産業革命、戦後復興、高度成長といった近代日本の発展の過程で大きな役割を果たしてきた日本綿花、岩井商店・鈴木商店を源流とする歴史ある商社です。ニチメン株式会社と日商岩井株式会社の詳細を知りたい方は、双日の統合報告書の4ページと5ページを参照してください。
企業文化の異なる2つの会社を1つにまとめるのは大変なことです。これから説明する企業理念が社員全員の拠り所となり、心を一つにする役割を果たしていると考えています。
また、双日グループは、グループ各社が一体となって活動していくために、ひとつのグループ名称と、ひとつのグループシンボルを掲げるワンブランド戦略を基本としています。
2−2.「コーポレートブランディング」から「企業イメージ」を学ぶ
商社はかつて、B to B(Business to Business:企業向けビジネス)が中心でしたが、最近は、B to C(Business to Consumer:一般消費者向けビジネス)など、ビジネス形態が多様化してきています。また、最近はSDGs(持続可能な社会を実現するための国際目標)が重視され、企業への投資においても、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を考慮した「ESG投資」が増加しています。さらに、人材獲得競争が激化していく中、新卒採用やキャリア採用の志望者に対し、自社の魅力をアピールしていく必要性も高まってきました。
そのため、各商社は現在、社会全体に対して、また、投資家・ステークホルダー・一般消費者・求職者等に対して、自分たちの「存在意義」を示していくことに注力しています。「自分たちはいったい何者なのか?」「自分たちが果たすべき社会的責任や使命は何か?」「それをどのように果たしていくのか?」といったことを、メディアを通じて積極的に発信しています。商社はかつては黒子的な存在で、そこまで表に出てきませんでしたが、最近はT Vコマーシャルを出すなど露出度は大幅に増えています。
私の記憶では、この流れの先駆けとなったのは、伊藤忠商事の2014年のコーポレートメッセージ『ひとりの商人、無数の使命』です。ブランドマーケティングの神様で、数々のファッションブランドを手掛けてきた岡藤正広当時社長の「企業もブランディングしていくべき」との考えに基づいたものです。その後、各社が追随しています。
各社のコーポレートブランディングを比較していく際に、何かしらの「軸」を置くとわかりやすいかもしれません。例えば、価値提供の仕方に着目した場合、以下のようになると思いますが、各社の違いが見えてくるかもしれません。
それでは、各社のコーポレートブランディングを分析していきましょう。それらを通じて、それぞれの会社はどのような会社だと感じましたか?皆さんの心にはどの会社のものが響きましたか?また、それはなぜですか?それを考えていけば、おのずとその会社の志望動機が見えてくることでしょう。コーポレートブランディングへの力の入れようは各社各様です。ホームページ上に特設ページを設けている会社もあれば、1、2年前からアップデートされていない会社もあります。それでもコーポレートブランディグは、世間にどのような会社と捉えて欲しいかを示すものですので、その分析の意味は十分にあると考えます。
三菱商事
世界とひとりのために。
三菱商事が、価値創出の源泉としているのは、三菱商事の独自かつ普遍的な
「人的資源」であり、以下4つの能力・資質からなっています。
これらを情緒的に伝えている印象を持ちました。また、「仕事が広がるほど、複雑になるほど、その先にある一人の幸せを想う。」という表現から、よい意味でプライドの高さを感じ、三菱商事にしか出来ないことに挑戦していく気概を感じました。
やはり三菱商事には、「世界」や「産業」という言葉が頻出します。また、「つなぐ」という言葉も良く出てきます。その世界のつなぎ方として、「経験とデジタルの力で」とあります。では、「経験」とは何でしょうか?それは、三菱商事が強みとして持つ「総合力」の発揮によって得た「経験」で、他の商社よりも広く・深いものであると考えます。「総合力」については、1-1. のキーワードのところを参照ください。
伊藤忠商事
暮らす。愛する。商いする。
2020年に、「三方よし」に企業理念を改訂したことに合わせて、当時のコーポレートメッセージであった「ひとりの商人、無数の使命」を「グループ企業行動指針」として位置付けました。「ひとりの商人、無数の使命」は、「求められるものを、求める人に、求められる形で」お届けするために、社員一人ひとりが自らの商いにおける行動を自発的に考えることにより、「個の力」等を発揮できるという「伊藤忠らしさ」を表した言葉です。
なぜ伊藤忠は、「使命」という言葉を使っているのでしょうか?そもそも「使命」とは、「与えられた重大な務め」「責任を持って果たさなければならない任務」のことです。「使命」という言葉をあえて使っていることから、伊藤忠の社員は、「商人」としてお客様や世間のために任務を果たすことが求めれられていることが再確認できます。
「ひとりの商人、無数の使命」に加えて、2021年1月より、「Dear LIFE 生活って宇宙だ。」という世界中の人々の生活にフォーカスした広告をはじめました。
そして、2022年6月より、世界情勢が厳しい状況にある中、「商い」の存在意義を示す「暮らす。愛する。商いする。」の広告がスタートしました。
「暮らす。愛する。商いする。」の主語は何でしょう?いろいろな考え方がありますが、私は、この3つの動詞の主語はすべて、「世界中の人びと」だと思います。それを寄り添い、支えるのが伊藤忠であると解釈しました。また、他の商社が「ビジネス」という言葉を使う中、なぜ伊藤忠は「商い」という言葉を使っているのでしょうか?これもいろいろな考え方がありますが、「ビジネス」を経済活動全般と捉えるとしたら、「商い」というのは、目の前の相手に対し、物やサービスを届けるということだと思います。近江商人の時代から「商い」をしてきた、伊藤忠のこだわりのように感じます。
伊藤忠はビジネス以外にも積極的に消費者との接点を持とうとしています。具体的な取り組みの一つが『星の商人』です。
伊藤忠は、『星の商人』という季刊の雑誌をホームページ上で公開しています。冊子を希望する方には郵送もしているようです。これもコーポレートブランディングの一環です。
また、世の中のあらゆるSDGsに関する取り組みの発信拠点として、青山の伊藤忠ビルの隣にあるITOCHU Gardenの一角に、「ITOCHU SDGs STUDIO」を設置しており、イベントやラジオなどを通じてSDGsについて発信しています。
さらに、朝日新聞と学生との共創で「ミライテラス」を開催しています。これは、「すべての人と地球環境に優しい世界を。」をテーマに、未来を明るく照らすために何ができるのかを皆さんと一緒に考えるオンライン授業です。
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