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舞台芸術作品の映像化

劇団なかゆび本公演 
Nakayubi.-11「戦争前夜の作家たち」より
菊池寛『父帰る』
岸田國士『是名優哉』
森本薫『みごとな女』
上演映像 無料・無期限公開
※各作品を選択するとYouTubeに遷移します

劇団なかゆびの神田です。
2021年3月の劇団公演Nakayubi.-11「戦争前夜の作家たち」の上演映像をYouTubeにて配信することにしました。コロナ禍を機に、多くの演劇団体が映像配信に乗り出した流れに乗る形にはなっていますが、そのほとんどは有料、あるいは期間限定のものではないでしょうか。私はここに疑問を感じ、無料・期間限定なしで配信することにしました。

昨年以降、空間をシェアすること自体が忌むべきものになり、舞台芸術の担い手たちはデジタルの世界に追い込まれました。彼らの映像配信に関する知識不足のためか、それほど面白い作品は生まれなかったように思いますし、これからも大きな期待はしていません。そもそも情報が電気信号化されていないことが彼らに残された数少ないプライドであったわけですから、仕方のないことかもしれません。

しかし、私は映像で舞台芸術作品を観ることが少しでも浸透した状況に希望を見出しています。それは、観劇できる人数に上限があることを乗り越え、最近流行りの「公共性」を主張するために、「誰でもアクセス可能である」環境を整備できるからです。一定の財産(料金を支払うことができる、余暇がある)と教養(言葉やメタファーなどの意味がわかる)がなければ舞台芸術を十分に楽しむことはできません。この意味で、舞台芸術はつねに何ものかを排除します。これはハーバーマス以来の公共性そのものの問題でもあるのですが、学者ではないのでここには立ち入りません。私が本作を無料かつ期限なしで配信する理由は、舞台芸術の公共性を主張していくためには、それが完全な観劇体験ではなくとも、誰でもアクセス可能なものとすることを目指すべきである、と考えているからです。これにより、「一定の財産がなければ舞台芸術を楽しめない」という問題をある程度は克服できることを期待しています。

この映像を通じ、どこかの誰かが何かを感じ取ることで、少しでも舞台芸術の発展に寄与したいと考えています。まだまだ私も駆け出しの身で、技術が洗練されていない部分もあるかと思いますが、お時間よろしければいつでもご覧くださいませ。願わくば、劇団なかゆびの公演に足を運ぶきっかけにしていただければ幸いです。

2021年5月19日
劇団なかゆび主宰 神田真直

(舞台写真撮影:小嶋謙介)

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