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「団体名、変えたくなってきた」②

——演劇的なものを探してる

野村:はい、でまあ演劇を探してるっていう話の続きなんやけど。
武内:そうだね。
野村:それはさ、なんていうか、演劇作品を作り上げるというより、演劇的な制度、俺はそれをズレとキョリ(☆1)だと思ってるんだけど、っていうことを探してるっていう状態なんじゃないかな。それはみんな近いんじゃないかなって思う。

⭐︎1  ズレとキョリ
野村が考える、演劇的な制度のこと。メディアとメディアのズレ、およびそのあいだの距離から、演劇的なシーンが現象すると考えている。


瀬戸:うん。
野村:わかんないけど、陶芸の中で演劇的なものを探してるみたいな。
武内:そうだね。私にとっての演劇的なっていうものの要素が、モノ/時間/場所だったっていうことだよね。それを陶芸の中に探したりするっていう。そうだね。
野村:そうだね。コンベックス(☆2)もそうだと思う。あれなんてまさにズレとキョリだと思うから。

⭐︎2 『コンベックスの男』(2020.09 初演, UrBanguild)
2020年に瀬戸が制作したパフォーマンス作品。コンベックス(メジャー)と自らの身体をもって「まちと出会う」ことで得られた数値を体に取り込むこと、自身をまち化することで、実際のまちの景色と体とを同化させていく。無機質な記号としてのモノの集合体としてあるまちに、肉体を重ねることで新たな質感やある種の親近感を生み出す。

野村:あと、最近沙門には言ったかもしれないけど、ズレとキョリと、それからダブりっていうのが、
武内:ダブり?
野村:最近もう一個増えてて 笑
武内:うん。
野村:ズレっていうのは程度があるやん。メチャクチャずれてると、キョリはでかい。ちょっとずれてるとキョリは小さい。っていう尺度がある中で、ずれてる距離感だけ認識してたけど、重なってる部分あるやんっていう。
武内:うんうん。ベン図みたいなやつね。

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野村:うん、そこの部分のことをダブりと呼んで。
武内:
野村:キーワードに加えようと思ってるんですよ。
武内:なるほど、ダブりね。
野村:コンベックスはね、ダブりだと思う。
武内:うーん。確かにそうだよね。
瀬戸:あー。
武内:小指の長さがこのライターの長さとダブる、みたいなことだもんね。

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野村:そう、しかも距離っていう。明確に計測した距離じゃん。なんか見事に体現してるんじゃないかという気がしてて。
瀬戸:ダブりね。
野村:ずれ、キョリ、そしてダブりっていう。
武内:
野村:俺すげえ好きなんだよね。ルーム・ダビングのあたりで、ダブりっていうのを出してきてて。
武内:そうだね。
瀬戸:うん。
武内:ダブって…
野村:重ねるとかって意味。
武内:それでダブるって言ってるのか、日本語で。
野村:そうそう。
瀬戸:ルーム・ダビングより前にソロで作った作品があって、その時はマスキングテープ使ってパフォーマンスして、線に自分の思い出を重ねて、床にテープでエリアを作っていくんだけど。自分を床に移していってるみたいなところがあるから、割と近いところにいたのかな。影響を受け合ってるんだろうな。
野村:そうかも。今までは結構、並べてたんよね。見比べるみたいなことが多かったんだけど、それって批評的なあり方だよね、態度としては。
武内:うん。
野村:ダブるだと、ちょっとクリエイションっぽくなるっていうか、作品っぽくなるんだよね。
武内:日本語だとダビングって言ったら録画する複製するって感じだけどさ、調べたら英語圏ではもう一つ、映画とかテレビとかで、セリフとか音楽を別々に録音したものを、追加していって、一本にまとめるっていう意味があるらしい。
野村:オーバーダビングはそういうことだよね。別撮りして一個にする。
武内:そうだね。
野村:一個にするというよりか、重ねるイメージが強いんだよな。例えば… ビートルズとか、
武内:そう!私も今ビートルズだと思った。はっぴいえんどとか。あれぐらいの時の、録音。チャンネルがいくつもあって。

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野村:ライブ取りじゃなくて、個別にとってる。
武内:そうそう。
野村:今はもうそれがスタンダードだけどね。
武内:そうだね、そのイメージすごいわかる。音楽。
野村:ルーム・ダビングはマジで、そういうイメージ。重ねていく。超いいタイトルだね〜
武内:笑 私はルーム・ダビングめっちゃ好き。名作よ。京都でやってないのが何故って感じ。
野村:あの時も1日だけだったね、上演。
瀬戸:うん 笑 まだ再演してないもんね。あれ再演すぐできるのにね。やらない 笑
武内:二日稽古したら完全に思い出せるでしょ。もしかして今すぐでもできるかも 笑
お客さん:すみません、あのね、
野村:ん?え?
お客さん:不動産屋でエリッツさんいう、あの…
武内:エリッツ?
お客さん:エリッツの山王町の名刺もらったんやけども…
野村:山王町はこのへんですけどね、えっともう少し向こうの…
瀬戸:エリッツ…あるかな?ちょっとまってくださいね。エリッツー、エリッツー…
野村:山王町、このへんなんやけどな…
瀬戸:エリッツこのあたりないな…
武内:あ、ほんと?
野村:聖護院店、聖護院店だとどう?
武内:やっぱこのへんだね、近い。
瀬戸:そうここやねん、ここやねんけど…聖護院店…ないなー…あーエリッツ閉業してるな。
野村:閉業してる? 
瀬戸:もうやめてはる。
野村:この名刺っていつ頃もらいましたか?
お客さん:これもうだいぶ前の名刺、古い名刺やね。
野村:そうですか、もういまこの聖護院店がやってないみたいなんですよ。でもエリッツやったら他のとこでも大丈夫やと思いますよ。
武内:ここからだと百万遍が近いんかな?
瀬戸:ここからやと…そうやなー。
お客さん:そうですか、すみません。時間かけて。
野村:いえいえ。


(間)

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野村:大丈夫かな?
瀬戸:もうやってないんやな。
武内:そうね、四条か百万遍しか出てこなかった。
野村:大事な用やったらあれやな…
武内:そうだね…
瀬戸:代わりの場所もうちょっと詳しく言えたら良かったな…
武内:百万遍か、ちょっと遠いもんね。バス乗ったらまあって感じか。
野村:そうやな。まあ…で、なんやったっけ?あ、ダビングか。
武内:そうやったそうやった 笑
瀬戸:
野村:オーバーダビングがどうこうって感じやったね。
武内:不動産屋を探してる人が来て、そこは今はもうなくて、それでルーム・ダビングの話になって 笑
瀬戸:なんか絶妙な…笑
野村:
武内:笑 うん、その辺をテーマにしてもいいかもしれない、新しい名前の。
野村:ズレと、キョリと、ダビング。
武内:特にダビングかなあ、なんか。近いな。なんか別の場所から撮ってきたものをさ、おんなじ一つの場所に貯める。それを一気に放出する感じ。とか、めっちゃいいと思うんだよね。
瀬戸・野村:うん。
武内:いいね。
野村:そうそう、ってかなんでダブりの話してたんだっけ。
瀬戸:軸の。
武内:そう、速度の軸ってあえて言語化するとしたらなんかあんのかなって。
野村:ダビング。そのイメージは持ってる気がする。演劇的なものを探しに行くっていうのと、それをダビングするっていうこと。
武内:ファウンド・オブジェ(⭐︎3)じゃなくて、ファウンド・シアターだね。

⭐︎3 ファウンド・オブジェ
「見出された対象」。端的に言えば、いちど何らかの目的のもとに使用された「物」のことであり、より限定的に言えば、そのなかでも芸術作品を構成する要素として流用・転用された「物」を意味する。
出典:artscape https://bit.ly/3vGwimL


瀬戸:うーん。
野村:ファウンド・シアター。
武内:ファウンド・シアター…
野村:きたんじゃね?
瀬戸:ファウンド・シアターはなあ、シアターっていう響きの印象がさあ。
野村:劇団っていうよりまだいいんじゃない?
瀬戸:まあまあ。なんかシアター、映画館のイメージが強いからさ。商業的なショーみたいな感じで使ってることの方が多いからさ。
武内:(ググった)一応、ファウンド・シアターなんてものはこの世にはまだないみたいですよ 笑
瀬戸:
武内:ないです。
野村:ない?
武内:あ、found theatreで調べたらあった…笑 なんだろうね、演劇的なものをさす他の言葉。
野村:シアトリカル。
瀬戸:うーん… シアトリカルねえ…
武内:わかりました、私。
野村:なんでしょう。
武内:ファウンドの後に続く言葉が。
瀬戸:お!
武内:プレイ。
瀬戸:あー…
武内:プレイじゃない?
野村:プレイかもしれない。
武内:遊びっていう意味が日本語では強いけど、劇みたいなさ。
瀬戸:演じるとかね。
武内:そうそうそう。みたいなことでもあるし。私が陶芸をクレイとキルンに分けたりしてる(⭐︎4)けどさ、演劇って、ドラマとプレイなんじゃないかって。

⭐︎4 『クレイ・ウィスパーズ/キルン・ウィスパーズ』(2020.09, kara-S)
2020年に武内が企画した陶芸の展示。陶芸の制作過程を、クレイ(粘土)とキルン(窯)の2つに分けることで、陶芸の特異性について考える。
kara-S webサイト http://www.kara-s.jp/gallery/20200928_clay_kiln.html


野村:あ、ちょっと待ってね。
武内:うん。
野村:って書いてあった?
武内:ううん、私が勝手にそう思っただけ 笑 ドラマとプレイどっちかでもいいし、どちらも合わさることもある。演劇の二代要素として分類するとすれば、この二つなんじゃないかって今思った。英辞郎で英単語を見てて思った。シアターのエレメントとして抜き出すとしたら。英語は私はわからないから、ニュアンスがどうかだけど。
野村:なるほど。あそっかあ。要リサーチやな。
武内:うん、プレイの方が、対象となるものに対して、それになってやってみよう、みたいな、そういう気楽な感じが私には伝わった。
野村:確かにファウンド・シアターだと思想っぽい。
瀬戸:うーん。
野村:イメージだけど、ニュアンスなんか思想っぽい。多分だけど、根拠ないけど、俺らの言う演劇と芝居の違いって、シアターとドラマの違いだと思う。
武内:ドラマトゥルギーは?
野村:あー、元々はドイツ語ってかドイツでの役職だから、確か。ドイツ語で言うところのドラマのニュアンスがわからないからなんとも… ドラマターク。
武内:ドイツ発、世界輸入か。
野村:Found Berlinとかかっこいい。
武内:ファウンド・ベルリン!?
瀬戸:ヤバ
武内:なんかちょっと思想強そう 笑 クソかっこいいけど。多分アー写は緑のクロマキーバックなんやろうな。でグーグルアースとかでベルリンの市街地の上に乗ってるみたいな感じにするんやろうな 笑

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野村:どっかの街の名前とかでも良いかも。
武内:Found Tokyo , Found Kyotoとか?
瀬戸:
野村:ファウンドキョートはなんかちょっと会社っぽい 笑
武内:スローガンみたい 笑
瀬戸:旅本みたい 笑
野村:やっぱベルリンが一番かっこいいっしょ。
武内:かっこいいけど… なー。
瀬戸:ちょっと偏りが… ひどい 笑
武内:
瀬戸:酷く偏っているように見える 笑
野村:そうだね… ああ、まあちょっと話を戻すと、KIACでも話したことだけど、最初になんで「劇団」ってつけたかって言うことだけど、批評的に響けばっていいっていうか…
武内:そうだよね。
瀬戸:うん。
野村:あえて劇団って名乗ることで、これも演劇なんですか?って言うところで拡張していくって言う意識で。演劇に対してすでに持ってるイメージに乗ったところから外れていくって言うか。そういう態度でいたから、クラシックな冠つけてたっていうのが本当のところで。最初はまあ機能するかなって目論見はあったけど、そうはうまくいかなかったですよね。ずーっと、だからなんていうか、いわゆる演劇みたいなものを槍玉にあげてるっていうか、なんかね。実は全然関係ないことだったよね。別にもうそういうのいいじゃんっていう。普通にストレートな態度を… アイロニーとかじゃなくって素直な…
武内:そうだね。
野村:素直な態度を示したいよね。
瀬戸:そうだよねー。
武内:もはや関係なくてもいいんだからね。でもまあ確かに、4年前とかだったら、そういう態度はうなずけるけど。具体的に何が変わったとかは言えないんだけど。
野村:普通に素直になったんだと思うよ。シンプルになった。

(タバコの灰が白Tに落ちる)

野村:終わったわ!うわー、取れるかな…
瀬戸:自分でトラップ引っかかっちゃてんじゃん 笑
野村:最悪だね、落ちるかな?
瀬戸:ふふふ 笑
武内:灰はねー、結構粒子細かいからねー…
野村:えー、終わったかな、一生終わったのかな。
瀬戸:タバコなんか吸ってるからですよ。
武内:あ!? 笑
瀬戸:タバコ吸ってなかったら… 笑
野村:身も蓋もねえな 笑
瀬戸:
野村:取りつく島もないよ。
瀬戸:アッハッハ 笑
野村:笑 なんか正論てやっぱムカつくな 笑
瀬戸:
野村:なんかもう、は?しか言えねーもん 笑 だってタバコ吸ってなかったら、ねえ。
瀬戸:そんな突き刺さるとは 笑

(野村タバコに火をつける)

                                (つづく)


⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

[註釈]

⭐︎1  ズレとキョリ
野村が考える、演劇的な制度のこと。メディアとメディアのズレ、およびそのあいだの距離から、演劇的なシーンが現象すると考えている。

⭐︎2 『コンベックスの男』(2020.09 初演, UrBanguild)
2020年に瀬戸が制作したパフォーマンス作品。コンベックス(メジャー)と自らの身体をもって「まちと出会う」ことで得られた数値を体に取り込むこと、自身をまち化することで、実際のまちの景色と体とを同化させていく。無機質な記号としてのモノの集合体としてあるまちに、肉体を重ねることで新たな質感やある種の親近感を生み出す。

⭐︎3 ファウンド・オブジェ
「見出された対象」。端的に言えば、いちど何らかの目的のもとに使用された「物」のことであり、より限定的に言えば、そのなかでも芸術作品を構成する要素として流用・転用された「物」を意味する。
出典:artscape https://bit.ly/3vGwimL

⭐︎4 『クレイ・ウィスパーズ/キルン・ウィスパーズ』(2020.09, kara-S)
2020年に武内が企画した陶芸の展示。陶芸の制作過程を、クレイ(粘土)とキルン(窯)の2つに分けることで、陶芸の特異性について考える。
kara-S webサイト http://www.kara-s.jp/gallery/20200928_clay_kiln.html


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今回の喫茶店
喫茶泉輪
075-751-9749
京都府京都市左京区聖護院西町3-2
https://goo.gl/maps/fgF11ZYoTZLFux2S7

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劇団速度
2016年より京都を拠点に活動を開始。舞台芸術や美術に携わるアーティストにより結成。舞台作品だけでなく、インスタレーションパフォーマンスやゲストハウスでの上演型展示、映像作品など、演劇的な制度を利用しつつ様々なメディアで作品を発表している。

webサイト https://theatre-sokudo.jimdofree.com
twitter @TheatreSOKUDO https://twitter.com/theatresokudo?s=11
instagram  @sokudo_n_s_t https://instagram.com/sokudo_n_s_t?igshid=dwuggf0kfzqe




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