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未だ見ぬ観客へ(宣言文に代えて)

「探しているんだ! 亡くしたんじゃない! どこかにあるんだ!」

 劇作家である私自身のなかに答えがあるのなら、私は書かないだろう。私自身のなかにあるのは、問いの鎖のみであり、それが出口を求め、外へ向かって書くことになる。同様に、演出家である私自身のなかに答えが見出だされるのならば、作品が稽古場を出ることはないだろう。私自身のなかにあるのは、問いの鎖のみであり、それが出口を求め、外へ向かって、上演にたどり着くことになる。同様に、俳優である私自身のなかに答えがあるのなら、私は観客を必要としないだろう。私自身のなかにあるのは、問いの鎖のみであり、それが出口を求め、外へ向かって演技することになる。
 この延々と連なる「問いの鎖」は演技に至るころには複雑に絡み合い、ようやく観客に接続される。この接続は観念的なものでしかあり得ない。新しい可能性を探究した結果、観客-の方から-作品に-向かって-を強制する形式――元々はアイデアとしてのものだった――もひねり出された。ただ、逆流は逆説的に水圧を強く肯定せざるを得ない状況を知らしめる。

   他者との接続による思考の拡張は、重視されなくなってきた。インターネットは他者との接続を省略して世界との接続を錯覚させる。本来的には他者との接続の可能性を大幅に増幅させる装置として期待されたインターネットではあるが、世界との接続を錯覚させることが金儲けになるということが明らかになるとともに、急速に仮想現実の様相を呈するようになる。インターネットは欲望に負けたのである。
 一体、何のために劇場へ足を向けるのか。結局それも欲望に身を任せているにすぎないのだろうか。いや、欲望ではない別の目的意識がそこにあるはずである。未だに達成できない、何かを達成しようと、私は劇場へ向かう。明日も、明後日も、これからもずっと。われわれはつねに先に着いて、待っている。
 どうだろう。ゴドーを待ちながら、ゴドーになってはみないか。
  劇団なかゆび 主宰 神田真直

 明日、11月23日より、「象徴の詩人」は上演を迎えます。
 クリエイションノートの更新も、これを持ちまして(いったんは)最後となります。お読みいただいた皆様、誠にありがとうございました。
 戯曲や論考にて取り上げられたモティーフの数々が、どのように「作品」へと象られているのか、是非劇場にて見届けていただけますと幸いです。

〈公演情報〉
Nakayubi.-9「象徴の詩人;My Dad was God」
 作・演出:神田真直

われわれは、われわれ日本人はかつてなく若い。
ある種の日本がまだ存在していないのだから。
それはかつて存在したことがあるのだろうか?

◇キャスト
山根悠、柊木樹、神田真直

◇日時
2018年11月
23日(金)15:00/20:00
24日(土)14:00/19:00
25日(日)13:00
※受付開始、開場は開演の30分前です。
※上演時間は約60分を予定しています。
※途中休憩はありません。

◇チケット
前売:1,500円/当日:2,000円/高校生以下無料
☆over30割
30歳以上のお客様は、当日受付にて年齢の確認できるもの(身分証など)を
ご提示いただくことで、300円安くチケットをお求めいただけます。
こちらは、前売、当日どちらでもご利用いただけます。
チケットご予約はこちら

◇会場
人間座スタジオ(京都市左京区下鴨東高木町11)
 map:https://goo.gl/maps/qkYS6SY1SgB2
アクセスの詳細は劇場ホームページをご確認ください。

◇スタッフ
舞台監督:玉井秀和(劇団FAX) 舞台美術:柊木樹
照明:西面樹 音響:岩谷紗希 映像:柊木樹
宣伝美術:渚ひろむ(劇団洗濯氣) 制作:新原伶 吉岡ちひろ
製作:劇団なかゆび

◇劇団なかゆびとは
2014年、同志社大学・第三劇場の神田真直を主宰として結成。
『問いの同時代性』を主眼に創作に取り組み、古典戯曲から創作まで幅広い作品を上演する。主な受賞歴に、京都学生演劇祭2016審査員特別賞、第二回全国学生演劇祭審査員賞のほか、第二回大韓民国演劇祭in大邱での招聘公演の経験を持つ。

◇お問い合わせ
Tel:080-2664-4048(制作部・ニイハラ)
Mail:nakayubigeki@gmail.com
Twitter:@nakayubigeki
HP:https://nakayubi.wordpress.com/

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